第四十六話◆:零一の夢です。
第四十六話
「ん……」
「ふぅ、やっと目を覚ましてくれた……」
目が覚めるとニアの部屋にいた。そして、布団に寝かされている。
「あ、れ……ん、俺、トイレから戻ろうとして……うを、ニア……」
「心配したんだぞ、零一」
気がついたらニアに抱きしめられていた。
「そんな大げさな……俺はただ、トイレに行って……戻ってこようとして……ん、あれ……」
記憶がない。用を足したところは覚えているのだがそれ以上の記憶が頭の中から消えている、いや、消されている気がしてならなかった。
「びっくりしたぞ、零一が戻ってくるなりニアの布団で寝てしまったんだからな」
「え、そうなのかよ……」
全く記憶がない。しかし、事実はそうだ。俺は今こうやって布団の上でニアに抱きしめられているというなんともいえない状況なのである。
「まぁ、ともかく……今日はもう帰ったほうがいいぞ」
「そうだな……もうこんな時間か」
気がついたら夜の七時をまわっていた。そろそろ帰らないと鈴音さん達に迷惑をかけてしまう。
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ニアの家で勉強をした日に変な夢を見た。
『侵入者、排除シマス』
「うわっ」
廊下の端を掴んでいる俺を地の底から掴んでいたのは……マネキンだった。そのマネキンは紅く目が光っており、腕が一、二、三……四本ある。肩辺りから左右一本ずつ更に生えているのだ。猫の手も借りたいときに非常に役にたつであろう。顔は女性型なのに胸の部分は男のもの、四本ある腕は普通に生えているものが男性のようで太く、背中にある二本腕は女性のものなのか細かった。関節あたりから見えているものはコードで、人間ではないということを物語っている。まぁ、このマネキンを見た時点で人間ではないとわかるだろう。
そんな事を冷静に考えていると足に指が食い込むのがわかる。こいつ、相当力が強い。
「ぐっ」
追い討ちをかけるように背中に二本ある腕が伸びてきて俺の脚を掴む。指は合計六本あって親指が二本あった。小指の隣にまた親指があるといった感じである。
もう、ここまでか……そう思って手を離したとき誰かの手が俺を掴んで引き上げた。
「ニア……」
「危なかったな、危うくじーじの魔の手にかかるところだったぞ」
ニアは忍者のような服装をしていて左手にはクナイが握られていた。
「さすがニアじゃな。よくぞ暴走したからくり人形を止めた。あの一瞬のうちに全ての関節にクナイを打ち込むとはもはや人間とは思えんぞ」
わしは地下迷宮から逃げてきたから助かったがな。そう言っていた。
「じーじ、零一が危なかったじゃないか」
そういってニアは爺さんに駆け寄る。
「大丈夫じゃ、腕力の制御はしておったからな」
「その割には腕の力がめちゃくちゃ強かったんだが」
足にはくっきりと誰かにつかまれた後があざとなっていた。まるで怪談じゃねぇか。
「ほっほっほ、あれがフルパワーだったならば今頃若造の片足はなかったじゃろう」
笑っていえる爺さんが怖い。だが、先ほどのマネキン、いや、からくり人形のことについて気になって仕方がなかったりする。再び、ニアに助けられた付近まで歩いていくとそれを阻むように腕をつかまれた。
「すまんのう、若造みたいに好奇心が強いのはわしにとってはちょっと邪魔なんじゃよ。お前さんがこれを知るのはちっとばかり危ない。ニアの友達ではなかったら……」
笑顔が、かなり怖かった。
「何、今回は記憶を消させてもらうだけじゃから安心せい」
「え、ええっ。この記憶を消すのかよっ」
「そうじゃ。どうせおぬしがこの記憶を取り戻したときにはすでに隠蔽工作が済んでおるからのう。今度はきちんとした完成品を若造に見せるとここに誓おう」
試験管を渡されてその中のものをかがされた。その後の記憶はない。
―――――――
「夢、だよなぁ……」
あんなからくり人形が存在するわけ無いだろう。きっと夢だ。
夢です、これは零一の夢ですからおきになさらず。さて、こんなに更新が遅くなったのはバイトの所為です。言い訳ですけど、腕がもう、ぱんぱんというか、力を入れているのにだらんとなっている状態ですよ。力が入りません。愚痴ったところでどうにかなるわけでもないんですけどね。次回は雨月初めての会話文のみで話が進みます。ご期待、ご感想お待ちしておりますのでよろしくお願いいたします。お、明日はバレンタインじゃあないですか。消えちゃえばいいのに、バレンタイン。二月十三日土曜、二十二時四十二分雨月。