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乗換駅2


結婚式は乙女の夢だと思う。

乙女って、別に自分を指しての表現ではないけど。

女性一般、あこがれて当然の一大イベント。

教会で、ウエディングドレスで、そしてブーケトス。

「…仏式って、どんな結婚式なんだろ…」

字面だけなら、フランス式かと思われそうだ。

とりあえず、パソコンの電源を入れる。

検索サイトに文字入力。

「…」

検索にひっかっかったいくつかのサイトを眺める。

そういえば、何宗かも聞いてない。

ただ、どこの宗派も似たような式次第である。

どうやら、式の入場曲をはじめBGMは雅楽等の和曲っぽい。

そして、指輪のかわりに数珠の交換。

指輪でもいいような話は書いてある。

自然とため息。

「てゆうか、なんで今更トクドしてるとか…」

今まで、前の奥さんのことは極力聞かないようにしてきた。

自分を愛して、受け入れてくれた人に、過去に愛した女性の話など語らせたくは無い。

そう思っていたけど。

結婚するって決めたとき、式の話になるのは分かっていたことなのに。

卒業してすぐに入籍した。

ただ、学校側の面目もあるし、体裁もあるしで、式はもう少し先にしようと話し合った。

焦る事は無いのに、なんだか不安。

妥協は、意見のすり合わせだって言われたけど、「教会式はしない」と宣言され、出鼻をくじかれた感じがする。

――ブーブーブー

携帯が鳴動した。

メールかと思って無視していたら、鳴り止まない。

誰かからの着信だ。

慌てて表示を確認すると、「先生」と文字がスクロールしている。

彼だ。

もし、学校で友達に着信を見られても、誰か特定できないよう、そう登録していた。

未だに直していない。

「はい」

『あ、寝てた?』

「ううん。飲み会は終わったの?」

今夜は、学校の教科会の会合だと言っていた。

お付き合いで、遅くまで飲み会になるらしい。

『終電では帰るよ』

ちら、と時計を見ると、あと1時間ほどで電車の運行は終わる時刻だ。

『ちゃんと戸締りして、待ってて』

「うん」

わざわざ電話なんていいのに、と思うが、律儀な人で、帰る前には必ず一報をくれる。

「待ってる」

そんな行動に、安心する。

どんなに疲れていても、忙しくても、あたしの生活リズムを把握して連絡をくれる。

守られてる気になる。

でも、電話を切ると、結婚式の事で不安になった。

自分の主張を曲げるべきか。

人前式でもいいんじゃないか、と思うけど。

それが彼の妥協だとしたら、納得できない。

モンモン。

勢いよくベッドに横たわった。

布団が、ぽふ、と軽い悲鳴をあげる。

帰ってきたら、冷静に話し合うことができるだろうか。

あたしと彼との年の差は埋まることがない。

彼の考え方は、やっぱり大人で、教師らしく理論的だ。

あたしは、やっぱり子供だ。

「わがまま、なのかな…」

あたしは、考えながらいつの間にかまどろんでいた。



ふと、空気が揺れた気がした。

床が軋む音がする。

覚醒と睡眠のふわふわとした気分の狭間で、彼の帰宅かと悟る。

中途半端な眠りのせいか、体は起きてくれない。

かろうじて、

「…おかえり…?」

ささやくような、吐息と声が出た。

ぎし

ベッドのふちが沈んだ。

「ただいま」

「!?」

――彼の声じゃない!!

ビクリと体が震えた。

瞬間、上半身に重さがかかる。

冷たい感触が、口元を覆った。

目を開けると、目だし帽をかぶった小柄な男が見えた。

すう、と血の気が引いていくのに、ぶわ、と汗が出る感覚。

「静かにしててね、子猫ちゃん」

静かにも何も、口は男の左の掌で覆われている。

一瞬にして知覚した恐怖によって、動くこともできない。

声から察するに、かなり若い印象だった。

――やだ。泥棒!?

「別に、君が目的ってわけでもなかったんだけど、なかなかかわいいね」

――やだ!

「刃物とか、物騒なものは持ってないから、安心してね」

――助けて!!

「金目のものは、後でゆっくり探すから教えてね」

男の右手が、洋服の上から胸のふくらみをなでた。

――いやっ

「今日はどんな下着つけてるの?」

目だし帽から見えるわずかな顔の部分からでも、男の下品な表情が分かる。

じわ、と目じりに涙が浮いた。

「あれー、泣いちゃう?」

楽しそうに、男が呟いた。

そして、シャツの裾をまくりあげる。

ひやりとした空気に、素肌がさらされる。

――いやっ!

「ふふ、きれいな肌」

――やめて!


ぎゅっと

恭子は眼をつむった。

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