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22:暗中無策◆

22

「『会わせる顔がない』、そういっていたからお母さんはお兄様に会おうとしませんでしたよね。何故、今になって………」

「悪い子なのかどうなのか、私もこの目で見たかったからよ」

「………納得しかねます」

「納得してくれなくてもいいわ」

「それに、どたばたしているような性格なのに上品さを気取って……」

「あら、それはとても大切なことなのよ」

「どうでしょうか」



――――――――



 麻妃が俺についてきたのはエントランスまで。それ以降はついてこようとしなかったし何やら非常にご機嫌がよろしくなかったので早々にさよならをつげて東家を後にする。

「一先輩っ」

 扉を開けたその先にいた人物は剣だった。右手には携帯電話を握りしめて、肩で息をしている。

「え、どうしたんだ」

「どうしたんだ、じゃありませんよっ」

 剣は吐き捨てるようにそう言うと俺に迫ってきて胸倉をつかんでいた。目は、まさに戦闘モードに入ったそれに違いなかった。何と言う、気迫だろうか………満はこの気迫に毎日脅かされているのであろうから妹に頭が上がらなくなるのも仕方がないことなのかもしれないな。

「一先輩、何故私からの着信を速攻で切ったのですか」

「あ、ああ。まぁ、ちょっと俺のほうも用事があったんだ。別に剣だったから、切ったわけじゃないんだ」

「宵乃淵さんにはしっかりと連絡をしていると聞いています。メールで私に伝えておいてくれてもよかった、そうは思いませんか」

 ああ、思う。忙しかったのだがそう言う時こそ『急がば回れ』という言葉を贈りたい。冷静になって一度立ち止まり、自分がいまするべきことを考えなおし、自分自身を見つめなおすのだ。これを馬鹿にしてはいけない。バカにしたからこんな状況を引き起こしているってことだ。

「ところで、剣……なんで此処に俺がいるってわかったんだ」

「一先輩のアパートに向かったら風花さんにあったのです。風花さんに教えてもらったのですよ」

 なんだ、風花とは入れ違いになったのか。しかし、いつまで経っても胸倉つかまれたままじゃあ苦しいんだが。

 試しに、己が持てる全ての力を集約し、剣の右手に挑む。

「ふ、うぐぐぐぐ………」

「無駄ですよ。おとなしく何があったのか教えてくれませんか」

 くっそう、一体ぜんたい、こりゃどういうこった。全力で挑んでいると言うのに微動だにしないとはなぁ………。

「一先輩、話を聞いていますか」

「ああ。話すからこの手をどけてくれないか。話しづらいんだ」

「逃げる恐れがあります」

「あのなぁ、やましいことなんて一切ないんだから逃げる必要ないから安心しろ」

「では、やましい事があった場合、一先輩は逃げると言うのですか」

「イイヤ、僕ハ逃ゲナイヨ」

「嘘臭いですが……いいでしょう」

 剣から解放されたわけだが……本当、お強いのね。こりゃ喧嘩になったときにどれだけの被害をこうむるかシミュレートしたほうが身のためか………いや、喧嘩している時点で身のためじゃないな。

「それで、何がどうなって、今こうして一先輩が此処から出てきたのか詳しく説明していただけますか」

「わかってる。ところで………」

「話を変えないでくれませんか」

 ぎらりと輝く二つのお目目にびくつきながらも聞かずには居られなかった。

「剣、学校行かなくてよかったのか」

「………宵乃淵さんから様子がおかしかったと言われました。だから手分けして探していたのです」

「そっか………ありがとな」

 そう言うと剣は首を振った。相変わらずまっすぐな瞳である。

「礼には及びません。第一、一先輩だって私が似たようなことをしたら同じようにしてくれると信じています」

 信じる、信じないはあなたしだいです。ごめんよ、剣。俺だったらたぶん宵乃淵さん一人に任せて学校へ行ってしまうかもしれない。だけどまぁ、人間というのは他の人とのしがらみで生きている者である。今の俺が、そう思っているだけで実際に剣の言うようなことが起こったらいくかもしれない。

「そうだなぁ、絶対とは言い切れないけど行く可能性はあるかもしれないな」

「ちょっと、残念です」

「俺にそこまで期待するなよ」

 一緒に東家から出て、アスファルトの道を歩く。晴れ、周りに人はいないが夏を感じる日差しである。

「真面目な剣が、ちゃんと授業に出ないと駄目だろ」

「………ですが、一先輩の事が気になるのです」

「心配してくれるのは嬉しいんだけどなぁ。俺のせいで受験に失敗したとか、そんなことになったら本当、へこむぜ」

「進路については大丈夫です。しっかりとした計画を立てましたから」

「………」

「どうかしたのですか」

「え、いや、何でもない」

 剣はやっぱりちゃんと先の事を考えているんだな。ずるいな、そう考えてしまう自分が悲しかったりするのだが………ただ俺が考えていないだけなんだろう。

「なぁ、剣」

「なんでしょうか」

「今後、こんなことがあったとしても俺の事を信用してくれるんなら後で説明してやるから黙って見逃しておいてくれないか」

「何か悪いことでもするのですか」

「そんなわけないだろ。ただなぁ、いろいろと思うところがあるんだよ」

「………わかりました。あまり、納得はしたくないのですが一先輩の頼みごとですから」

「そっか、そりゃよかった」

 漠然としていてしっかりとした形を持っていないのだが俺がするべきことが見えた気が………しないでもない。ただ単なる幻かもしれないけどな。


主人公が何かをつかみかけた→さぁ、終わりだっ。そんな展開が多々見受けられます。うんうん、しっかりと成長した主人公がそういった終わり方をするのは十分いいことですね。元気にしてくれます。というわけで、次回最終回です。嘘ですけど。さて、十二月に近づいてきて色々とおもしろそうなゲームが出てくるようですね。忙しいことも多々あり、ゲームなんかしているばあいじゃねぇんだよ、そんな状況だったりしますが、大変なものなのですよ。というわけで、十二月は暇を見つけてはゲームをしたいなと思う今日この頃です。次回予告、『衝撃、ロード家の庭に謎のミステリーサークル出現』。

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