第七十八話◆:佳奈は多分、気にしない
第七十八話
集団登校したその日の夜……鈴音さんと達郎さんが急用で帰っていなかったために俺がハンバーグを作り、佳奈と食べていた。残暑も前よりよくなったが、夕刻辺りも生暖かい風が吹いたりする。
「ん~、おしい」
一瞬、おいしいと聞き間違えて両手をあげてしまった。そのままの状態で一言。
「お、やっと前よりましになったな」
「うん、やっぱり一番おいしいときにおいしいって言いたいからさ…ところで、何で万歳してるの」
「気にするな……なるほどな、だからこれまでおいしいって言わなかったんだな」
変なこだわりがあるもんだなぁ。
「ああ、それよりさ。今日結構な人数で登校したじゃん」
「したな、それがどうした」
「……あの人たち、一体全体零一とどんな関係なの」
下から覗き込むような視線が俺を見る。俺はまたかと思いながらも実は用意していた言葉を口にする。
「女番長、忍者、ストーカー」
あと、ペーター。
「は、はぁ……それだけじゃあ……わからないんだけど」
首をかしげ、さっぱりわからないといった調子だ。
「ぺ……佳奈ならわかってくれるって思ったんだけどな。やっぱり、伝わらないか……肩口まで髪があって目が鋭い奴の名前が笹川栞。俺のクラスメートだ」
「ふ~ん」
あんまりちゃんとした反応ではないよな。まぁ、そんなものはどうでもいいか。
「次が……銀髪でぼさぼさ、端正な顔立ちの外国人がニア・D・ロード。これはまぁ、なんだ。友人だ」
「ふ~ん」
どうでもよさそうな反応だよなぁ。ペーターが聞きたいから話しているというのに。
「……で、だ。メガネでいかした誰かさんと違ってボイン……待て、お前は何で俺にひっつこうと」
「いいから、続けなさいよ。それと、顔が真っ赤よ。何考えてるんだか」
「うっせえっ……こほん、湯野花さんのことはお前のほうが知ってるだろ」
「出会いは」
「え……えーとだな、後をつけられていたのが出会いだな」
「ふ~ん」
「それで最後が雨乃佳奈。俺がお世話になっているところの愛娘だ。著しく生活力に欠け、掃除という言葉を嫌い、料理という言葉を嫌い、俺という存在を拒み……」
「拒んでないわよ、ほらほら」
「だぁかぁらっ、寄ってくるなっ」
「拒んでいるのはあんたのほうでしょ」
「こ、拒んでねぇよ」
「じゃあ、ほらほらほら」
またもやニヤニヤしながら寄って来る佳奈から俺は離れる。
「く、何故俺はこうやって寄られると逃げちまうんだ……写真や映像だったらなんともねぇのに」
以前、笹川の家でエロ本を探したときはなんともなかったのに……佳奈の薄い胸の下着姿で鼻血を出して倒れてしまうとは俺も語るに堕ちてしまった。
「あ~、また失礼なこと考えてるでしょ」
「か、考えてるわけねぇよ」
「ウソついちゃって。私にはわかるんだからねぇ」
得意そうに胸張っているが、何でこいつが俺のことをわかるんだ。そんなに俺って顔に出やすいタイプかねぇ。そうはおもわねぇんだけどな。
「それなら俺もお前が何を考えてるか当ててやらぁ」
「どうぞどうぞ」
「……」
真剣度数マックスで佳奈の顔をじっと見る。相変わらずのあどけなさが残っている顔だな。なんだか知らないが、佳奈の目が泳ぎ始めた。
「おい、しっかりと俺の目を見ろよ。何か後ろめたいことでもあるんじゃないかって思っちまうぞ」
「ち、違うわよ……」
「違うんならちゃんと見ろって」
「わかったわよっ」
そう怒鳴られる。やれやれ、相手の心を見るって言うのも大変だ。佳奈の目をじっと真正面から見ていると、今度は佳奈の顔が真っ赤になった。
「一応聞くが、何で真っ赤になってるんだよ」
「し、知らないわよっ、馬鹿っ」
「何で馬鹿扱い受けないといけないんだよ……」
「それより、何か適当にでもいいから言いなさいよ」
「まだだっての」
またもしっかりと佳奈の目を見つめる。ここまで言われたからには読心術を学んででも考えていることを当てて見せないとな。
「……おい、目を閉じるなよ」
「………零一の馬鹿っ」
顔面に佳奈の拳が突き刺さった。お星様が瞬いている間に佳奈は自分の部屋へと逃げ込んでしまった。
「……理不尽だ」
何故、俺はこんな報いを受けないといけないのだろうか。教えて、お星様。しかし、お星様は教えてくれない。痛みの数だけ瞬いて、それだけだった。
え、今日はバイトないんですか……これが、作者雨月がバイト先にチャリで行った結果です。あ、そうなんですかぁ……知りませんでした。朝のサイクリングを終えて、帰宅。よかった、家がなんとなく近くてさ……ともかく、休みとなったわけなのですよ。そういうわけで、執筆しないと。昨日の疲れが腕に出ていますがそんなの関係ありません。そして、ゲ○に行ってゲームを売ってこないといけません。部屋を片付けて、他には……とまぁ、休日は有効に使わないといけませんね。まだ、色々と後書きに書き込みたいところではございますがいっぱいありすぎてどうしようもありません。そういうわけで、誤字脱字ありましたら報告お願いしたいと思います。それでは、また次回。三月十五日月曜、九時三十三分雨月。