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第六十六話◆:ゼロツーへの序章

第六十六話

 俺がニア家に招待されたのは九月の中盤。まだまだ残暑の残る暑い日のことであった。

「熱対策はな、ちゃんとしておかないと後で大変なことになるんだぞ」

「あ~はいはい、そんなのよくわかってるから安心しろ。だけどよ、ニアからそういわれてもあんまり説得力ないよな」

 熱中症になった後で風邪を引いてしまったらしいニアを見舞いにやってきたというわけである。どうにも、何故そんなことになってしまったのか俺にはわからない。

「そういえば、じーじが零一に見せたいものがあるって言ってたぞ」

「知ってる、それが目的で今日は此処に来たんだからな」

「むぅ、ニアのお見舞いに来たってさっきは言ったじゃないか」

「いや、まぁ、確かにそうだけど……爺さんのほうはついでだ。ニアのお見舞いに来たのが主だな」

「そう、そう言ってくれればいいんだ」

 布団に寝かせつけ、頭の上に乗っていた温かいタオルを近くの冷水で冷やして絞り、またのせる。

「じゃ、ちょっと爺さんのところに顔出してくるわ」

「……零一、気をつけてな」

 ニアにそういわれるとかなり不安になるのは何でだろうか。



――――――――



 もはやお馴染みとなった階段下にある地下へと繋がる階段。正直言うけど、ここまで童心をくすぐられるものはこの世にないんじゃないかと俺は思う。旧家の蔵に封印されている何かとか、地下へと繋がる階段、謎の天井裏に開かない扉の向こうの部屋、設計図には部屋があるのに今となっては壁を作ってふさがれてしまったなどなど……あげればもっと出てきそうなものだが日本家屋とは実にすばらしいものである。

 地下へとやってきた俺だが、以前行ったときと何ら変わりのない薄暗く、じめじめした地下というにふさわしい地下室、いや、地下通路だった。

「……爺さん、何処にいるんだよ」

 声を出してみるが、近くに反応は無い……と、思いきや背後から人の気配が近づいてきた。

「……ほっほっほ、若造、よく来た」

 忍び装束を身に纏った爺さんがこちらへと歩いてくる。覆面は目の部分のみを出しており、もう、忍者以外に見えそうも無い格好をしている。

「なぁ、爺さん……あんた忍者なんだろ」

「何を言い出すかと思えば……そんなわけがなかろう。残念ながらわしは忍者ではないぞ。そんなことよりも今日は若造に見せたいものがある。地下三階の研究室で待っておるからな」

 そういって爺さんの姿が一瞬揺らぎ、姿が消えている。

「……絶対忍者だろ」

 あの人を忍者といわないで他に誰を忍者といえばいいのだろうか。爺さんが姿を消した足元には一つの巻物が転がっていた。

「……」

 忍者だな、あの爺さんは。他の誰かが忍者じゃないって言ったって俺はもう信じないぞ。



―――――――



 巻物に書かれていた物は地下三階までに行き着くための地図。その地図によると地下一階はいたるところにある扉やゴミで侵入者を惑わすもの、地下二階は普通に客間のようだ。地下三階へと向かう方法はこれがまた、ややこしくて一度地下二階まで降りて、地下一階へと通じる別の階段を上り、そこから地下三階へ直接通じている階段で向かわなくてはいけないということである。要するに地下一階は二つに区切られているために地下二階から区切られた地下一階へと階段を使わなくては地下三階に向かえないという面倒くささである。

 区切られていた地下一階のほうは普通の廊下といった感じで階段も梯子のような物だった。ぼろぼろといった感じではなく、かといって新品というわけでもなさそうだ。俺の逝く手をさえぎるような面倒な仕掛けも無ければ追いかけてくるマネキン野郎もいなかったのでほっとしている。

 地下三階は完全に研究室といった感じでパソコンやマネキンの腕などが転がっている。立ち入り禁止のシールが張られた部屋もあった。

「おお、よく来た。迷っておったかと心配しておったぞ」

「嘘付け、そこのモニターで確認できるんじゃねぇかよ」

 壁一面に広がっているモニターには地下一階や地下二階、そのほかにも色々な場所を映し出している。監視カメラなどを見つけたことは無かったのだが見落としてしまっていたのだろう。

「で、俺に見せたかったのはこの部屋なのか」

「いいや、そうじゃないぞ。これじゃ」

 指差した先には一つの画面がある。中には二頭身の女の子と思われる絵が動いていた。

「お前さんの話を聞いてわしと友人達が作り上げたプログラム……『ゼロツー』じゃ」

「ゼロ……ツー」

「いま、身体のほうを別の友人に委託しておるからな。もう少しすれば実際にゼロツーとお前さんがかけっこをする日がやってくるじゃろう。科学の力とは凄いものじゃな、若造よ」

「……」

 画面の上には一つのカメラがつけられており、それがどうやら目のようだった。しきりに動いて俺の姿を確認している。

『貴方がゼロワン様ですね』

 画面にはそんな文字が浮かび上がった。

「おお、早速反応したようじゃなぁ」

 爺さんは非常に嬉しそうに俺とモニターを交互に見ていた。

「で、こんなの作ってどうしようって言うんだよ」

「……将来的には人と共存できるようにしたいというのがわしの夢じゃ」

 その時はよろしくやってくれよといわれた。う~ん、実際は忍者じゃないのかもしれないな…どっちかというと悪の組織の科学者っぽいところがあるものなぁ。


土砂降りの中、昨日片道30分のゲ○までいきました。アーマー○コアの発売日だったからです。操作なんて全く出来ないのはきっと相変わらずなんでしょうけどね。機械万歳。三月五日金曜、九時五分雨月。

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