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第六十九話◆:興味

第六十九話

 今更の話だが、俺は湯野花さんのことを詳しく知らなかったりする。高校生の癖に変にお金に執着しているとか、商売をしているとかは知っている。大体、出会い方からして彼女が俺を追跡していたというちょっとした異常性を持っていたりするのだ。人を追跡するのは正直、よくないことだろう。まぁ、俺が言うのも説得力が無いかもしれないけどな。それはおいておくとして、これまで湯野花さんにはあまり興味がなかったわけだが、一度気になりだしたら調べてみないと気がすまない。そういった理由で俺は個人的に湯野花さんのことを調べることにした。

 帰りに大学ノートを購入。さして重大な内容を書かないだろうが随時更新していくとしよう。時間を無駄にしないためにも、家に帰って聞くことにしよう。

「……は、朱莉がどんな人か教えてくれって……」

「気になるからな」

 部活を終えて帰ってきた佳奈が食事を採り終えたタイミングで聞いた。達郎さんはまだ帰ってきておらず、鈴音さんは入浴タイムである。そういえば、ここにやってきたその日に達郎さんから『鈴音の入浴時に覗いた時は覚悟しておけよ』といわれた記憶がある。あいにく、そういった趣味は無いので俺には関係ないわけだがどういった覚悟をしておくのかについて興味があったりする。しかし、興味本位で要らぬ事をするのもどうかと思っているのでいまだに覚悟についてはわからなかったりする。

 話がずれてしまったわけだが、世の中そううまくいかないように出来ているのが常識というものである。佳奈はジト目で俺を見て首を振った。否定の仕草をされたというわけだ。

「嫌よ」

「えぇ、何でだよ」

「……人の個人情報を勝手に教えたりしたくないもの」

 まったく、佳奈は俺の話を聞いていなかったのだろうか。別にどんな人間であるかを聞いているのであって個人情報ではないと思うんだけどなぁ。ついでに言わせてもらうのならば、俺の秘密をあっさりと湯野花さんにパフェで売ったと脳みそが記憶しているのだがそこのところはどうなんでしょう、佳奈さん。

 しかし、これは考えようによってはパフェで佳奈から様々な湯野花情報を聞き出すことが可能であるという、そういった可能性も持ち合わせているはずなのだ。口は固そうに見えて実は甘い。これもまた、佳奈の数多くある悪いところの一つであろう。

「今度パフェ奢るからさ。な、頼むよ」

 一瞬、佳奈の瞳が揺らいだ……と、思ったが悲しそうにため息をつくのであった。はっとさせるような表情をどうしてするのだろうか。

「……やめておくわ、人の秘密を他人に教えると後悔しないといけないってわかったから」

 その台詞からは絶対に喋らないぞ、たとえ、パフェで釣られたとしても絶対に喋らないという決意が伝わってきた。出来れば、俺の秘密を湯野花さんに聞かれたときにこうやって口が固くなってくれていたらよかったのになぁ。

「そうかぁ、仕方ないなぁ」

 無理に情報を聞き出すのは流石にやめておいたほうがいいだろう。あまりしつこく聞いてしまうと佳奈から直接湯野花さんに俺が調べているという情報がいってしまうかもしれないからな。用心はしておかないとあの人もこれで飯を食おうと考えているんだろうから。

「で、なんでそんな事を私に聞くのよ」

 当然のようにそんなことを聞かれたが、俺は慌てない。

「ん~、俺が知りたいんじゃなくて、湯野花さんのことを好きな男子がいるんだよ。代わりに聞いて欲しいって頼まれたからさ」

 この程度の嘘、法律で裁けるものなら裁いてみせやがれ。へっへっへ、それに俺って嘘つくの結構得意なほうなんだよね。

「その顔、嘘ついているわね」

「嘘ナンテツイテイナイヨ」

 馬鹿な、俺のクールなポーカーフェイスがこうもあっさりとばれちまうなんて……

「ま、どの道教えてあげないけどね」

「ちぇ、優しい気持ちも胸並みにお前はないんだな」

 皮肉交じりにそういうと、佳奈はいきなり服を脱ごうとし始めていた。俺は慌ててそれを抱きつくような感じで押さえる。

「やめろって、馬鹿。お前は何で服を脱ごうとしてるんだよ」

 そういうと佳奈は笑っていた。

「零一の反応っておもしろいわね……あ、胸に手が当たっているわよ」

 急いで離れる。そりゃあ、仕方ないでしょ。胸に手が当たっているなんていわれた日には訴えられたら男はなかなか勝てませんよ。

「う・そ」

「くっ、いちいち味な真似を……」

 誰か、こいつのウソを法廷で裁いてください。

 佳奈とこれ以上話をしていても疲れるだけだ。そう考えて俺はさっさと寝る事にした。明日から本格的に湯野花さんのことを調べていかなくてはいけない。まずは湯野花さんのクラスの担当教師を見つけ、次に職員室の警備の薄い時間帯を調べ上げなくてはいけないだろう。

 彼女のクラスメートから話を聞くのも一つの手段だがやはり、その人の主観的な意見が絶対に入ってくることと、その人が湯野花さんに俺のことを喋りかねない。あの人のことだ、自分のことを聞いてきた男子のことを全部網羅してその相手をストーキングしているに違いないね。以前聞いた話じゃあ、何回か警察にお世話になっているようだしこれは身長に調査を行っていかないとな。

 そんな事を考えていたためか、わくわくのためにその日はなかなか寝付けなかった。まぁ、いわゆる遠足前の寝不足と言う奴である。もっとも、俺の場合は遠足なんてあまり好きではなかったために例としてあげるだけにとどめておこう。


はい、また一週間のはじまりです。まだカラオケの疲れがしっかり残っていますが気を抜いたら事故を起こすので(タンスの角に足の小指をぶつける)気をつけましょう。敵は何処から攻めてくるのかわかりませんからね。三月八日月曜、七時二十五分雨月。

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