明日のカレーライス
とんとんとんとん
ざくざくざくざく
とんとんとんとん
ざくざくざくざく
ぐつぐつぐつぐつ
ぐつぐつぐつぐつ
みんな大好きカレーライス。今夜のご飯はカレーライス。
手作りしてるんだ。レトルトじゃあ寂しいから。
私の得意なカレーライスだけど、それはあなたがカレーライスが大好きだから。
楽しく美味しく作りましょう。美味しくなあれ。美味しくなあれ。隠し味は、内緒の愛情たっぷり。
ゆっくりゆっくり煮込みましょう。ぐつぐつぐつぐつ煮込みましょう。
ご飯も炊きたて、水はちょっぴり少な目で炊いたよ。
ほくほく真っ白な艶々のご飯は、カレーライスと相性抜群。それはあなたと私みたいかな。そうだといいな。
そろそろかな。カレーは出来たよ。ご飯も出来たよ。あとはあなたが食べてくれるだけ。
まだかな。まだかな。あなたの帰りがこんなに待ち遠しいいなんて、それは毎日のことだけど、待つのもまた幸せ。
早く、早く帰って来てね。私の大切なあなたのカレーライスが待っているよ。
とんとんとん
がちゃがちゃがちゃ
もしかして、やっぱりあなたが帰って来たみたい。
とびっきりの笑顔でお迎え、準備はおっけー。
「お帰りなさい」
「ただいま」
「うふふ」
「うん?いい匂いだね」
あなたもニコニコ。私もニコニコ。
ただそれだけなんだけど、それが何でこんなに満たされた気持ちになるのかな。
「あのね?」
「どうした?何?」
「うふふ、今日の晩ご飯は何でしょう?」
「う~ん、難しい質問だな。こんなにいい匂いの食べ物とは何だろうね」
わかってるのにわかってないふり。何か楽しいね。
いつまでも、いつまでもこうしていたいな。
「ユウキさん、冷めないうちに召し上がれ」
「ああ、そうだな。カレーは大好きだけど、ノゾミの作ったカレーは世界一だからな」
「あ!」
「しまった。カレーだと言ってしまった」
「うん、大正解」
「本当に美味しそうだな」
「ささ、冷めないうちに」
「そうだな。一緒に食べよう」
「そうね。一緒の食事は美味しさ百倍だから」
「じゃあ、いただきます」
「私も、いただきます」
「うん、美味い」
「美味しいね」
ふと、ユウキさんが真剣な眼差しで私を見詰めているのに気付いたけど、どうかしたのかな。
「どうかした?私の顔に何か付いてる?」
ユウキさんが視線を彷徨わせて…「明日、予定を空けておいて」
「うん、それはいいけど、どうかしたの?」
「俺達さ、付き合い始めて、4年だよね。明日はその記念日だから、お祝いしようかと思ってさ。ちょっと期待してくれると嬉しい」
何だろうと思ったけど、一緒にいられるなら、それだけで幸せだから。
「じゃあ、期待してるね」
「今から緊張して来たよ」
「え?」
「いや、何でもない。俺はノゾミといられるだけで幸せだから」
「私もよ」
楽しく幸せな晩ご飯が、これからもずっと続きますように。彼と一緒なら、それだけで幸せだから。
「ノゾミ、幸せにするから」
「…うん、それは明日のことじゃなくて?」
「しまった。ちょっと気持ちが先走ってしまった」
「うふふ。明日を楽しみにしてるね」
「お、おう。期待してくれ…ると嬉しいのだが、ハードルを自分で上げ過ぎてしまった気がしないでもない」
「ううん、いいの。楽しみにしてるね。私、今のままでも幸せよ」
「それは俺もだ」
楽しい食事が終わり、明日への期待が膨らんだ。
うふふ、何かしらね。
きっと…。
明日のカレーライス
後日譚があります。