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23:フラグ立て◆

23

 校門前まで剣と一緒に歩く。東家から此処に来るまで俺の右手を掴んで離さず、引っ張られてやってきたのだ。逃げるとでも思っていたのだろうか。

「じゃあ、遅刻になってしまいましたが行きましょうか」

「悪い、ちょっと用事があるから今日は休む」

「休むって……」

「身辺整理って言ったほうがいいな。俺があそこにわざわざいってまで知ろうとしたことなんだ。早めに終わったら授業に出るから安心してくれ。じゃあな」

 もしかしたら、これが剣と会うのが最後かもしれない。そう思いながら背中を見せたのだが身体が動いてくれなかった。

「何を言っているのですか。遅刻といえど、しっかりと授業に出なければなりません。一先輩も私と同じで遅刻をしたことがないのでしょう。不安になるのはわかりますが、私がいます。安心してください」

「………いや、な、違うんだ、剣」

「心配しないで下さい。私がしっかりと説明しますから」

「…………」

 うまいいいわけが思いつかない。

「ところで宵乃淵さんには連絡したのか」

「まだでした。ちょっと待っていてください」

 完全に逃げると思っているのだろうな。こんなときでも俺の手を掴んで離してくれなかった。

「ああ、大丈夫です。一先輩が授業に出ているかもしれないから授業を受けているとメールが来ていました」

「あらまぁ、そうなの」

「そうです。では、参りましょうか」

 結局、俺は剣に引きずられて行ってしまったのだった。ああ、神様、今度生まれ変わった場合、剣から逃げれるほどの力をくれませんか。



―――――――――



 剣と一緒にいたためか、教師は其処まで怒らなかった。昼休み、とりあえず事の次第を宵乃淵さんに知らせることにした。ちなみに、剣は用事があるようで職員室へと向かっている。

「大変だったんですね」

「そうだな、それなりに大変だった。あ、剣には話さないでくれ」

「え、知っているんじゃないんですか」

「適当にごまかしてる状態だからな。剣は無駄に心配したりちょっとおせっかいなところがあるからな。受験生だし、下手に迷惑かけたくないし」

「………あの、私には話してますよね」

「うっかり話しちまったからな。黙っておきたかったんだけどまぁ、聞かなかったって事にはさすがにできないだろうからさ」

 宵乃淵さんはこっくりとうなずいた。髪の毛の間から時折見せる目が嬉しそうに光っていたりする。

「無理ですっ」

「元気があってよろしい」

「黙っておく代わりにちょっと放課後付き合ってもらえませんか」

「ああ、わかった」

 そんな会話をしているとクラスの女子たちがやってきた。宵乃淵さん目当てかと思って席を立とうとすると囲まれる。

「え、何、俺に用事でもあるのか」

「はいはいっ。そうなんですっ、あの、雨乃先輩って吉田さんと付き合っているって本当なんですかっ」

「………どこからそんなデマが流れてるんだよ………」

「零一さんは別に剣さんと付き合っているわけではないんですよ」

「そうなんですかぁ」

 なんだ、がっかりしたとやってきた数人は肩を落としていた………が、甘かった。

「お前らなぁ、雨乃先輩は宵乃淵さんと付き合ってるんだぜ」

「は」

「え」

 俺と宵乃淵さん、目が点状態。

「そうだそうだ、吉田剣なんて超狂暴生命体が雨乃先輩に釣り合うわけないだろ」

 余談だが、剣の性格を知らない男子生徒諸君はアタックをかけるのだがはじかれる。剣は自分を倒すことが出来た相手の話なら聞いてやるとオープン状態だが柔道部、剣道部の男子たちは負けてしまった。プライドをへし折られたのか、今では閑古鳥が各部活で泣いていたりする。

「宵乃淵さんはとても神秘的じゃないか」

「見た目変かな、って思っていると意外と明るくてかわいくて、ちょっと暗めな自分を支えてくれる人を探しているんだぜ」

「雨乃先輩にしか相手はできねぇだろう」

 うんうんとうなずいている周りの連中。

「そんなわけないでしょ、それに今日吉田さんと一緒に遅刻してきたのは何よ。二人で朝から仲良くしていたら遅くなったに決まっているでしょ」

 決まってないよ、うん。

「偶然だろ、お前らこそ宵乃淵さんが雨乃先輩と話しているのを見てなかったのかよ。あんな笑顔、俺たち相手にしてくれねぇぜ」

「そうだぞっ」

「じゃあ、吉田さんだって雨乃先輩にしか甘えたりしないでしょ」

 あーだこーだと論争をしている為にうるさい以外の何でもない。全く、他人のことで人はどうしてここまで熱くなるのかね。

「宵乃淵さんも大変だな~」

「そ、そうですね」

「しかしまぁ、男子に大人気だな」

「え、あはは、ありがとうございます」

「ほら、見なさいよっ。『宵乃淵さん』って呼んでいるわっ。雨乃先輩は吉田さんを呼ぶときは呼び捨てで『剣』って言っている………まるで長年連れ添っている夫婦のようだわ」



――――――――



「剣~、あれどこに置いたんだ」

「ああ、あれなら食器棚の引き出しの中にあります」

「おお、そうか~」



――――――――



「って、感じっ」

 女子側はうんうんうなずいている。『あれで通じ合えるなんて夫婦だ』なんて本当に思っているのだろうか。

「そりゃお前、吉田さんなんて言ったら吉田剣の兄、つまりは雨乃先輩の友達まで反応しちゃうだろ。だから、下の名前で呼んでいるだけなんだよ。もし、雨乃先輩が『剣たん』なんて言っていたら駄目だろ」

「駄目ね、私だったら警察を呼んでいるわ」

 これまたうんうんうなずいている。そしてここで、宵乃淵さんが立ちあがり周りの注目を集め始めた。

「そういえば、そうですね。あの、別に零一さんなら『静』って呼び捨てにしてくれても………いいですよ」

「お、おお~」

「だ、駄目ですか」

 ああ、宵乃淵さんって意外と可愛いんだなぁ、そう思ってとぼけてみようかとも思ったのだが、墓穴を掘る以外の何者でもない気がしてならなかった。


さて、今回の話はいかがだったでしょうか。もうちょっと煮詰めてもよかったような気がしましたが……まぁ、そうでもないですね。次回作、脳内で一年目メインヒロインがしんがりを務めて行方不明、主人公は放心………そして別の人物が登場、まで行きました。文章にはなってませんのでどうなるかも未定。この小説もまだ終わっていないですし、やるべきことはたくさんあるものです。前作を越えなくちゃいけませんからね。前作もリファインしたほうがいいかなと思っていたり、いなかったり。感想を書きたくなった、小説を書きたくなったと思った方はどうぞ書きましょう。次回、『世界に名だたる覇者、霧之助、宇宙そらを目指す』をお送りする予定です。なお、内容は勝手に変わっている可能性がありますので信じすぎないように気を付けてください。ではまた次回。

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