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24:呼び方◆

24

「これは何の騒ぎですか」

 件の剣が教室の扉を開けたところでしんと静まり返った。他の教室から聞こえてくる喧騒が一段と大きく買ったように思えたのだが、剣の登場は場を静めさせるほど大きかったということなのだろうか。

剣登場の数秒後には、俺と宵乃淵さん、剣を遠巻きに囲むような形でクラスメートたちがひそひそと話を始めている。中には『修羅場か、修羅場か』と騒いでいる奴がいたりした。

「廊下のほうまで声が聞こえていましたので………一先輩、一体どうしたのですか」

「いや、特に騒いでいたってわけじゃないな。なぁ、宵乃淵さん」

「………」

 宵乃淵さんは俺のほうを見るとそっと目を伏せた。気のせいだろうか、泣いているようにも見えたのだがその行動を予期していなかった俺はショックのあまり声が出ていた。

「え」

「一先輩、宵乃淵さんに何か言ったのですか」

 そして、困惑している俺を見て剣は非難がましくそんなことを言ってきた。

「え、いや、言ってない。なぁ、みんな」

 こぞって集まっていた連中に同意を求める。それ以外、助かりそうな道がなかったからだ。

「さぁ、次の授業の準備しなきゃ」

「あ、今度デートいかねぇか。今年でお別れだからさ」

 何だろう、地方から都会に出てきて初めて人の冷たさに触れた気分だ。

「どういうことですか、一先輩っ」

「いやいや、冷静になってくれ。別に俺が何かを言ったわけじゃないな。な、宵乃淵さん」

 宵乃淵さんのほうへと顔を向けてみたのだが、彼女は俺と目があった瞬間に教室を出て行ってしまった。

「あ、ちょっとっ」

「一先輩、早く追いかけてあげてくださいっ」

「もちろんだ」

 宵乃淵さんを追いかけるため、俺は教室の扉を勢いよく開けて走り始めたのだった。



―――――――



「吉田さんっ」

「なんですか」

「雨乃先輩を一生懸命追うんです」

「え、それは何故ですか」

「いいから、早くっ」

「は、はぁ、わかりました」



――――――――



 宵乃淵さんがどこに向かっているのかわからない、わからないが……どこかに行く前に捕まえることには成功した。

「離してくださいっ」

「いやいや、ちょっと話を聞いてくれっ」

「零一さんと話すことなんて何もないんですっ」

「俺にはあるのよ、ちょっと話を………あれ、剣」

「…………」

 振り返ると変な顔をした剣が立っていた。変な顔、朝起きたと思って外に出てみたら夕焼けがあった、それを見た時の顔をしている。

「零一さん、剣さんを連れてきてどうするつもりですかっ」

「これは………剣が勝手についてきたんだよ。そう、だよな」

「一先輩を追いかけるようにクラス中の女子から言われました。理由はさっぱりわかりません」

 困惑した表情がめったに見れないものなのだが、そこまでじっくりと眺めているわけにもいかない。

「宵乃淵さん、落ち着いてくれ。そんなに下の名前で呼んでほしいのなら今後呼ぶからそれで許してくれ」

「許すとか、そういったものじゃないんです」

「じゃあどうすればいいんだ」

「ともかく、手を離してください。逃げませんから」

 逃げないのなら放してもいいだろうと言うことで素直に手を放してみた。なるほど、確かに宵乃淵さんは逃げなかった。

 さて、これから俺はどうすればいいのだろうか。宵乃淵さんは俺のほうを見ようとしないし、剣は何かを考えているようで頼ることは出来なさそうである。かといって、逃げるのも追いかけてきた人間がするべき行動ではないし………。

「えっと、と、とりあえず剣と……その、静、教室に帰ろうぜ。授業がそろそろ始まるだろうし」

「………」

 少しの間、宵乃淵さんは俺をの事を見ていたのだが首を縦に動かしてくれた。

「わかりました」

「ほら、剣も行くぞ」

「え、ああ、はい」

 いまだ何かに対して納得の言っていない剣は俺たちより先を歩いて行きぶつぶつと呟いていた。

「………どうしたんだろうな」

「さぁ、それより………零一さん」

「なんだ」

「放課後、ちゃんと付き合ってくださいよ」

「ああ、覚えているから安心してくれ」

 機嫌が良くなった、わけではないのだがとりあえず最悪の事態を回避できたようでよかった………まぁ、学校で悩める時間がなくなると言う問題もあるのだがそれはそれ、これはこれである。


師走ですね。そして今日はあのゲームの発売日でした。電気屋、ゲーム屋に行列がぞくぞく………か、どうかはわかりませんがそんなことは関係ないですね、はい。更新期間が開いた理由としては諸事情があるのです。少数ながらも読者様がおられるのでご迷惑がかかっていたら、悪いんですけどね。今は次回作のサブタイトル名を一生懸命考えている途中です。前作、今作みたいに変な奴じゃなくてある程度意味をもったものを考えているのですがこれというものが思いつかないのが現実ですかね。ま、期待している人がいれば幸いです。

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