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エレメンの現実

人によっては不快な流れになります

 正牙、僕はエレメンを優しさと笑顔で溢れさせたいんだ。

 誰でも笑顔になれる国を作りたいよね、貴族も農家の人も手を取って笑い合える国を。

 パーティを組んでいた時に、英ちゃんは良くそう言ってました。

 私の知っている英ちゃんは正義感の固まりで誰にでも優しい無邪気な少年。

 そして商人から聞いたキヨキ神皇国の神皇ヒデオ・キヨキの評価も全く同じでした。

 安い税金、旧い身分制度の撤廃、腐敗官僚の逮捕、異世界の技術の導入等々。

 それは英ちゃんが私達に語った理想。

 きっと清木英雄は未だにあの日の少年のままなんでしょう。

 私は理想を実現させた昔の仲間と本気で戦えるんでしょうか。

 でも英ちゃん、理想だけじゃ人は暮らしていけないんだよ。

 英ちゃんの理想が必ず国民の幸せにはならないんだし、むしろ不幸にする事もあるんだから。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 宿屋から宛がわれた部屋で一息ついてると、通信石がジリリンとけたたましい音をたてて鳴りだしまた。


「おい、ショウガ何で呼び出し音が黒電話なんだ?」

「着メロや着歌がない時代に作ったんだから仕方ないだろ。それでどうした?夜になって寂しくなったのか」


「ああ、お前の頭がさらに寂しくなってないか心配になってな」


確かに私のおでこが他の人より若干広めなのは認めますが。


「くぉら、私は断じて禿げていないし生え際もまだ後退していない・・・筈だ」


多分、まだ大丈夫な筈。


「まあ、そう言う事にしといてやるよ。ショウガ頼む、今から迎えに来てくれねえか?」


「まだまともに訓練をしてないだろ?」


「俺の適性は鍛冶だから担当出来る騎士様がいねえらしい。かこは神様の名前が言えなかったから不合格なんだとよ」

 

「何となく事情は分かった。でも今日は城に泊まれるんじゃないのか?」

 異世界から召喚した人間を城から追い出したのがバレた周りの国や民から不信感を買うのは分かっている筈。 


「それが満中さんが騎士とトラブッちまってよ」

久郎の話では紅葉は強引に口説いてきた貴族にビンタをしたそうです。

 仕方がない、3人とも私が鍛えますか。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 


 いくら街灯があるとは言え日本とは違い街中でもエレメンの夜はかなり物騒。

ましてや紅葉とかこちゃんは2人共美少女ですから戦闘経験がない久郎だけでは不安です。

 逆に久郎は見回りの兵士に不審者扱いされかねません。

 とりあえず城門からあまり離れない様に伝えて宿屋を後にします。

 外に出るとサクセスの町は昼とは違う顔を見せていました。

 街灯の近くには派手に着飾った娼婦が立ち、酒場からは喧騒と怒号が聞こえてきます。

 

 幸いな事に3人は城門から離れずにいてくれたので直ぐに見つける事が出来ました。

 余程、不安だったのか紅葉は私の顔を見るなり目を潤ませています。


「ショウガ、迷惑ばかり掛けるな。すまん」


「良いよ、その代わり明日からの訓練は少しハードにするけどな」


「セイ君、隣を歩いても良いですか?暗いし怖いです」

 街灯があるとはいえ日本の夜とは比べ物にならない濃い闇がサクセスの町を包んでいます。


「その方が安全ですからね。久郎が一番後ろを歩いてくれ」

 隣を歩くと言っても私と紅葉の距離は相変わらず微妙なまま。


「ショウちゃん、街灯の下にいる娘はまだ家には帰らないの?」

 かこちゃんの見てる先にはかこちゃんや紅葉よりも年下に見える少女が派手な服を着て佇んでいました。


「帰らないよ、この時間じゃまだ稼げてないからな」


「稼げてないって。ショウガまさかあの子は」

 久郎にしてみればかこちゃんより幼い娘がそんな仕事をしているのが信じられないんでしょうね。


「ああ、夜の蝶だよ。ただし、吸うのは花の蜜じゃなく銀貨や金貨だけどな」


「親はとめないのか?」


「覚えておけ。この世界はファンタジーなんかじゃなく生々しい現実世界なんだよ。あの娘達はああやって家族の生活を支えてるんだ。だからって言葉だけの同情はするな、あの子達にとっては優しい言葉なんかより1枚の銅貨の方が価値があるんだから」

 むしろ私達に守られている紅葉やかこちゃんは妬みの対象になりかねません。


「そんなショウちゃん、何とか出来ないの?」

 

「かこちゃん、彼女達を何とかしたいと思ったら、まずかこちゃんが強くならなきゃ駄目だよ。そして彼女達が自立出来る手助けをすれば良い。一時の援助だけじゃ救えないんだから」

 

 今お金を渡しても彼女達はまた明日街灯の下に立たなきゃいけないんですから。

「ショウガ、随分と冷静なんだな。何とかしてやりたいって思わないのか?」


「前に来た時に嫌になるぐらい見たからな。久郎、そんなに心配なら客になってこい。そうすりゃ彼女と彼女の家族は明日は飢えずに済む・・それが出来ないなら同情は止めろ、一番辛いのは彼女達なんだぜ」 

 それに、この世界じゃ娼婦なんてまだましな方なんですから。


「せい君もお客さんになった事があるんですか?妙に詳しいんですね?」


「前に来た時は私は14歳ですよ。お客になる訳ないでしょ」

私が詳しいのは別の理由があるんですし。


 それから5分程、歩いた頃です


(2人か・・丁度良いですね、この世界の現実を見せておきましょう)


「兄ちゃん達命が惜しかったら、その女と有り金を置いてきな」


「これが見えない訳じゃないよな」


 路地裏から出て来たのは革鎧に身を包んだ2人の男、腰にはロングソードを差しています。

 そして何より殺気を微塵も隠していません。

 日本に生きていたら殺気を浴びる事なんてまずありません。

 久郎は驚きと緊張で体が強ばっていますし、紅葉とかこちゃんは恐怖のあまり涙をこぼしています。

 でも脅し文句にまともに答えるなんて無意味です。

 この手の人間は怯えた相手を見て自己満足に浸りたいだけなんですから。

 だから


「マナよ、麻痺の霧にかわりて我が敵を包め・・パラライズミスト」


 男達を闇夜でも目視出来る白い濃霧が包み込んでいきました。

 霧が晴れると男達は冷たくなった石畳に横たわり口からはヨダレが垂れ続けています。


「ショウガ、今のは」


「パラライズミストで麻痺させた。久郎、こいつらを殺す事は出来るか?明日から始める特訓は早く言えばいかに早く上手く命を奪う為の特訓になる」


 これから命を奪う意味

を知ってもらいます。


活動報告の通りいつもと執筆方法が違うので誤字が多いかもしれません

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