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第八話◆:笹川の実力

第八話

 覚悟をきめなくてはいけないときがある。これ以上、醜態をさらしていても仕方がないので(さらしまくってこれ以上さらすものなど何もなくても)人間としてきめなくてはならないのだ。

 屋上には合計五人の御仁が立っていた。高校生かよっと突っ込みたくなるほど身長が高い(全員二メートル超えているはずだ)うえに、まるで山のような人たち。

「入学式はよくもやってくれたなぁ」

「俺達がこれからこの高校の番長になろうって思っていたのによぉ」

「って、お前ら高校一年生かよっ」

 てっきり三年生かと思ったよ。え、こんな岩山みたいな高校一年生っているのかよ…

「笹川一人じゃよぉ、絶対に無理だろうから公平になるようにお前の彼氏も同伴させてやったんだぜ。俺達、優しいよな」

 ゲハハハハ、そんな笑い方をするともう、高校一年生なんかには見えたりしない。しかも、どうやら俺の耳がおかしくなってしまったようで彼氏とまで言われてしまった。

「う~ん、彼女が笹川さんでもいいけど性格が……」

「何かいったかしら」

「いえ、何も」

 今、五人を前にして足が震えているというのにお隣さんを怒らせて敵を増やしたくない。

「理想の女性です、はい」

「よろしい」

「漫才している場合じゃないぞ、ごらぁっ」

「てめぇらはここでなぁ……」

 そういっている間に笹川さんが動いた。俺が気がついたときには、あちらさんが気がついたときには番長と思しき男のあごを思い切り上げた右足で蹴り上げていた。

「うが……」

「……いってなさいよ、くだらない」

 あ、今向こう側に立ってたらパンツが見えていたかも……なぁんて、考えている場合でもなく怒り心頭となった番長さんのお友達が笹川さんに殺到(あぶれた一人がこっち来たっ)している。

「死ねぇっ」

「そんなの当たっちまったら本当に死ぬわ、馬鹿っ」

 大振り、且つすきだらけのその瞬間に俺は迷わず蹴りを喰らわせる。

「うぐ……」

「っと、流石にあれだけは鍛え方がわからなかったか……」

 俺が何処を狙って蹴り上げたかは秘密だ。ともかく、相手には悪いが思い切り蹴り上げさせてもらった……脚力には自信があるのできっと今夜はいい夢見るに違いない。

「いったそうだな…悪い、お前が悪いんだぞ、あっちにいかないから」

「さ、帰るわよ」

 すでに、やるべきことをやり終えていた笹川さんが猫を連れて歩くように俺を持ち上げる。くそ、そっちのほうが身長が高いからといってその態度は一体全体何なんだよ。

「ま、待てよ…あんた、一体全体何者なんだ」

 流石は番長(俺の私的意見である)、あの一撃からもう復活したらしい。

「知ってのとおり、わたしの名前は笹川栞。平凡な高校一年生よ。わかったならもう、付けねらわないでね。もし、付け狙ったら……」

 そのときは……それだけいって黙る。ああ、これは本当に怖いな。

「……わかった、俺も男だ。負けを認めよう」

「よろしい、じゃあ、帰るわよ」

「……」

 完全に、俺、要らなかったな。第一になんで俺は呼ばれたのだろうか。

 蒼天がコンクリートの天井に消えて階段を下る。

「あんた、本当に強いな~……何でだよ」

「別に、転校生君には関係ないでしょ」

「おいおい、俺は笹川さんの友達だろ……ごはっ」

 みぞおちに鋭い、というか重たい一撃が……

「……勘違いしないでよ、転校生君は単なる隣の席だから」

 階段踊り場に捨てられて、その背中は去っていった。

「くそ、もしも輪廻転生があったら次、生まれ変わったときにリベンジしてやる。覚えてやがれっ」

 そこで、俺の意識はぷつりと途切れたのであった。



―――――――



 目を覚ましたら目の前に美少女がいるというわけでもなく、五分と経過していなかった。まだ、屋上に番長方がいらっしゃるのだろう。そういうわけで、俺は慌てて教室へと戻ることにする。いちゃもんつけられたら面倒だし。

「あ……零一」

 一階廊下まで戻ってきた後に、後ろから声をかけられた。

「何だ、佳奈か」

「何だとは何よ……何、またぼろぼろ……あんた、いじめられてるんじゃないの」

「いや、別にいじめられてなんかねぇよ」

「本当にぃ……」

 疑惑の目をこちらに向ける。勿論、嘘はついていないので頷ける。

「本当だ」

「顔も傷だらけだし……」

「何でも無いって…じゃあなっ」

「あ、ちょっと零一っ」

 危うく笹川さんの秘密を口にするところだった。これ、言っちゃったらどうなるか本当にわからないもんなぁ…。怖いこともあるけど、約束したんだから言わないようにしておかないと。

 あ、そういえば廊下って走っちゃ駄目だったっけ。


→それでも走る。


 ぱしる。


 ぱしるって……誰をだよっ。


右よし、左よし、前よ~し、後ろよしと。危険がいつ何処で、貴方に差し迫っているかはわかりません。『どんなときでも僕が君を守るよ』そんな甘い言葉にだまされてはいけません。デンジャラスが服を着て歩いているような今日、自分のみは自分で守りましょう。女性はスタンガンが有効でしょうかね。それが無理なら防犯ブザー。きちんと持ち歩いて防犯しましょう。男の方も襲われる時代、そういうわけで防犯ブザーを一応、持ち歩いておいたほうがいいと思います。それではみなさん、気をつけて夜道は歩きましょうね。二月一日月曜、十七時五十七分雨月。

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