第九十二話◆:朱莉or佳奈
第九十二話
ニアと少しの間遊んで(オセロ、将棋、チェス、腕相撲、だるまさんが転んだ、あて鬼、缶蹴りなどなど)佳奈の家へと帰宅……ぼろぼろである。
「ん……」
玄関を開けたとき、なんとなく、視線を感じた。いや、これは……もしかして佳奈を狙っている変質者ではないのだろうか。そう思って辺りを警戒し、素早く家へと入り込んだ。二階へと駆け上がって外から気がつかれないように注意して窓の外を見やる。
メガネに通っている高校の女子の制服……
「……なんだ、湯野花さんか」
うまく隠れたつもりかもしれないが、ばればれである。他に人影は確認できず、一人のようだ。
玄関を開けて湯野花さんが隠れているところまで走っていった。
「湯野花さん」
「ひっ…あ、れ、零一君……その……」
もじもじして、そのまま回れ右。結構本気を出して走り去ってしまった。
「……なんだったんだ」
俺、何か悪いことしたっけ……
―――――――
「なぁ、佳奈……」
「何よ」
今日も達郎さんと鈴音さんは帰ってきていない。昨日、達郎さんに殴られた部分は痣となっているが……誰かに見せるというわけでもないので放置している。
「今日さ、湯野花さんが家の近くにいたぜ」
「え……」
「お前に会いに来たのかな……俺が話しかけたら逃げられちまった。俺、何かしたっけ」
「いや、そうじゃないと思うけど」
なにやら罰の悪そうな顔をして俺の方を見る。何かあったのだろうか。
「じゃあ、何なんだろうな……」
何もしてないよなぁ、俺。変なことも言っていないと思うし……なんでだ。ケータイに連絡しても出ないし、俺って嫌われちゃったのだろうか。
疑問は尽きないわけだが……俺が考えたところで思いつきはしない。
「あのさ、たまに思うんだけど……」
なんだか言い辛そうで俺の目を見ようとしなかった。この家から出て行って欲しいといわれるのではないかという変な不安が俺を襲う。
「ん、何だよ」
「朱莉ってあんたの事……好きだと思うんだ」
「そりゃそうだろ」
「え……零一……気がついてたの」
佳奈が驚く。何を馬鹿な……
「好きだから湯野花さんと一緒にいるんだろ」
「そ、そうだよね……」
なにやらショックを受けているような表情をしている。俺は何かおかしなことを言っただろうか。
「おい、何をそんなに驚いてるんだよ。お前だって湯野花さんのことが好きだから一緒にいるんだろ」
「え……」
「だからよぉ、何でそんなに驚いたような顔をしてるんだよ。人間って生き物は好きだから他の連中と一緒にいるんだろ。まぁ、損得勘定で一緒にいたりもするが俺の場合は感情優先だな」
「……」
佳奈の顔が変なものを見るようなものへと変わる。いや、正確に言うならば相互理解が確立していないと思っているようだ。
「……朱莉のことが好きなのよね」
「ああ、そうだ。安心しろ、お前のことも一応好きだぞ」
「一応って何よ、一応って……はぁ、なんだか馬鹿みたい」
「お前がか」
「あんたがよっ」
怒られてしまった……なんで、俺は怒られてしまったのだろうか。でもまぁ、怒った割には嬉しそうだった。
「じゃあ、へんなこと聞くけど朱莉と私、どっちのほうが好きなのよ」
「……そうだなぁ、佳奈のほうかなぁ。なんだかんだで世話になっているし」
「……」
「おーい、佳奈、どうかしたのか」
「な、なんでもないわよっ」
風邪でもひいたのだろうか、佳奈の顔は真っ赤になっていた。
おはようございます、雨月です。昨日はずっと雨でしたねぇ。いや、雨月地方が。晴れていたよという方はご連絡ください、てるてるぼーずをさかさまにして吊るしておきます。換気がよくない部屋に住んでいるとすぐにとは言いませんがカビが繁殖するので気をつけましょう。たまにはお部屋の換気もしましょうね。まぁ、今に始まったわけではないのですがスランプです。いつもスランプだろ(笑)はなしのほうこうでお願いしますね。うぅん、後書きでいいネタが思いつかない。どうしたものだろうか……ああ、そういえば今回のねたは『危機的状態に陥ったとき、主人公はどっちを助けるか』というのが元だったりします。いや、かなりゆるくなっている気がしますけどそこは気にしないでください。三月二十四日水曜、七時二十六分雨月。