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27:悩みの種と夢探し◆

27

「はぁ~」

 明日から夏休み。心躍る言葉に違いない……まぁ、受験生にとって夏休みなんてあってないものって言ったほうがいいのかもしれない。言われるままに、日課のように授業を受けるものではないのだが『参加自由っ』という勉強会が教室で行われるため、半強制的に夏休み学校に行かなくてはいけないのである。

 もちろん、これらは受験生……つまりは大学進学などを目指している生徒たちの話であって一応就職組の俺には関係のない話だといっていいだろうな。大体、高校に残れるのかどうかさえ怪しいからだ。


『………旗色は悪いようです』


 麻妃から電話を受けて二日。がっかりしたような麻妃の声のおかげで俺の心の中も曇り空である。授業中だってぼーっとしているし、おかげでサッカー部が蹴ったボールが顔面に激突して保健室送りにあってしまった。

「はぁ~」

 屋上から二酸化炭素を吐きだしてみるも答えは出てこない。どうすりゃいいんだろうなぁ、この前みたいに直訴しに行ったところで空振りで終わりそうな気がするしなぁ。

「一先輩」

「ん」

 日差しの強い中、剣がアスファルトに佇んでいた。

「どうかしたのか」

「それはこちらのセリフですよ。まだ二時間目の授業中のはずです」

「………ああ、そうだな」

 なんだかもう、ね、危ない気がするのだ。昨日、校長先生から呼び出されて話を聞いたところ『君が受けたい授業だけ受ければいいから』そう言い渡されたのである。校長先生が実に残念そうな顔をしているのをよく覚えている。

「剣のほうこそ授業に出ないといけないだろうに」

「一先輩がいないから探しに来たのですよ」

「二時間目っていうけどホームルームだろう」

「授業に違いはありませんよ」

 剣のほうを見ずに、今度は屋上から校庭のほうを見渡してみた。広い、ただ広い校庭。校門が見えて、横断歩道が見えて、赤い屋根の家と喫茶店が見えるぐらいだ。あとは雲の少しだけ浮かんでいる空ぐらいだろう。

「なんだか元気がないようですが何かあったのですか」

 隣にやってきて俺の視線の先を同じように見ていた。

「何かあった、じゃなくて勝手に起こっていたっていったほうがいいのかもな。剣、お前みたいにしっかりした奴は前を見据えてしっかりあるいてくれよ」

「どういうことですか」

「さぁな。ほら、俺を呼びに来たんだろ。教室に戻ろうぜ」



――――――――



 放課後、剣がいないことを確認して宵乃淵さんを呼び出していた。呼び出したって言うよりかは一緒に帰ろうって誘っただけだがな。

「珍しいですね、零一さんが誘ってくれるなんて」

「そうか」

「そうですよ」

「そういった日もあるってことだ」

 二人して並んで帰る。特に目的もなく、ぶらぶらと歩いていた。

「明日から夏休みですね」

「………そうだな」

「勉強会に行かないといけないから遊びとかにいけないのが残念です。せめて一年前に転校してこられたらよかったって思いますよ」

 恥ずかしそうに海とかに行きたかったですと言ってくれた。

「なぁ、静」

「何ですか」

「静の夢ってどんなのだ」

 なんだか怪しい術を使うような職業につくのか、それとも占い屋の怪しい店長になるのかどっちなんだろうな………まぁ、少しだけ他人の夢が気になったりしたわけである。

「夢ですかぁ………」

 しばらくの間顎に手を当てて考え込んでいたのだが口元をゆるめて教えてくれた。

「幸せになることですよ」

「偉く漠然とした夢だな」

「そうですけど、幸せって人によってそれぞれじゃないですか。甘いものを食べることが出来ただけで幸せって思う人もいるし、大金持ちになれれば幸せって人もいます」

「………確かにそうだな」

「だから、私は自分の幸せを見つけたいんです。幸せになるための足がかりになるようなものなら何でもいいんです。最終的に見つけられれば。零一さんの言うとおり漠然的ですけどいつかは形にしてみたいんです」

「幸せかぁ」

「零一さんの夢は何ですか」

 当然、聞かれるだろうと容易に想像ついた質問だったのだが、あいにく俺は回答を用意できていなかった。

「俺は………」

「決まってないんですか」

「………だな、ない。考えた事もなかった」

「じゃあ探したほうがいいですね。夢の一つぐらいあったほうがいいですよ」

 宵乃淵さんがそこまで言って分かれ道に到達した。

「じゃあ、また今度……えっと、夏休み中に会えますか」

「………受験生は勉強をがんばるんだ。そのほうがいいだろうからな」

「そうですね、夏休み明けに会えますから寂しくないです」

 手を振る宵乃淵さんに同じようにして応じる。彼女が曲がり角を曲がるまで俺はバカみたいに手を振り続けていた。

「夢を探す、ねぇ」

 ちょっとだけ思いついたことがあったのだが、それは何だかみんな裏切る事のような気がして選択肢に入れようとは思わなかった。

 とりあえず、明日の朝に東家に行ってもう一度直訴してみることにしよう。

 近くで鳴いている蝉が偉く遠いところで鳴いているような気がしてならなかった。


ハッピーエンドは好きですか?お嫌いならば、もちろんBADENDの準備もできます。見た人すべてが後味の悪さにいやな顔をするようなエンディング………雨月も以前、そんなエンディングをみて一週間得も言わぬ嫌な感じをまとわりつかせていました。ある程度先が見えてきたようなので30話ぐらいでけりをつけられそうです。あくまで、この話だけですけどね。零一が二年生の話がないのにもちょいと理由があったりしますのでいつか二年生の話をかければいいかなと思っています。ではまた、次回お会いできればお会いしましょう。

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