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孤独な私と捨てられたくまのぬいぐるみ

作者: 昼月キオリ
掲載日:2026/05/21


フリーターの私、清音(きよね)33歳。

今日も睡眠不足更新中。


そんな私には夢や希望なんて大層なものはない。

恋人もいなければ、日常と言えば一人暮らしのアパートと仕事との往復。それとスーパーだった。


時々、友達と会ってスイーツを食べるのが唯一の楽しみだ。


そんな孤独な私の前に現れたのはぬいぐるみだった。

 

ある日の夕方。仕事帰り。

雨の中、傘を差しながら歩いていた。

 

また今日も無事に一日が終わった。

空を見上げ、ありがとうと心の中で言った。


いつもの通り道。

ゴミ捨て場でカラスに突かれ、敗れた袋の中からくまのぬいぐるみの耳が飛び出しているのが見える。

 

雨の雫が耳から目に流れ、泣いているように見えた。

 

しばらく立っていると買い物帰りらしき主婦に声を掛けられた。


「あのー、うちのゴミ袋に何か?」


「あ、すみません。くまのぬいぐるみが見えて。」


「あらやだ!カラスね!!教えてくれてありがとう。」


「いえ・・・。」


女性が綺麗な袋に入れ替える為に敗れた袋を一度持ち帰ろうとした。


「あの!」


「どうかした?」


「そのぬいぐるみ、もらってもいいですか?」


「え?それは構わないけれど。

でも、汚れているしところどころ破けているわよ?」


「この子がいいんです。」




私は家に帰るとくまのぬいぐるみをとりあえず玄関付近の洗濯カゴに入れた。


次の日。

洗濯カゴからくまのぬいぐるみを取り出してお風呂場に行き、手で洗う。

洗い終わり、物干し竿に付いている洗濯バサミの部分に

ネットを取り付け、その中へくまのぬいぐるみを入れて日光浴をさせた。


晴れて良かった。ついでに、休みで良かった。


よく乾かした後、部屋に取り込んだ。


「あ!」


洗って乾かしたまではいいけど、裁縫セットがない!

私は急いで近くの100均へ向かって簡易的な裁縫セットを買って戻ってきた。


それからようやく破けた部分を縫い合わせた。

なんとか汚れや匂いは落ち、体中から飛び出していた綿はくまのぬいぐるみの中へと収まった。


「よし!できた!」


その日の夜。

ベッドで眠っている私はファンタジーな夢を見た。


私は悪い奴らに囲まれていた。

しかし、そんな私の前には両手を広げて立っている小さなくまのぬいぐるみの姿があった。

私を必死に守ろうとしてくれているみたいだ。

けれど、守られている私よりくまのぬいぐるみの方がずっと小さくて傷だらけだった。

そのまま、敵に襲われることなく夢から覚めた。


起きてすぐに、ベッドヘッドに置いてあるくまのぬいぐるみをぎゅっと抱き締めた。

そして呟いた。


「悪い奴らから守ってくれてありがとう。」


その日から悩んでいた悪夢が消えた。

そのおかげもあり、途中でうなされて起きることもなく目覚めも良かった。


孤独な私と捨てられたくまのぬいぐるみ。

今日も六畳一間のアパートで一緒に暮らしています。



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