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25:夏、静◆

25

 人間にはいつだって選ぶ権利がある。立場、状況、心境、約束………そういったものが足かせとなって選べない選択肢も時にはあるのだろう、だが、しっかりと選択肢は存在している。

 放課後の約束を破ってどこかに行ってもいいのだがそうなった場合は宵乃淵さんから嫌われることは必須、約束を破ったことを剣が知れたらさらに嫌われることだろうな。まぁ、それはそれで一つの道であるのだ。しかしね、嫌われたくない相手だから待っておくのが常道ってところだろう。

「お待たせしました。放課後の掃除が長引いてしまったんです」

「わかってるって」

 女子トイレだったために手伝えることなどなかった。無理に手伝おうとすれば破廉恥ストーカーというレッテルを貼られてゴミ箱行き決定だろうな。きっと剣が大活躍して女子の株を挙げるに違いない、そして俺は剣レジスタンスのリーダーとして崇められて賞金首になってしまうだろう。

「で、放課後どこにいくんだ」

「いろいろ回りたいなって思っていたんですよ。こっちに来てもあまり一緒に遊びに行けなかったりしたじゃないですか」

「ああ、それもそうだな。じゃ、剣も誘えばよかったんじゃないのかねぇ」

「剣さんはえっと、ほら、忙しい感じがするから誘いづらいんです」

「………ああ、俺は就職組だから誘いやすいってことか」

 そう言うと首を振られた。

「違うのか」

「こっちで初めて友達が出来て、それで遊びに行かないって変じゃないかって思うんです。だから一緒に遊びに行きたいなって思っていたんですけど………その」

 そこで口ごもった。髪で顔が隠れて表情が読みづらい、夏が近づいているおかげで夕日はまだ沈み切っていないのだがこれじゃ意味がないわけだ。

「いつも剣さんと一緒にいるじゃないですか」

「ああ、そりゃあ俺の友達がいまのところ静と剣しかいないからな。静といないときは基本的に一人か、剣と一緒にいるからなぁ」

 自分で言っていて寂しくなってくるな。友達が少ないのには慣れているのだが実際に言葉にしてみると本当にコミュニケーション能力に問題があると思われそうだ。

「やっぱり、剣さんみたいな人と一緒にいると楽しいんですか」

「楽しい………ねぇ、別に楽しくはないな。友達って一緒にいるから楽しいってわけで一緒にいるわけじゃないだろ。静だって俺と一緒にいたって別に毎日楽しいわけじゃないだろ」

 そう言うとしばし考えたのちに頷かれた。ちょっとショックだ。

「まぁ、何だ、世の中は広いから損得で友達を選んだりするやつもいることだろう。俺の場合は一緒にいても苦じゃないし、自然体でいられるし、何より気がついたら縁が出来ちまっているから一緒にいると思ってくれればいい。成り行きって言ったら剣に怒られそうだけどな」

 どこに行くのかもまだ聞いていないので気持ち、宵乃淵さんに遅れる形でついて行く。

「じゃあ、私と一緒にいても、零一さんは自然体でいられるってことですか」

「そうだな、そう言うことになるんだろうなぁ。自分の精神状態なんて冷静に考えてないからはっきりとは言えないけど」

「………剣さんと一緒にいるときと、私と一緒にいるとき、どっちが自然体で入れると思いますか」

 気のせいだろうか、顔を真っ赤にして、一生懸命になっているような………まぁ、何かの精神的なテストなのかもしれないし、気軽に答えたほうがいいのかもしれない。気負って精神テストなんて受けても意味がないからな。うん、適当に答えておこう。

「場所と、精神状態、状況に理由といったものが関係してくるだろうな。たとえば、まさかの冗談が剣に対して悪影響を与えてしまった場合はたとえ一緒にいたくなかったとしても誤解が解けるまで頑張らないといけないだろうし、もしも静に悪いことをしてしまった場合は一生懸命謝るに越したことはない」

「普通の時ですっ。そんなもしもの話はどうでもいいんですよっ」

 ありゃりゃ、結構頑張って答えたつもりなんだが頑張りすぎちゃったみたいね。

「普通の時なのか」

「そうです。何か特別な事情があったときはその人と一緒にいるでしょうから仕方ないですけど………どっち、ですか」

 何やら決意を固めた様子である。返答によっては身を引きますみたいなそんな感じ。

「で、どっちなんですか」

「ん~、強いて言うなら」

「強いて言うなら……」

「二人と一緒にいた時だな。仲良し三人組って感じでさ。あ、仲良し三人組だって言ってもお手手繋いでるんるん、じゃないぞ。恥ずかしいからな」

「………どっちかって言ったじゃないですか」

「剣と静じゃ甲乙つけがたいだろ。剣はまっすぐすぎるし、静は独自の世界をもってそうだから」

「こういうときは嘘でもいいから『静と一緒にいるとより自然体でいられる』って言ってくれると相手からしたら嬉しいものなんですよ」

「そうなのか」

「そうですよ」

「じゃあ、今度から気を付ける。で、今日はどこに行くんだ」

「………とりあえず喫茶店に行って決めましょうか」

 なるほど、二人で一緒に決めるのか。てっきり俺は宵乃淵さんが一生懸命考えてくれていたものと……そんなわけないか、デートじゃないんだし。


十二月なのに、雷なんてありえない、本当に思いました。ただまぁ、雷がびかびか、がしゃーん(文を書いているとは思えない拙い表現ですみません)となった時に思い出しました。『そういえば、怖い話でいきなり転校が変わって雷が……』一種の死亡フラグですよ。まぁ、今のところはなんともないですけどね。その後、パン屋に入ったらずぶぬれの作者を見てレジ係のお二人様がぎょっとしてこっちを見ていました。問題があったのかと思って店を出てしまったのを後悔しています。感想なんかがありましたら書いてやってください。それではまた、次回があればお会いしましょう。

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