砂山さんの能力
砂山さんの見た目は男性用トイレのマークを立体化した感じです。
ゴーレムに目や口は必要ないですし、余計な飾りは魔力の無駄遣いでしかありません。
「ショウガ、この砂人形が相手で戦いの練習になるのか?」
久郎が訝しげな目で砂山さんを見ています。
「安心しろ、砂山さんはお前の倍は強い。その上、便利な各種機能を備えているんだぞ」
多機能ゴーレム、それが私が作った砂山さん。
「本当にか?そういや俺達の武器はどうするんだ」
きちんと結界を張ったので、内部の事が外にばれる事はないでしょう。
「見て驚け!!砂山さんの便利機能その1、練習用武器製造システムー!!それでは砂山さんハンマーを出して下さい」
砂山さんは私の言葉に応じて手を自分のお腹に突っ込みました。
そしてゆっくりと手を引き出すと、中からは内臓ではなく砂を固めて作ったハンマーが出てきます。
「くぉら!!この馬鹿ショウガ、なんでわざわざグロくするんだよ」
「ほう?内臓が出る様に改造しても良いんだな。砂山さん、次は薙刀をお願いします」
「せい君、薙刀は私が持つんですよ。普通でお願いします」
紅葉をいじめる訳にはいかないので内臓は止めておきしょう。
「砂山さん、薙刀は手からお願いします」
私の言葉に応えて砂山さんが手の平から砂の薙刀を出してくれました。
「てめえ、ショウガ!!手から出せるんなら最初からそうしやがれ」
「腹の方が砂が多いから作り易いんだよ。まず攻撃をする事と魔力の使い方に慣れてもらう」
幸いな事に久郎は仕事でハンマーを使っていますし、紅葉は薙刀部ですから扱いには慣れてる筈。
「ショウちゃん、僕の武器は?」
「かこちゃんの武器は私が後から準備するよ。今日は攻撃の避け方とアーツの使い方を覚えてもらう。回復役がうまく機能しないパーティーは危険だからね」
回復役がいてくれるから安心して戦えるんですから。
「まずは久郎から。砂山さんは最初は動かないし攻撃もしてこないから安心しろ」
「こちとら杭打ちには慣れてんだよ…ヒッ!!」
砂山さんの頭にハンマーを降り下ろした久郎の顔が青ざめハンマーを落としました。
「砂山さんの便利機能その2、攻撃をするとリアルな感触が伝わってきます。久郎、頭蓋骨を砕いた感触はどうだ?」
「なんでこんな悪趣味な機能をつけてんだよ?」
「攻撃に慣れろって言ったろ?実戦で武器を落としたら確実に死ぬぞ。次は腹に攻撃してみろ」
実戦じゃ相手は断末魔をあげますし、叩き潰したら血や脳漿が飛び散ります。
実戦に出る前にグロさに少しずつ慣らしておきたいんですよね。
「ちっ、分かったよ。そりゃ!!」
しかし、久郎の一撃は、お粗末な物でした。
「誰が当てろって言った?勢いのないハンマーじゃ甲羅や鎧は砕けないぞ。次は紅葉」
「分かりました、トォリャー」
紅葉の鋭い一撃を砂山さんは腕で受け止めました。
結果、砂山さんの腕と紅葉の薙刀が地面に転がり落ちます。
紅葉の手には肉を斬った感覚と骨を斬った衝撃が残っているでしょう。
「それが生き物を斬る感覚だよ。続いて砂山さんの便利機能その3、形状記憶能力発動」
私の合図でボロボロになっていた砂山さんが一瞬で元の形に戻りました。
岩や金属と違い、砂で作ってある砂山さんなので少ない魔力で元の形に戻す事が出来ます。
「うう…手に変な感触が残っています。今日は1人で寝たら絶対に嫌な夢を見ちゃいます」
今日からは1人部屋に移ってもらうんですから、1人で寝なきゃいけないんですけどね。
「そして砂山さん便利機能その4は、形状変化能力です。砂山さん、狼でお願いします」
砂山さんは術者のイメージに合わせて形態を変化する事が出来るんです。
「ショウガ、相変わらず美術系はセンスがねえな」
「ショウちゃん、これは豚さん?」
「せい君、私もお手伝いしますからもう一回やってみませんか?」
くっ、誰もリアルで狼を見た事がない癖に。
「お手伝いと言っても、相手のイメージを具現化するには手を繋ぐ必要があるだよ。おい、久郎お前がイメージしてみろ」
おっさん同士が手を繋ぐなんて気持ち悪いだけですが、かこちゃんを選んだら絶対にシスコンぐまが勘ぐります。
