螺旋の下り道
私は山を下る。
友人のA君、B君と山登りに出かけた時だ。
A君の提案もあり少し遊歩道から離れた道にはいり迷ってしまった。私はこんな時こそ力を合わせなければと思うがそうはいかない。
B君は「お前のせいでこうなったんだ。」とA君を責め立てる。
私は心の中で辞めろと考えるが口には出さない。私がどちらかの味方をすれば状況は更に悪化するのは目に見えていたからだ。
むしろお前もなんか言えよといついわれるかと不安に思っている。また山登り自体は私の提案だ。矛先が私に向いたっておかしくない。
数時間出口を探すうちに皆疲弊する。
私はふとリュックサックにチョコレートが入っていた事を思い出す。
「板チョコが一枚リュックに入ってたから。これを皆で分けよう」
といった。
三等分に割るが綺麗には割れない。これ以上B君の機嫌が悪くなるといけないと思い、特に口には出さないが一番大きなものをB君に渡す。
B君は「お前のせいでこうなったんだから、お前に食べる権利はない」といってA君のチョコレートを取り上げている。私は火の粉が飛んでこないように何も言わない。
私は「ちょうどここに川がある。この川の流れに沿って歩けば山を降りられるんじゃないか」
と提案すると2人も同意する。チョコレートで多少空腹を抑えられた事もあり幾分B君の機嫌もマシになる。A君も緊張が収まり、「じゃあ行こう」と言った。3人は川で水筒に水を補給し、曲がりくねった道を下る。
休憩中、B君は「もう食べるものはないのか?」と私のリュックサックをあさりだし、一つだけ見つけた飴を舐め始める。私もA君も何も言わない。
なるべく険悪なムードにならないように気を使いながら、私達は山を下る。川の先は滝であった。とても降りられないだろう。B君の怒りを予想し私はB君の方をみる。
B君は何も言わなかった。A君も無言だった。A君は無言でB君を滝から突き落とした。
落ちるB君に掴まれ私は共に落ちる。A君は無表情に2人が落ちる様を見下ろしていた。
私は「もう嫌だ」と小さくつぶやいた。
B君が「お前のせいでこうなったんだ。」とA君を責め立てる。`私'は遭難して降りられずに死ぬ事を繰り返している。ある時は餓死、ある時は熊に襲われ、ある時はAやBに殺される。
それだけでも恐ろしいが更に恐ろしい事がある。
C君が「そんな言い方ないだろ。お前も賛成したじゃないか」とB君に反論した。
たまに知らない人がまざるのだ。
私は何を生み出したのだろう。
最初はA君がB君を非難していた。
2人ももう最初とは別人だ。同じに見えて同じ場所に戻ったわけではない。
円環では無く螺旋の下り道なのだ。抜け出す事は出来ないがもう二度と元の場所には還れない。
最後は蛇足かしら C君登場で終わらす方がよかった?
感想、アドバイス、御評価お願いいたします。