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4人の魔女と守護騎士  作者: 案子丹子
1章 雷の魔女
8/13

若獅子達(わかじしたち)

【オウラハ歴 565年】

アストリア国セントラル ウィーノ



「エルウィン・シュトラウス!」


「はい!」


「本日をもって正式に魔守騎士へと昇格。見習い騎士期間の首席という成績を考慮し、配属先をブレイヴナイツとする!」


「はい!」


同じ見習い騎士である同期達が皆ざわつき始めた。


「マジ??ブレイブナイツ!?」

「すげーな、さすがエルウィン・・・」

「見習いからブレイヴって初じゃない?」


彼らが騒然となるのも無理はない。エルウィンの配属先として発表された

【広域独立遊撃部隊ブレイヴナイツ】とは

8年前のアストリア国内でブーケルランド及び近隣の市街で多数の魔女の犠牲者を出した同時多発魔女狩り事件によって、生活の基盤が脅かされる事態を危惧した民衆はそれまでの不満が爆発し、各地でデモが勃発。それらに業を煮やした世界統一政府は、デモのオウラハ全体への拡大懸念と迅速な事態収拾のため、魔守護騎士団(ガーディアン)へ魔女狩りの対策として、より積極的(攻撃的)な施策実施の命令が下る。これを受けた魔守護騎士団は分隊に帰属する事なく、部隊独自の判断にて広域に渡り魔女狩りの討伐、捜査及び魔女護衛を任とする独立遊撃部隊ブレイヴナイツを発足。オウラハ歴559年の事である。

これにより事件発生してからの後手に回る盾の要素が強かった魔守護騎士団は、迅速に各地を遊撃できる刃を手にした事で、魔女狩りの討伐成果を数多く挙げる事に成功し、多くの謎に包まれていた敵組織の正体にも近づきつつあった。

ただし、最前線での戦闘が余儀なくされるブレイヴナイツは、各国各隊からの選りすぐりの騎士により構成されており、そこに騎士見習いから魔守騎士に昇格したばかりの人間が配属されたのは、まだ発足から僅か6年と間もないとは言え、異例の事であった。


「コーネル・ローレンツ!」


「はいっ!」


「同じく本日をもって正式に魔守騎士へと昇格。見習い騎士期間の優秀な成績を考慮し配属先をブレイヴナイツとする!」


「はいっ!!」


やったぜとばかりに目線をエルウィンに送り、拳を突き上げるコーネル。エルウィンもそれにウインクで応える。

同時に二人もブレイヴナイツへの配属が出た事で、先程までのざわついた空気とは一転、同期の見習い騎士達は大いに盛り上がった。


「うぉーコーネルもかよ!!」

「スゲー!こりゃガーディアンの歴史に名前が残るぜ!」

「二人同時はありえねーって!」


「諸君!!静粛に!まだ発表は終わってないぞ!次の配属を発表するぞ!」


教官が騒がしい見習い騎士達を一喝し、次々と配属先を発表していく。


「おいエル。希望が叶ったな。ガーディアンの中でもブレイヴナイツなら例の男に会える可能性も高いぜ。ホルガーに後で自慢してやろうぜ!」


教官の発表をよそに、小声でエルウィンに話しかけるコーネル。


「そうだね。ようやくスタートラインに立てた気がするよ。でもコーネルは本当にこれで良かったの?発足以来成果もそれなりに挙げているけど、ブレイヴナイツはその分危険と隣り合わせだよ。前から言ってるけど僕に付き合ってくれてるなら無理しなくても・・・」


「バーカ!そんなんじゃねーよ。まぁ俺だってアネットおばさんには世話になったしな。仇を討ちたいのは俺も一緒さ。」


照れ隠しで笑いながらエルウィンの肩を軽く叩き、ブレイヴナイツを希望した理由を濁したかのように演じたが、実はそれはコーネルの本心であった。

親友とも呼べる関係であったエルウィンの母親が殺された事件は、コーネル、ホルガーにも大きな影響を与えていた。

コーネルとホルガーは幼馴染みであった。それと同じ年齢という事もあって、ハンスの元で知り合って以降はプライベートでも遊ぶ事が多く、街中にあった二人の家とは異なり少し離れた森の中にあるシュトラウス家は子供が多少騒いでも人の迷惑になる事がなかったため、溜まり場にする事が多く必然的にその母親であるアネットの世話になる機会も多かった。

当時から実力は確かだった二人は、エルウィンと違い将来に対しての明確な目標を持たずにハンスの元に通っていたのだが、事件以降は剣術訓練にまるで別人のように真摯に取り組んできた。それは自身の周りで二度と同じ悲劇を繰り返してはならぬ、そしてそのためには力が必要である、と子供ならではの実に単純な発想だったのだが、単純なだけにそれは核心でもあった。


エルウィンは当初、父親と同じ統一騎士団を目指していたが、母親の死後、同じ魔女の犠牲者を出したくない思いが強くなった事、そしてその身を挺して自身を守ってくれたエミールが所属していた事もあり、いつしかガーディアンを目指すようになった。そんなエルウィンを近くで見ていたコーネルも、エルウィンと同じくガーディアンを目指す事を心に決めたのだ。そして、もしアネットの仇敵に遭遇した暁には、親友であるエルウィンの手は汚さず、自分が始末をつけよう、そうも決めていた。なぜ?と問われても、そこは明確に理由を言語化する事が出来ないながら、なんとなくエルウィンが手を汚してはいけない気がしたから、としかコーネル自身も答えようがないかもしれない。


