第二十九話◆:ニアホーム・クエストⅠ
第二十九話
ニア・D・ロードは俺の友人である。そして、ニア・D・ロードにとって俺は友人である。友人が友人を家に招待することになんら異存はないし、構わないことだと俺は捉えている……勿論、その家がちょっと問題があるというのならば俺は遠慮してしまうだろう。ニアの家は危険だ。まず、第一に俺には家が無いので家を改造するという気持ちがよくわからない。そして、物事というのは最初は普通に、ごくありふれたそこらへんにある石ころのようなものから始まって実はそれが爆弾であったということで終わるのである。
放課後、ニアに偶然出会って一緒に帰ることにしたのだ。今思えば、そこが分岐点。ニアに出会っても無視して走り去ればよかったに違いない。
「じーじに零一のことを話したらすごく、喜んでくれたぞっ。ニアに友達が出来たのが嬉しかったそうだ」
にこにこと笑ってそういってくれる。相変わらず、普段の見た目とギャップがありすぎる。大人びた感じなのに笑い方が一生懸命。
「そりゃよかったな」
「今日、ニアの家にまた来るか……じーじが会いたいって言っていたから」
「ああ、別に構わないぜ。どうせ今日は暇だからな」
そういうと実に嬉しそうに笑う。う~ん、現代人が忘れた笑顔といっても過言ではないな。
「それでな、じーじがあれからがんばって改良して家、すごくなったぞっ」
「……待った、そこでがんばって改良して家がすごくなる必要がわからないな」
「もう、家のみんなどんな改造やっても驚かないから零一の反応が嬉しかったそうだ」
「……」
あ、俺も悪いってことですか。畜生、以前あんなに驚かなきゃよかったぜ。
「それでな、じーじが大変なことになった」
「大変なこと…どうした、事故ったのかよ」
首を頷く。
「うん、そうだ。じーじが自分の部屋に閉じ込められた」
「……は、それってどういう意味だよ」
「そのままの意味だ。地下室にあるじーじの部屋からニアは助けを求められているんだ」
「……警察には言ったのか」
「ううん、警察信用できないってじーじが言ってるから言ってないぞ。だから、ニアと零一で今日、助けに行くんだっ」
えいえい、おー……。
本当、人生って何が起こるのかわからねぇな。
―――――――
ニアホーム・クエスト ~じーじを救えっ~
→最初からはじめる。
勇者の名前→零一。職業、ストーカー。腕っ節、自信ない。頭脳、明晰じゃない。運のよさ、こんな状態だからないといっていい。彼女、いない。
零一「お邪魔しまーす……っと、ニアの爺さんの部屋はこっちだったな」
床に落ちている百円玉を零一は無視した。
ニア「零一、それはダミーだ。苦労した後に待っているものは絶望の崖だけだぞ」
零一「……いちいちそんなたとえで言うなよ。お前が言うと余計怖いからよ」
ニア「ニアは親切に言ってあげているだけだ。さ、こっちだぞ」
ニアは階段下にある扉を開けた。
ニア「ここから、地下に繋がっている。引き返すなら今のうちだ」
零一「よし、帰ろう」
零一は逃げようとした……が、回り込まれた。
ニア「零一っ、じーじを見捨てるのかっ」
零一「冗談だよ、冗談」
零一は隙を窺っている。
ニア「……そうか、やっぱり怖いんだな…大丈夫だ。ニアがちゃんと掴んでいるから」
ニアにつかまれてしまった。零一は逃げることが出来なくなってしまった。
零一「……」
零一とニアは『階段下の階段』を通過した。
―――――――
零一「暗いな」
ニア「じーじが迷子になったらいい子になっても戻って来れない場所だって言っていたぞ」
零一「……」
カチリ…
零一はトラップを作動させてしまった。
零一「おい、今何か踏んじまったぞ」
ニア「馬鹿だな、零一は」
零一「……だけど、なんともないな。
じーじ「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ……」
零一&ニア「……」
→一応、記録をつける。
何故か、続きます。あと、二回ほど引っ張ることが出来ればいいんですけどね。なかなか……難しいです。二月五日金曜日、二十一時八分雨月。