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結局、何をテストしていたのかわからないままに、剣と宵乃淵さんは俺の住居から引き揚げて行ってしまった。やったことといえば三人で人生ゲームぐらいだろうか。億万長者になったのは宵乃淵さんで、次点が剣、俺が最下位だったりするわけだ。借金まみれになって終わるとは思いもしなかったな。帰るころには二人ともいつものように仲良しになっていたようだったし、あれは演技だったということなのだろう。しかしまぁ、演技力が二人とも結構あるもんなんだな。ちょっとばかり本気にしつつあったぜ。
夕方になっても風花が家に帰ってこないのでどうしたものかとも思ったのだが……待っていても仕方がないだろう。久しぶりに自分で料理をしようかとも思ったのだが、風花と約束している為にそれは出来ない。とりあえず、九時までに帰ってこなかったら冷蔵庫に入っている食材でもかじっておこうと思う。台所に立ったわけではないので風花もきっと許してくれるであろう。
午後八時半、いまだに風花は帰ってきておらず、ケータイにも連絡はない。もしかして、何かあったのだろうかと思ったのだが、風花に限ってそれはないだろう。おとなしく待っていたほうがよさそうである。
「面白い番組もないしなぁ」
特別番組が入っているようでいつも風花と一緒に見ている番組がやっていなかった。リモコンで電源を消すと、静寂が訪れる。
「………はぁ」
テーブルに額を付けて瞼を閉じる。ひんやりとした感触が気持ちいい。夏、だからなぁ。今年の夏休みこそ、高校生活最後だろうから何かみんなの思い出にしっかりと残る夏を過ごしたいものだな。まぁ、剣と宵乃淵さんは受験勉強で忙しいだろうし………
――――――――
「ん」
目を覚ますと朝になっていた。テーブルに突っ伏して眠っていたため体のあちこち、特に腰辺りが痛い。塩の瓶が倒れて、白い結晶たちがテーブルを散らかしていたりする。醤油の瓶が倒れなかっただけでもマシかもしれないな。
「いつつっ………」
首を左右に動かすとごきごきという音が聞こえてきており、立ち上がると身体中が痛い事を再確認できた。どうやら、雨が降っているようでざーっという音で目を覚ましたようである。
「………風花、どこ行ったんだろう」
風花が帰ってきていたらテーブルに突っ伏して眠っている俺の事を放っておくわけないだろう。起こすか、もしくは風邪をひかないように何かを肩にかけてくれているはずである。ケータイにも連絡は入っていないようだし、帰ってきた痕跡すらないしなぁ。
部屋で鳴りだした目覚まし時計のアラームを止め終えると、俺はしっかりとアイロンのかかった夏服の袖に手を通した。今日からまた学校だし、風花のことについて学校に行く途中に東家のほうに連絡を入れたほうがいいな。
学生ズボンをはいて、適当に教科書を鞄に突っ込み、最後に食パンを口にくわえて準備もそこそこ、玄関を後にする。鍵をかけたことを二度確認すると、今度はポケットに手を突っ込んでみるもケータイがない。再び、アパートに戻ってケータイを手にとって再び鍵を閉める。そのころには既に食パンが胃の中におさまっていたりする。
登録していないために、東家の番号をプッシュ。いつもと違って忙しいと思いつつも気になることだから仕方がない。どれほど風花に依存しているのかよくわかる、依存するのはいけないことだな。
「……いや、待てよ」
東家に連絡をしてもあまり意味がないかもしれない。そちらのほうに電話をするなら麻妃のケータイにかけたほうがよさそうだな。
電話帳に登録している麻妃の番号を押すと、早速呼び出し音が鳴りだしたがそれもほんの二回だけ。
『もしもし、朝早くにどうかしたの』
とても不機嫌そうな声が返ってきた。低血圧らしい。
「いや、風花が家に帰ってないんだ。そっちにいるのか」
『………ああ、言い忘れていました』
なんだよ、言い忘れたって………全く、いい加減な奴だな。
『どうもお兄様がA.S.Tに入るのは無理になってきているようです』
「はぁ、なんだそれ」
『説明がし辛いのです。察してください』
「いや、察してくださいって言われてもな……」
何を、どう、察してくれと言っているのか全然わからなかったりする。
『正式決定は夏休みが終わってからになると思うんです。ただ、ひとつだけ問題があります』
ただ、低血圧なだけではない。俺にとってかなり嫌な雰囲気が流れだしてきているのは確かだった。
「問題ってなんだよ」
何度かもごもごとつぶやいた後に麻妃は決心を固めたようだった。
『…………実は、お兄様は………学校をやめなければいけないかもしれないのです………』
「え」
自分でも意外なことに、その言葉は俺にとって非常に重たいものだった。
まとまりつつも、なかなかまとまらないことって結構あることなんですね。毎日毎日更新したいってのもあるのですがなかなかかける時間が取れないのです。まぁ、いいわけですけどね。話はこれまでと一応つながっているようでなんとなく、最終回に近づきつつあるような感じですね。近づくんでしょうか……はてさて、どうなることやら。この小説を読んでくれている方が何名いるのかはわかりませんが、とりあえず打ち切らずに続けられてよかったと思います。って、こんなことを言っていたら終わっちまいますねぇ。