「このあとどうする?任命式の後は明日から長期休暇だし、それぞれ故郷に帰る前にみんな酒場に行こうぜって話しが出てるぜ?」


「んー・・・僕はやめておくよ。コーネル出るなら皆にはごめんって言っておいて!今日中にはブーケルランドに帰って真っ先に報告したいんだ!本当にお世話になったし。」


「先生か・・・。だよな!んじゃ軽く皆の所に顔だけ出して俺も今日中には帰るよ。向こうもこっちと同じで明日から休暇もらえるって話だからブーケルランドに帰ったらホルガー誘ってお前ん家で先生強制参加で四人で飲みあかそうぜ!」


「絶対本人は嫌がりそうだけどねっ!そうしよう!」


二人揃って悪い笑顔を浮かべている。

セントラルのウィーノにあるアストリア魔守護騎士団本部にて一年の見習い騎士期間を経て、各員それぞれ配属される前に二週間の長期休暇が与えられる。


一方で話題に出ているホルガーはというと魔守護騎士団への入隊はしなかった。ホルガーの目標も、根底にあるものはエルウィン、コーネルの二人と同じであった。ただし、そこへのアプローチは複数ある。ホルガーはあえて二人とは違う道を選んだ。もちろん自分なりに考えあっての事。目標とは言え現段階においてゴールは目に見えているわけではなく、まずはそのゴールを見つける事が重要だ。そのためには同じ所に三人がいて、同じ景色を見ているのでは難しいのではないか?別の場所、角度から見る人物が必要であり、その役目に適しているのが三人の中で自身であるという認識でいた。二人と同じ場所に並び立ちたい思いがないわけではない。ただ思いの外に自身が負けず嫌いであった事を自覚しており、また剣の世界においてはエルウィン、コーネルには勝てない事もわかっていた。


「ホルガー君、お疲れ様でした。今日で研修期間も終わりですね。明日からの休暇は何して過ごすんですか?」


「そういえばエル達二人も配属先が今日決まるって言ってましたね。明日から長期休暇でこっちに帰ってくるみたいですよ。なので久しぶりに三人で会おうかと思ってます。」


「エルウィン君達も!そういえば騎士団も今日で見習い騎士としての訓練が終わる日でしたね!ウィーノの本部で一年か、どうだったんですかね。彼らならきっと上手くやれてるとは思うのですが。帰ってきてる間に私も久しぶりに会いたいですね。」


「ダミアンさんも来たらいいじゃないですか。ハンスさんも含めて五人で一緒にお酒でもどうです?」


「嬉しいお誘い感謝します。でも折角一年ぶりの再会ですし師弟で水入らず楽しんでください!あ・・・一つだけ聞いていいですか?今さらですが、なぜ魔局に?以前に聞いた時には剣術において自身がないような言いぶりでしたが、その後ハンスさんに話しを聞く機会があった時はホルガー君の剣の腕前はエルウィン君達とは違う強さがあると褒めてました。ガーディアンを諦める理由になるとは私には到底思えませんしそれが本音とも思えなかったのです。もし話したくなければ無理に聞こうとは思いませんが・・・」


ダミアンの問いかけに少し悩んだ様子のホルガーだがおもむろに口を開く。


「いやぁ、買い被りすぎですよ。エルウィンは小さい頃から目標を掲げてそこに向かってずっと努力してました・・・ああいう事があってから、さらに燃えてましたし、納得はしてるんです。僕は自分で考えていたよりもプライドが高い人間だったんですよ。だから同じ時期に始めたコーネルに勝てないのが悔しかったんですよね。どんなに計算して組み立ててやっても、バカ力の一つでこっちの戦略全部吹っ飛ばしてくるんですから」


思い出してつい笑ってしまうホルガー。


「でもそれは相性の問題もあるのでは?じゃんけんみたいなものですよね?」


「おっしゃる通りです。だから納得は出来てるんですよ。あいつらから逃げたわけじゃなくて、三人共通の目的ができた。だから俺にしか出来ない事をやろうと思ったんです。実際ガーディアンと魔局で、もっと言えば統一騎士団や政府も含めてですけど、独自の調査で入手した情報は全部共有してるんですか?」


その質問に沈黙で答えるダミアン。


「ですよね。わかってたんです。同じガーディアンに三人でいても辿り着くのに時間がかかる。だったら早く目標を達成するのに情報の入手先は多いに越したことありませんからね。」


「なるほど、納得です。でもその話を現ブーケルランド支部長の私の前でするとは思いませんでした。情報漏洩はもちろん懲罰ものですよ?わかっていますか?」


本気とも冗談とも区別のつかない表情でホルガーを問い詰めるダミアン。

この八年間で変わっていたのはダミアンも同じであった。一介の局員に過ぎなかった彼もまた、例の事件以後に己の無力さを痛感し、組織や制度の改革を実施するために、そこから這い上がりブーケルランドの支部長にまで登り詰めたが、まだまだ途上である。


「聞かなかった事にしてください。これからお世話になります支部長。」


深々と頭を下げるホルガーにダミアンは支部長として堂々と応える。


「ブーケルランド支部局員として、ホルガー君のこれからの働き、大いに期待しています。」


顔をあげて目が合うと、お互い我慢しきれず吹き出してしまった二人。


今、若獅子達がそれぞれの戦場へ飛び立つ。

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