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4人の魔女と守護騎士  作者: 案子丹子
1章 雷の魔女
9/13

束の間のひとときに

「ホルガー!久しぶりだなぁ!元気だったかおい!」


会うなりホルガーの首に腕を回すコーネル。相変わらずの力加減の出来なさにホルガーは迷惑そうな顔をしながらも、まんざらではなさそうだ。


「一年ぶりなのにもう少し感動的な再会にはならないのかな?エルは一緒じゃなかったの?」


コーネルの腕を振りほどきながらもう一人の友人の行方を問う。


「あいつなら一足先にこっちに戻ってきてるぜ。任命式終わって皆で飲もうって言ってたんだが、誰よりも先に報告したいんだって飛び帰ったぜ。俺も顔だけ出してそのまま帰ってきたよ。」


「ハンス先生か・・・。まぁエルらしいね。」


「だから俺達もエルん所に言ってハンス先生巻き込んで四人で飲み明かそうって!」


「ハッハ!考える事は一緒だね。ダミアンさんにも同じ事言って誘ったんだけど、水入らず楽しんでこいってさ。」


二人が他愛もない話をしながらエルウィンの家に向かって買い物がてらに街中を歩いてると、一人の男性が二人の前に出てきて声をかけてきた。


生得会(しょうとくかい)です。今お二人は幸せですか?便利な世の中、されど満ち足りない世の中と訣別をして、我々と一緒に自然へ回帰しませんか?」


ホルガーが手振りで結構と断りを入れて脇を通りすぎようとすると、男は頭を軽く下げ素直に引き下がった。数メートル程無言で歩いた後にコーネルが口が開く。


「昔に比べてこの辺でも宗教の勧誘が増えたよな。ウィーノでも声をかけられる事多かったぜ。」


「やっぱり魔法の登場かな。」


「魔法?」


「利便性が高くなる事で人が失っていくものって何かわかる?」


「なんだそりゃ?急に謎々か?」


ホルガーの問い掛けに、まるでわけがわからないとばかりに肩をすくめる。


「信仰心さ。人は得体が知れないものを神や悪魔だと畏敬の念を込めて呼んでる。ところが世の中が便利になって色んな事が解明されていくと、それまで得体が知れなかったものの中身がわかってくる。正体がわかればそこに恐れや、崇め奉ろうなんて気持ちは消えてくからね。」


「なるほどな。で?」


「・・・え?」


「だから、それと宗教の勧誘にどういう関係があるんだよ?」


コーネルの返答に少し呆れたような表情を見せるが、長い付き合いなだけにコーネルならそうなるよね、とばかりに自分を納得させた上で会話を続ける。


「・・・まぁ、要するに信者が減れば収入源も減るわけ。満たされた人が増えれば必然と救いを求める人が減るでしょ?だから積極的に勧誘して信者を増やさないと上の連中は食っていけないからね。」


「ほお。さすがホルガー様。何でも知ってらっしゃいますなぁ。」


そうだろ?と言わんばかりにフフンと鼻を鳴らして得意気な顔をするホルガー。


「でも生得会って言えば世界の三大宗教の一つだったろ?そんな規模が大きいとこでも苦しいのかね?」


「まぁあそこは魔法に頼らず自然のあるがままに暮らしていこうって教えだからね。今の世の中の流れに完全に逆らってる事を考えたら一番困ってるとも言えるけど・・・何より貴族連中にも熱心な信者は多いって話だし、そっちにも金が流れてるんじゃないかって噂もあるからね。」


