第四十三話◆:暁のご主人様
第四十三話
休日の次に来るのが基本的に平日である。そして、今日もその例外となることは無かった。
「……」
「零一、なんだか元気がないねぇ。どうかしたのかい」
満がやってきてそんなことを聞いてくる。
「ちょっと休日での疲れが溜まっちまってな」
「ああ、だからモデル雑誌を読んで気分を落ち着かせようとしているんだね」
うんうんと頷いている。
「いや、そうじゃないぞ。これは……」
「いいって、いいって。うん、やっぱり僕は間山由美子がいいと思うよ」
そういって指をさす。
「人当たりがよさそうだし、可愛いし。プロポーションも抜群じゃん」
「ま、人間一度話してみないとわからないからな。大体、こういうやつってお高くとまっているって言うのがオチだな」
「あ、でもさでもさ、栞ちゃんだったら普通にモデルになっても大丈夫そうだよね」
言われて隣を見る。上から下まで座っている姿を確認してみた。
「ん、そうだな……笹川だったら普通にいけそうな感じだよなぁ」
「……何か用かしら」
面倒くさそうに俺ら二人は見られた。しかし、この程度で俺はともかく満は話をやめなかったりする。
「ねぇ、何かポーズとってよ、栞ちゃんっ」
「やだ」
そういって再び読書に戻った。ま、写真は何も喋らないから意外とこの、間山由美子って奴も似たような奴かも知れんな。大体、興味なんて特にないし。
「あ、そういえばこの間山由美子のお兄さんって隣町にいるらしいよ」
「へぇ、そうなのか」
根も葉もない噂を流す。
――――――――
放課後、満と別れて家に帰っていると猫を見かけた。いや、さも珍しそうな感じだがたまに猫は見かける。だが、俺のほうに近づいてきて目の前で止まり足に猫パンチを繰り出してくる猫は生まれて初めてだった。
「何だ、何か俺に用でもあるのかよ」
「にゃーん」
黄色い縞々の虎猫は人間の言葉を理解するのか一度鳴いた。そして、俺にお尻を向けてもう一度鳴く。ついてこいといっているようにも思えた。
「あ~、あれか。もしかしたらテレビでよくあっている動物の珍事って奴か。猫の後ろをついて歩いたらその先でけが人がいたとかそういったのか」
「……にゃ~ん」
ま、猫に聞いてわかるわけでもないな。こういうものは実際についていけばわかるものだ。
――――――――
「で、猫に連れてこられてスーパーにつきました」
以前鈴音さんと一緒に買い物をしたスーパーの駐車場で猫は止まったのである。
「何だ、もしかしてお前は俺に餌を買って欲しいとねだっているのか」
「にゃ~ん」
察しがいいな、坊主。そういわれた気がした。
「……ちっ、しょうがないな」
何処の野良猫だか知らないがいいだろう、今日の俺は機嫌がいいからな。
「ちょっと待ってろ。何か買ってきてやるからよ」
「にゃ~ん」
猫の声を聞きながら俺は猫の餌を買ってきてやることにしたのだった。そして、買って戻ってくるとやはり猫は待っていた。駐車場で餌をやるのもどうかと思ったので近くの公園へ行くことにする。
「ほれ、お前の目当てのものだぞ」
「にゃ」
まるでお礼でも言ったような気がして変な気になる。この猫、変に人なれしているってことは野良猫じゃないのかもしれないな、そう思った。
相当腹が減っていたのだろう、あっという間に猫缶はなくなってしまった。
「にゃ~ん」
そしてまた、歩き出した。数歩先で振り返り俺がついてきていないとまた鳴くのだった。
「なんだよ、今度は……もう餌は買わないからな」
「いいからさっさと来い、愚図がっ」
いいからさっさと来い、愚図が。そういわれた気がして、なんだか吐き捨てるように言われた気がしてならなかった。きっと、気のせいに違いない。猫が喋るなんてありえない。疲れているのだろう、俺は。
―――――――
亀の背中に乗ってあの人物は竜宮城へ、綺麗な女性に導かれてとある少年は異世界へ、猫にいざなわれた俺はちょっと古ぼけた家についた。
「で、ここがお前の家ってか」
「にゃ~ん」
うん、やっぱり猫は喋らないな。
再び鳴いて俺の懐へと飛び込んできた。
「うわっと……今度はどうした」
「ん、お客さんかな……おや暁も一緒か」
「え、あ……」
後ろを振り向くと其処にはやせた一人の男子生徒が立っていた。どうやら、俺と同じ高校の先輩に当たる人のようだった。
俺が何か言う前に、その先輩が口を開く。
「君が暁を連れてきてくれたんだね。いやぁ、よかったよかった。さ、御礼もしたいから中に入ってよ」
「え……」
「大丈夫、ぼくは知らない人を家に入れたりしないタイプだから」
いや、今入れようとしていますけど……そう言おうとしたら肩に手を置かれた。
「さ、行こう雨乃零一君」
「え……」
「そう、その顔。何で知っているんだというその顔……まったく、何度見てもたまらない、最高だな。あ、言っておくけど別に君が有名というわけじゃないよ。ぼくは君の知り合いの兄だから。表札を見ちゃ駄目だよ。答えが一発でわかってしまうからね。ああ、でも、君の知り合いの中に同じ苗字の人間が複数いるという確率も低くは無いからね。見ても構わないよ。さ、どうぞ。穴があくまで、どうぞ好きなだけ見るといいさ。まぁ、穴があくまで見続ける人間なんて何処にもいないと思うけどね。目からビームとかが発射されているというのならその目がぼくを見た時点でぼくは穴が開くほど見られてしまっているということになってしまうね。いや、しかし……」
未だぶつぶつと一人で言っているこの人物が誰かの兄だって……俺、こんな風に喋る人間の知り合いなんていないと思うんだけどなぁ…満だってここまで喋らないし、けど、満の兄かもしれないな。その割には顔が鋭い感じなんだけど……
一人で喋っている謎の人物を無視する。そして表札を見た俺は息を呑んだ。
『笹川』
え、マジかよ……
怪談話、ええ、まだ尾を引いていますよ。そういうわけで今回の後書きは前回の話についてというより、作者である雨月の話ということで。零は怖かったということだけを言っておきましょう。雨月はあれをやって一ヶ月悪夢にうなされました。アホですね、全く。まぁ、それはおいておくとしてバイオハザードも犬が窓から入ってきてビビッた記憶があったりします。ヘタレ……まぁ、いいんです。ヘタレで。ともかく、零は怖かったのがありますが最初に出会った幽霊が小さな女の子だったために親戚の代わりに最後までプレイ。最初、あの『どうして』とかいうあれだったら絶対に……無理だったでしょうねぇ。ともかく、怖いものには近づくな。心霊スポットを知っていたとしても無謀に突撃するのはやめましょう。では、また次回お会いしましょう。二月十一日木曜、十九時三十分雨月。