第四十話◆:黒、白の選択
第四十話
知らない言葉は満に聞け。それが諺なのか何なのか、俺は詳しく知らないがとりあえず、自分が知らなければ誰かに聞いたり調べたりすることがあるだろう。偶然というか、以前のこともあって俺は満に聞くことにしたのだった。
「今日、吉田は休みだ」
しかし、珍しく満が休んでしまったために質問することは叶わなかった。ま、別にいいか。今度聞くとしよう。
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明日に迫った別荘宿泊。海に入るということなので海パンを買いに行くことを決意。本当は以前のものを使おうと思っていたのだがタンスから取り出す際に引っ掛けて破けてしまったのだ。相当、使い込んでいて半分透けて見えるとか中学時代に言われたのを思い出した。あれは嫌な思い出だったなぁ……
ともかく、大切な部分が縦に真っ二つという悲惨な状態だったために新品を求めてデパートへ。勿論、誰かと一緒に行くわけでもなく(湯野花さんを誘えるはずも無く)一人でやってきた。やはり平日の夜だったために休日によく見る親子連れなどがあまりいなかった。
ちょっとまだ早いかと思っていたがデパートではすでに海パンが売られていたのでそれを見てほっとする。紳士用の隣には女性用の売り場があり、女性用水着売り場の近くには下着も売られていた。
「う~ん」
もし、ここに下着泥棒をつれてきたら泣いて喜ぶんだろうなぁ。地上の楽園だとか聖地とかそんな感じかもしれない。しかし、世の中はわからないようで以前満に聞いたところそれは違うとのことである。
追跡癖はあるが下着泥棒ではない俺にはさっぱりわからない理屈であるためにこの理論のことは放って置くとしよう。第一、俺の用は水着である。
「水着水着……ん」
そこで、知り合いを発見した。その知り合いは湯野花朱莉という。鏡の前で悩んでいるようだ。
「……」
声をかけることなく陰に隠れてこっそり見ることにした。今年は水泳の授業が無いために十中八九俺と同じ理由で買いに来たのだろう。
さて、ちょっと早いがどういった水着を湯野花さんは着るのだろうか。
「やっぱり、こっちですね」
「…え」
そんな声がついつい、出てしまったがあそこまで聞こえてはいないはずだ。
湯野花さんがレジに持って行ったのは学校で着ているのがよく似合うであろういたって普通のスクール水着(紺色)だった。
まぁ、妥当な線……なのだろうか。
湯野花さんがスクール水着(紺色)と何を悩んでいたのだろう。そう思って彼女がいた場所においてある水着を遠くのほうから確認する。
「色で悩んでいたのかよ」
おかれていたものはスクール水着(白)だった。
ちょっと変わった趣味だなぁ、海に行くのにスクール水着なのか……でも、上からTシャツを着ている状態で海に入るのなら別に恥ずかしいというわけでもないかな。
そこで気がついた。俺は何で他人の水着姿をいちいち脳内でイメージして対策を講じているのだろうか。アホらしい、さっさと海パンを買って帰るとしよう。
――――――――
家に帰って準備を始める。海パンを一番下にセットし、その他必要と思われるもの(着替え、非常用携帯食料、懐中電灯、電池などなど)をバッグに入れ込む。
その最中、部屋がノックされた。
「どうぞ~」
「ごめんなさいね、零一君」
入ってきたのは鈴音さんだった。エプロン姿がよく似合っていらっしゃる。
「どうかしたんですか」
「ええ、明日から宿泊だというのはわかっているの。それでね、私達も……正確に言うと私と、達郎さんも温泉旅行が当たっちゃって……家に残るのは佳奈だけになるのよ」
その目は切に俺に訴えかけてきている。佳奈も一緒に連れて行って欲しいと。一ヶ月以上一緒に生活してわかったのだが佳奈が作った料理は不思議な何かというレベルではないし、誰かが起こさないと休日は目を覚まさない。部屋は女子の部屋というよりもはや、一人暮らしの大学生の部屋(やってきた当初は俺の目があるために努力して片付けていたらしい)である。学校にいく時間帯になったらいまや俺が佳奈を起こしに行き(当初は絶対に入るなと釘をさされていたが)他にも鈴音さんや達郎さんが休日出勤の場合、俺が佳奈の昼食を作っているというこの状況。
当初は何でも出来る凄い親戚だと思っていたが誰かがいないと普通の生活も怪しい親戚という位置づけである。
「わかりました、ちょっと聞いておきます」
「ごめんなさいね」
その後、澤田は快く佳奈が同行することも承諾してくれてこれで家に帰ってきたときゴミ屋敷になっていなくて済む、そう思えた。
まぁ、道の途中にはやっぱり障害というものが存在するわけです。小説なかなか書き進められないし……というのはいいわけです。ただいまゲームに没頭中でしたが全クリしたので一旦そっちはおいておくとしましょう。ちなみに、GEです。支部長万歳っと、私事はこの程度にして小説の話をしましょう。さて、遂に宿泊の話になってきましたね。それはいいんです。順調です。今後、どういった展開になるかはわかりません。ただ、一つだけ言えることは読んでいればいずれわかります。そして、作者である雨月も小説を書いていればわかることでしょう。自分ですらわかっていないなんてどうしようもない……というわけで、次回もよろしくお願いします。二月十日水曜、二十一時、四十分。