「政治と宗教に金・・・かぁ。あぁーイヤだイヤだ。俺には一生縁はねぇな。」


「そんな事ないよ。コーネルもガーディアンに所属したんだ。統一政府下に入った以上はこういう問題も絡んでくるよ。まぁ魔局(うち)程じゃないにしてもね?」


意地悪そうな笑みを浮かべて友人の背中を軽く一叩きするホルガー。それに勘弁してくれとわかりやすく項垂れてみせたコーネルだがすぐに背筋をピンと伸ばして笑顔になる。


「ま!嫌な事は忘れて今夜は飲み明かそうぜ!」


「立ち直りが早すぎるだろ・・・まったく羨ましい性格をしてるよお前は。」


「褒めても何も酒代は割り勘だからな?」


「褒めてない。」


「あっ!そう言えばまだ報告してなかったな。俺達の配属先がどこか。」


「おぉ、どうだったの?希望通り?」


「そう!二人揃ってブレイヴナイツ入りが決まったぜ!」


「やるね。おめでとう。」


「もっと驚けよ!つまらねーな。」


「まぁ二人なら可能性は高いかな?と思ってた。それくらいやってくれないとね。」


「・・・褒めてもいいんだよ?」


「今のは褒めてるよ・・・。」


昔ながらの食品の商店が立ち並ぶ通りの一角にて、二人で馬鹿な会話をしながら今夜の酒とつまみを品定めしていると、時折顔馴染みの店主が自身の店の物を買っていけと声をかけてくる。その度に足を止めては買い物が増えていき、ついには両手いっぱいに袋を抱えてエルウィンの所へ向かう羽目になった。



一方時を同じくして、コーネルに先駆けてブーケルランドへと戻ったエルウィンは、その足ですぐにスタイナー家へと戻り、見習い騎士として過ごしたウィーノでの一年間の出来事を事細かくハンスに報告していた。


「それにしても、まさか例の遊撃隊に配属されるとはな。さすが首席様。俺の教えが良かったな?」


自身を親指で指しながら冗談交じりに得意気な笑みを浮かべる。


「はい、先生本当にありがとうございます。先生がいなかったら僕は・・・。」


予想外のエルウィンの返答に焦りだすハンス。


「おいおいっ!冗談だよ今さらやめてくれぇ!」


「・・・いえ、本当に感謝してもしきれないです。あの時先生が駆けつけてくれなければ・・・そして母を亡くした自分を引き受けてくれなければ・・・今頃、僕はどうなっていたか。」


参ったな、と手で後頭部をかきながら片眉をひそめ宙を見つめる。しばらくそのまま何かを考え込むように押し黙っていたかと思うと、普段見ることのない真面目な表情で語りだす。


「まぁ、その・・・なんだ。俺が教えてきた中で、間違いなくお前は一番優秀な生徒だったよ。そして、一番の努力家でもあった。お前はたとえどんな環境だったとしても、自分なりに道を模索して、きっちり夢を叶えられる人間だと思う。俺はそんなお前にほんのちょっと手を貸しただけだ。だからそんなに改まって感謝する必要はない。これから先に進む時は俺への感謝なんてのは、雑念にしかならねぇ。さっさと忘れて、自分のやる事に専念しろ。そしてお前なりの答えをきっちり出してこい。お前がやるべき事を全部終えた時、そん時こそ改めて感謝しに来い。高い酒でも持ってな。」


エルウィンは自然と自身の視界が波打つ感覚に襲われたが、すぐに目頭を押さえると溢さぬように堪えた。


「ありがとうございます・・・本当に。」


しばらくの沈黙の後で、辛気臭い空気は苦手とばかりに話を変えるハンス。


「んで、いつまでこっちにはいられるんだ?次の住み処はもう決まってるのか?」


「二週間の休暇予定です。ただ、引っ越しと言っても最低限の荷物だけ持ってこいと。それだけで。なので自分のこっちに置いてある荷物はしばらくそのまま先生に預けておいてもいいですか?」


「あぁなるほどな。あちこち移動してるだろうから家なんてあってないようなもんか。それが遊撃隊の強みでもあるからな。荷物は気にすんな。どうせ元々倉庫代わりにしか使ってなかった部屋だ。・・・そうか、んじゃホルガーとはこれからも離れ離れか。」