「せい君、私美術大好きなんですよ。さあ、お願いします」
そう言うと、紅葉は私の手をギュッと握ってきました。
元カノに手を繋がれて喜んでしまった自分が哀しいです。
「こ、こちらこそお願いします。それじゃ砂山さん変化して下さい」
「狼って、普通はこうだろ?」
「紅葉、上手だねー」
「せい君の狼さんは可愛くて私は大好きですよ」
確かに紅葉がイメージした砂の狼はリアルな形になりました。
「砂山さん、遠慮はいりません。あそこにいるクマを狩って下さい」
「ショウガ、てめえ!!」
今の砂山さんは素早さも本物の狼と同様です。
「ほら、早く構えないと砂山さんの爪や牙の餌食になるぞ。かこちゃん、久郎が血を流したらアーツを使う練習をするから」
きちんと加減して攻撃をする様に指示をしていますから大怪我はしませんけどね。
「兄貴、大丈夫!!生きてる?」
端から見たら久郎は血まみれで満身創痍に見えますが、砂山さんは表皮しか傷つけていません。
「痛ってぇー。ショウガ、あんな早い動き避けれる訳ねえーだろ!!」
狼だから速いのは当たり前、でもその速さに対応できなきゃエレメンでは生き残れません。
「砂山さんの早さは魔物に比べたら可愛いぐらいなんだよ。さて、かこちゃん久郎にアーツを使ってみて」
「ショウちゃん、どうしたら良いの?兄貴の血が止まらないよ!!」
私は時空リュックの中から水を入れてあるペットボトルを取り出してかこちゃんに手渡しました。
「先ずはペットボトルの水で傷を洗い流して。かこちゃんのアーツはあくまでも止血をするだけだから汚れを落とさなきゃいけないんだよ…次に治したい傷の上に手をかざして手に意識を集中させるんだ。そして血が止まる所をイメージしながら何をしたいか、どんな効果をもたらしたいか言うんだ」
「わ、分かった…兄貴の傷、塞がって!!止血の光」
かこちゃんの手から淡い黄色の光が出て久郎の傷を包んでいきます。
「成功だな、かこちゃんはそのまま久郎の他の傷も治して。次は紅葉」
「せい君、狼さんの動きが速すぎて着いていく自信がありません」
「足に魔力を流せば素早く動けるし、手に魔力を流せば強い攻撃が出来るんだよ。いきなり言われても無理だと思うから最初は私が魔力を流すから感覚をつかんで…マナよ、紅葉の足に宿りて動きを助けよ!!ムーヴアシスト」
「なんか足が熱いです…これがせい君の魔力。まるでせい君にギュッとされているみたい」
かこちゃん達は傷の治療に専念しているみたいで、紅葉の呟きは聞こえなかったみたいです。
先にかこちゃんにアーツを使わせて大正解。
「紅葉、そのまま足に意識を集中させながら動いてみて」
「はいっ…うわっ!!凄く速く動けます」
それから傷が治った久郎も参加して魔力の使い方を練習してもらいました。
「ショウガ、魔法も使えて速く動けるんならみんな魔法使いになった方が良いんじゃねえか?」
「良くない。魔力は無限じゃないし、体に魔力を流しながら魔法を唱えるのは、うまくいかないんだよ。集中しにくいし標的を定め辛い。走りながら絵を描く様なもんでどっち付かずになるんだよ。前衛が敵を撹乱したりいなしてる間に魔法使いが魔法で攻撃、それで倒せなきゃ前衛が止めをさす。逆に魔法使いが魔法で牽制して前衛が止めをさしても良い。それぞれが自分の役割をしっかりこなす事が大切なんだよ」
1人で戦っていると、背後が不安になるんですよね。
「せい君、魔力はどうすれば回復するんですか?」
「魔力も体力と一緒で休めば回復出来るんだよ。だから自分の魔力量を把握する事が大切なんだ。それと魔力量を増やすには魔力を使うしかない。強い敵を倒しても強くなったりはしないからな」
戦えば戦う程、戦い慣れはしますけどね。
「さて、私は薬草を探しに行って来るから、久郎達は引き続き砂山さんと練習をしてくれ。それと何があっても結界からは出るなよ」
今の久郎達じゃゴブリンにも勝てないでしょう。
イラストレーターさんからサンプルがきました。
近々四人のイラスト載せれるかと
プロは凄い




