21:おか……岡田さん◆
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無駄に広く、俺がこの屋敷にもしも一人で住まなくてはいけなくなったらどうするかなぁ。毎日友達を呼ぶか、一人で奇声をあげながら屋敷の隅から隅まで走り回るかもしれない。ま、そんなことが起きるなんて絶対にあり得ないと言っていいだろうな。
屋敷中央にあるのは文字通り、中庭。十字の水路が通っており、その中央は噴水が置かれている。天使像が弓矢を持って俺のほうを見ていた。
「………」
「あら」
声のしたほうへと視線を移すと、ちょうど中庭の南の隅に一人の女性が、おばさんと言っていいレベルが座っていた。どうやら花畑の世話をしている途中だったらしい。
「えっと、すみません。お邪魔しましたか」
「いいえ、ちょうど暇だったところよ。貴方、零一さんね」
「はぁ、そうですけど」
ふふふ、と笑う相手にさて、どうしたものかと考えるが当然のようにいい考えが浮かぶわけでもない。
「今日はどういった用事で此処にいらしたの」
「え、えーと、ちょっとした野暮用です。あの、風花ってお手伝いを知ってますか。その子を探しにここまでやってきたって言ったらいいかな、と」
そう言うと何やら頷いていた。
「風花さんは零一さんの事を一生懸命、支えようとしているわ。健気でいい子なの………私は出来れば、貴方もあの子を支えてほしいと思っているわ」
まっすぐに見てくる視線をなんでだろうかと思いつつ、後頭部を掻いてみた。
「それはまぁ、いつもお世話になってますから出来るだけのことはしたいと思ってます」
じょうろを静かにベンチの上に置くとその隣に座る。
「でも、風花さんは貴方に支えてもらいたくはないでしょうねぇ」
「え」
何となくショックだった。
「なんでそう思うんですか」
「彼女にとって、貴方を支えることが仕事というか、生きがいみたいなものだから。頑固なところもあるからね………支えてあげるのもばれないようにそっと支えてあげるぐらいにしてあげるといいわ」
「………わかりました」
そう言うと中年のお手伝いさんは立ち上がった。
「お昼にはまだ早いからね。休憩所でお茶でも飲みましょうか」
「え、あの………」
ほぼ無理やりに連れて行かれたと言っていいのだが、悪い人ではなさそうだしついて言っておいたほうがいいかもしれないな。もしかしたら、両親についての話も聞けるかもしれないからいいとしよう。
――――――
連れて行かれた休憩所とやらもずいぶんすごいところだった。床は磨き抜かれているようで俺の顔がうっすらと映っているし天井も然りだった。テーブルも簡素だが、丈夫そうで見た目より実を取っている感じである。
非常に高そうなティーカップにこれまた高そうな紅茶を注いで俺の目の前に置いてくれる。
「零一さんが此処に来た本当の理由は何かしら」
「………本当の理由って………」
「ただ風花さんを探しに来ただけじゃないでしょう」
「………まぁ」
コハク色の紅茶に自分の顔が映る。テーブルにかすかにあたっただけで紅茶の中に浮かぶ俺の顔は見る影もなくなっていた。
「妹から、学校をやめなきゃいけないかもしれないって思ってあわてて来たんです」
静かに紅茶を口にしてから相手のお手伝いさんは小首をかしげていた。
「ここに来れば、どうにかなると思ったのかしら」
「それは………わかりません。此処に来たからと言って何かが絶対に変わるとは思ってませんでしたし、感情的になってきたんだと思います」
「学校にはやっぱり卒業式までいたいのね」
「…………それは………」
「やりたいことが学校にあるから辞めさせられたくないと思っているのかしら」
「…………」
ぶっちゃけいって、俺にとって高校生活が何だったのかと聞かれれば答えは不明瞭なのである。わからない、そう答えるに違いない。
「文句を言うのは誰にだってできることだわ。ただ、なんで文句を言うのか、自分の信じる何かがあるからそれを拒絶できないと格好悪いわよ」