「そうですね・・・まぁホルガーは離れて寂しいなんて言うタイプでもないんですけどね。僕やコーネルは少し寂しいですよねやっぱり。」


「アイツの実力がありゃガーディアンでもそれなりの扱いはされただろうに。」


「そう思います。」


「コーネルは?いつ戻るんだ?」


「もう戻ってきてますね。時間的にはそろそろ・・・」


そこまで言って何かに気付いたエルウィンが突然叫ぶ。


「あっ!!!」


「どうした?!」


「そう言えば言い忘れてました。そろそろあいつらここに来ますよ。」


「は?」


「今日は四人で飲み明かしましょうって。」


「な!?お前らここを溜まり場にするなって言ってるだろうが!」


「まぁまぁ、固いこと言わずに。もう皆で集まる機会もそうないんですから。」


「・・・ったく。しょうがねぇな。」


そんな会話をしていると、ちょうど玄関扉が壊れんばかりに勢いよく開く。


「エルー!来たぜ!ハンス先生!お久しぶりです!お邪魔します!」


「おい・・・ドアがぶっ壊れるだろうが。もっと加減しろよ。相変わらずの馬鹿力だな。」


「先生お邪魔します。エル、久しぶり。」


「ホルガー!元気だった?魔局はどう?」


「まぁまぁかな。面白いよ。普通に暮らしてたら知らなかった事も山程あるね。後でそっちの情報と擦り合わせしよう。」


「いいね。ダミアンさん支部長になったんだってね?じゃあ直上だ?」


「そんな所に突っ立ってないでこっち来て座ってゆっくり話せよ。お前ら良い酒持ってきたんだろうな?」


そんなハンスの問いに二人は顔を見合せ、両手に持っている酒やら何やら入った袋を前に掲げて満面の笑みで同時に答える。


「「もちろん!」」


ハンスはその返答を受け親指を立ててニヤリと笑う。


「二人はお客さんだし、先生と座って待っててよ。」


エルウィンはそう言うと、手慣れた手付きで何やら料理を作りはじめ、その合間にはテーブルの上に小皿やグラスを並べるなどテキパキ動いている。


「先生が教えたんすか?あれ」


顎でエルウィンをクイっと指すコーネル。


「・・・俺が料理なんて教えられると思うか?うちに来た時からだよ。アネットさんの手伝いやら何やらで覚えたらしいぜ。まだ10歳のガキだったからなぁ・・・さすがに最初は俺が作ろうとしてたんだけどよ。脇から「お世話になるならせめて家事くらいやらせてください」なんて、言ってくるからやってみろっつったらコレよ。まぁ俺からしたらありがたい事だったけどな。」


「隙がなさすぎて怖いわ、エル・・・」


「エルと結婚する人は大変かも?いや、ある意味では楽なのかな?フフ」


自分のいない所で盛り上がってる三人を尻目に着々と準備を進めていく。ささっと簡単なおつまみ料理を三品程作ると二人の手土産も盛り付けそれらもテーブルに並べる。

運ばれてくる料理に二人は、おお、と驚きの声を上げ、待ちきれんばかりに目を輝かせている。


「はい、お待たせ。簡単なもので悪いけどね。」


「いーやめちゃくちゃ旨そうっ!!」


「エル、お願いしてもいい?」


ホルガーがグラスを見てエルウィンに促すと少し恥ずかしそうに、はにかみながらグラスを手にとり、それに合わせて他の三人もグラスに手をのばす。


「じゃあ、僕とコーネルはガーディアン、ホルガーは魔局でそれぞれの活躍を願って。」


「「カンパーイ!」」


四人が合図に合わせて手に取ったグラスをテーブル中央に向けて少し傾げた後に、口元へ運び全員揃ってグイッと飲みほす。


「あー、エルウィン・・・俺の活躍は?」


「先生は・・・これまで通りで。」


「おい。なんだこれまで通りって。」


ハンスの突っ込みで三人が一斉に吹き出す。

この休暇が明ければ、このメンツで集まれる機会もそうそうないだろう。各々それを感じながらも、束の間の時間を満喫していた。

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