第九十七話◆:喧嘩は青春かっ
第九十七話
屋上へとやってきた俺と笹川だったが……其処には以前笹川が倒した不良たちが居座っていた。
「……なぁ、場所変えたほうが逆に問題になってないか」
「こんなの、問題にもならないわよ」
ウソだぁ、ほら、凄く怖い目で俺たちのことを見てるぜ。
「……」
一番ごつい奴が何も言ってこないので黙っておくことにした。笹川は何処吹く風で口を開く。
「……昨日、兄さんが工業高校の不良に拉致されたわ」
「え……」
ざわっとなったのはその後ろの人たちだ。
「相手は雨乃のことを捕まえたと思っていたようだけど、まぁ、勘違いした連中はものの見事に兄さんによってのされたわ」
「……」
「今日、間違いなく復讐しに来ると思う」
復讐が復習だったならばどれほど勉強好きな不良なのだろうか。
「え、あ、じゃ、じゃあ……この場合は誰が標的になるんだ」
「兄さんに勝てないってわかったのならやっぱり、当初の目的どおり雨乃が狙われると思う」
「……」
集団リンチを喰らうというわけなのだろうか……それはそれで嫌だ。
「おい、其処のお前」
「え、俺ですか」
二メートルを超える見た目番長の男が俺に来るように指をくいくいと動かす。た、巧みな指捌きで……
「な、何でしょう」
もし、もし……俺が大変なことになったら笹川は動いてくれるのだろうか。い、いや……笹川を頼りにしちゃ駄目だ。笹川だって出来るなら平和に学校生活をしたいって思うだろうし。
近くまでよってみると番長風の男はより大きく見えた。気のせいなんかではない、大きいのだ。
「……安心せぇ、わしらがついでにお前を守ってやる……思えば、あの工業高、最近はなめたことをしよって面倒なんじゃ。おい、お前らぁ、向かってくる相手は全て潰すんじゃあっ」
「「「「おおおおおおおっ」」」」
「……」
うわ、怖い……。
「あんたらみたいな連中はついてきても邪魔なだけよ。怪我して病院行きだわ」
「笹川栞、今回ばかりはお前でも荷が重いだろう……わしらはわしらのやりたいようにやる。たまたま共闘するだけじゃ」
何だろう、この一昔前の不良漫画みたいな展開は。
屋上と廊下をつなげる扉が開け放たれ、真先輩が其処にはいた。
「やぁ、みんなおそろいで……今日の放課後、工業高校の校庭で十分間で決着をつける。これは向こうの番長が提示してきたものだ。理由は単純明快でこちらとしてもありがたい……警察がやってくる前に終わらせたいとのことだ」
もう警察は勘弁だという顔をどの不良たちも浮かべている。此処の近くの警察は非常に親身になってかなりしつこい。マンツーマンの生活を強いられるだろう……地域に密着しすぎの警察である。
「罠じゃないのか」
「違うな、今の向こうの番長は恐ろしい女番長だそうだぜ。しかも、嘘をつかないそうだ」
どう考えても俺がここにいるのは場違いな気がしてならなかった。屋上から抜け出そうとすれば、笹川に捕まれるし真先輩に睨まれる。
「いいかぁ、お前らっ……青春とはなんじゃあっ」
「喧嘩だっ」
「そうじゃあっ、俺らの青春は喧嘩で始まり喧嘩で終わるんじゃっ。勉強もできて喧嘩も出来る、文武両道とはまさにこの事じゃあっ」
それって勉強と運動系の部活を同時にすることではないのだろうかとは怖くていえなかった。
「ばかばかしい……雨乃、行くわよ」
気合を入れまくっている不良どもを尻目に笹川兄妹が屋上を後にする。
「……あのさ、何で工業高校に笹川も行くんだよ」
「……集団リンチされている友達なんて見たくないからよ」
それだけ言ってさっさと行ってしまった。
「零一君、栞はああ見えて前しか見えていない子なんだよ。あの子が君に惚れていたとすると相当、大変な目を見ると思うよ……今度から、ぼくのことをお兄ちゃんと呼んでくれて構わないから」
「はははは、冗談ですよね」
真先輩が冗談だよといってくれて本当、助かった。
笹川が彼女なんぞ、想像がつかない。
はい、そういうわけで第九十七話です。応援のお頼りなどどしどし応募していますので雨月宛によろしくお願いしますね。まぁ、どうせこないだろうけど。さて、腐ったところで意外に笹川の話だったということに気がつきました。あ~、まぁ、いいづらいことなのですがたまに雨月の小説は曖昧だったりします。これはわざとです。優しい目でスルーしてやってください。そういうわけで、次回、またお会いしましょう。三月二十四日、水曜、二十一時五十七分雨月。