「………そう、ですね。俺が間違っていたなんて思いませんけど理由もなく文句を言っていちゃ駄目ですよね。明確な理由がないと………しっかりと考えます」
「それがいいわ」
俺はなんで嫌だったんだろうな。とりあえず、この問題については家に帰ってからじっくりと考えることにしよう。
「あの、なんで俺が学校をやめさせられそうになっているのかわかりますか」
せっかくお手伝いさんの司令塔らしき人物に出会えたのだから何か話を聞かせてもらえるかもしれないからな。
「そうねぇ」
いつの間にか相手のカップに紅茶は入っていなかった。
「貴方に自立してほしいからだと思うわ。一人で何でもできるようになる、って言葉じゃ簡単だけどね。生活だけじゃなくて、様々な問題も解決できるようになってほしいからだともうわ………多分、だけどね」
「あと、もう一つだけ…」
俺の両親が今どこにいるか知っていますか、その質問をしようとしたところで背後に気配を覚えた。
「おか………岡田さん、こんなところで何をしているんですか」
後ろにいたのは目を見開いている麻妃だった。
「ロンドンに行っていると言っていませんでしたか」
「ええ、行っていたわ。あれからすぐにこっちに帰ってきたの」
麻妃は俺のほうを見ており、そして今度は俺の目の前の相手を見ていた。
「あの、お兄様」
「なんだ」
「岡田さんとはどこで知り合ったのですか」
「中庭だな」
「ええ、中庭でうつろな目をして天使像を眺めていたから気になったの」
ふふと笑っていつの間にか満たされてた紅茶に口を付けている。麻妃はむずがゆそうな表情をしたのちに何かを思い出したのか俺に言うのだった。
「お兄様のご友人の方が迎えに来ていますよ」
「え」
「あらあら、それならこんなところで油を売っていてはいけないわね。またいらっしゃいな」
「はぁ、わかりました」
立ち上がろうとする岡田さんとやらをとどめてから麻妃が送ると言いだした。
「行きましょう、お兄様」
俺の手を掴んで一生懸命引っ張っている。なんだか、顔が赤くなっており岡田さんとやらは俺たちを見てほほ笑んでいた。
「……どうかしたのか」
「何でもありませんから、早く」
「仲がいいのね、嬉しいわ」
「お世話になりました」
それだけ告げると麻妃に今度こそ引っ張られた。しっかし、あの岡田さんと言う人は何者なんだろうな。
先生のことを間違えて『おかあさん』と読んでしまった方がいるに違いありません。作者が中学生のころ、『岡』という苗字の先生がいたために間違えて『お母さん』といってもなんとかごまかせました。なんででしょうねぇ、さっぱりわかりませんが間違えたときは非常に恥ずかしいですが納得してもらえるから余計考えさせられます。さて、零一も落ち着きを取り戻してはじめていく中庭へと向かいました。指標を与えてもらえたようですし、最悪の未来は回避できたかなぁと(BADENDでは笹川栞に刺され、終わり予定です)思っています。まぁ、詰めが甘かったという理由で変わるかもしれませんけどね。さて、話は変わって定期的な話です。この小説はおもしろいのでしょうか。最初、中盤、そして今………文章も、零一たちも変わりつつあるこの小説………結が見えてこないこの小説、ラブコメだったのか、主人公が成長していくだけなのか、誰もが首を傾げるであろう、この小説。何がしたかったのか、作者。誤字が多いぞ、作者。ゲームは一日一時間、作者と、色々と突っ込まれる要素は多いのです。あとがきも深夜に近づくにつれて支離滅裂になっているのは眠くなってきているからなのです。よく、友人からあんたは寝るのが早いといわれます。そんなことはどうでもいいんです。眠いです。ハエがいたから、殺虫剤を使って………コーヒーを飲んだ後に『何だか、殺虫剤の風味が………あっ』眠くなると、こんなことが起こるんです。みなさんも気を付けてください。では、また次回もしもこのように文面でありながらもお会いできるような事象がありました場合そのようなことが起こったならばぜひともよろしくお願いいたしますと存じ上げまする次第でございま………すごく、ネムイ。明日起きたら手から殺虫剤が出せるように………いや、無理ですね。