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第八十六話◆:校長先生

第八十六話

 文化祭が終了する時間帯、俺らは学校に戻ってきていた。単純に言うならば呼び出しを喰らったというわけである。

 終了する時間帯といってもまだ、騒がしくて色々な人がうろついている。生徒は基本的に制服でいなければいけないのだが俺らはいちいち戻って着替える暇がなかったために仕方がないのである。

「あれ、零一じゃん」

「よぉ、満じゃねぇか」

 そんな時、満に出会った。なんだか、ぼろぼろになっている気がする。気のせいだろうか……気のせいだろうな。

「…お前、また女子にふられたのか」

「違うよ、そんな暴力的な人に僕は告白したりしないさ」

 俺はつい、隣にいた湯野花さんを凝視して……叩かれた。

「じゃあ、何でぼろぼろなんだよ」

「これはほら……僕の妹の仕業だよ」

「……今ここにいるのかよ」

「帰っちゃった。惜しかったね、ついさっきまで其処にいたんだけど……」

「そうか、まぁ、俺も暴力的な女の子は遠慮しておくよ」

 雑談していると真先輩がやってきた。

「ま、真先輩……ぼろぼろですよ。笹川にやられたんですか」

「ああ、これかい。これはね、実は満君の妹さんにぼこぼこにされたんだよ。ついさっき、満君と一緒にぼこぼこにされたんだ。理由はね……ちょっと冗談を言ったんだ。いや、最初のほうに満君から『冗談は絶対に言ってはいけない』といわれていたんだけど試したかったんだ。いやぁ、言うものじゃないね。栞が最高の逸材だと思っていたけど最低で同等、栞の上を行く存在になるのかもしれない。あの剣捌き、只者じゃないとぼくは睨むよ。零一君、君も冗談好きなタイプだからね。偶然森で出会ったとしても絶対に相手をしちゃ駄目だよ。目を向けちゃ駄目だ。逸らしたままでスルーだ。スルーが一番の選択肢。君が女の子が大好きだったとしてもあれは危険だとぼくは思う。勿論、栞も同様でなかなかの危険度数を……げふっ」

「雨乃は文化祭、来ないって言ってなかったっけ」

「よ、笹川」

 笹川栞、文化祭に光臨……沈んだ真先輩が可哀想だが構っていられるほど俺は暇ではなかったりする。すみません、先輩。

「俺は校長先生に呼び出されたんだよ……こっちの湯野花さんとな」

「……ふ~ん」

 信じていないような顔をされてしまった。

「行きますよ、零一君」

「ああ、悪い、待たせちまってよ」

「……」

「……」

 湯野花さんと笹川が睨みあっている。険悪な雰囲気だ……満も真先輩も俺の後ろに下がっていた。

「あの、何で俺の後ろに……」

「僕は関係ないからね」

「おなじく、ぼくもこの争いで生まれるであろう嵐は関係ないと思うんだ。いつもいつも、関係のない人たちが傷ついてしまうのは流石にどうだろうかとも思う。悪いことは言わないからさっさと立ち去ったほうがここにも迷惑かけないと思うからさ」

「しょうがないな……湯野花さん、行こうぜ」

「……わかりました」

 にらみ合いを強制的に終わらせることが出来たことでもよかったとしよう。相変わらず、笹川の視線は怖いものだったが……まぁ、いつものことだ。気にしない気にしない。



――――――――



「あまり私は感心しないな」

「何がでしょう」

 校長室にあっさり入ることが出来た俺たち(ノックしないといけないと思っていたがドア自体が開いていたので開いていたドアにノックすると煩いと言われた)はソファーに座るよう、指示を出されたのである。

 校長室とは流石、一番偉い人の部屋である。偉い人たちが沢山いるのだ……まぁ、写真だけどな。そんな歴代の校長達が俺たちを見ていた。まぁ、俺は別に歴代の校長に用などないし、興味がわいたら図書館にでも行って何をしたのか調べてみるさ。

 目の前のまだ、写真にはなっていないお爺さん校長と湯野花さんはにらみ合っている。

「……君たちは私の高校の生徒だ。何か事件に巻き込まれでもしたら保護者の方に申し訳がたたない」

「何が言いたいんでしょう」

 俺は喋ってないヨ。俺が喋っても多分、湯野花さんの邪魔になるだけだろうし後で何を言われるかわかったものじゃないから。下は上についていけばいいのである。上がこけそうになったらそれを支えてやるだけでいいのだから楽だな。

「……ストーカー調査をやっているそうじゃないか。それを危険といわないで何というんだ。危険だというときに」

「校長先生……いや、おじいちゃん」

 まさかのおじいちゃん宣言。ああ、言われて見ればなんとなく、目元が、いや、口元が似ているかもしれない。自信ないけどさ。

「あたしにはきちんと身を守ってくれる友達がいます」

 何処にいるのだろう。

「何処にいるんだ」

 おじいちゃんも探している。大げさに探しているところを見ると本当にわからないらしいな……俺もわからんが。

「此処にいます。雨乃零一君が……あたしを守ってくれます」

「「え」」

 ついつい、おじいちゃんとかぶってしまった。だけど、驚いたんだから仕方ないじゃん。

「守ってくれますよね」

 湯野花さん、俺の足を踏んでいます。睨まないでください。上がこけそうになったとき、下が支えればいいとか心の中でつぶやいたのは俺ですからねぇ。

「え、あ、ああ……勿論だ。湯野花さんが危険なときは俺が守ってみせる」

「ね、おじいちゃん」

「……私の言うことを聞かないというのなら、雨乃零一君、君には退学してもらう」

 まさかの急展開。まるで俺が悪いとでも言うような口ぶりだ……。


どうも、雨月です。いやぁ、日曜日ですね。色々と忙しい時期になってきたわけなのですが、まぁ、今までどおりの更新スピードを維持していこうとは思っています。今回の話は、というか、この長編に関しては基本的に湯野花朱莉の話ですので依頼よりもそっちが重要になるのかもしれません。それではまた、次回お会いしましょう。三月二十一日日曜、九時四十九分雨月。

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