18:部屋◆
18
俺の部屋にあるものなんて、大体どこのご家庭にもあるものばかりだろう。タンスに机、寝る場所ぐらい。あとは本棚が一つぐらいだ。
「意外ときれいにしているんですね」
宵乃淵さんがきょろきょろと見渡しており、剣はベットに腰掛けている。
「あまりこの部屋にはいないから」
そういえば、高校卒業してA.S.Tとやらに入ったら他の友人たちとは会えなくなるって言っていたっけなぁ。まぁ、朱莉の奴がいるからもしかしたら話せるかもしれねぇけど。
「一先輩」
「なんだ」
俺と宵乃淵さんの視線が集中したからか、剣は口ごもって首を振った。
「何でもありません。気にしないで下さい」
「そっか」
そういえば、女の子を部屋に連れ込んだらどうのこうのって、満がいってたっけなぁ。
――――――――
「女の子を部屋まで連れ込めるようになったらね」
「なったら………どうなるんだよ。というか、お前が女の子を連れ込むことが出来るのかよ」
「ふふふ、そりゃまぁ、いつかは連れ込むことが出来るに違いないさ。人間、夢を持っていればいつかは叶うものなのだからね」
「お前ってめげないやつだったんだなぁ」
「まーね、こう見えて意外と努力家なんだ」
そうだな、いい加減お前の事を陰で追いかけているあの人物もどうにかしてお前に気づかせてやりたいぐらいなんだけどなぁ。
「ともかく、部屋に女の子がやってきたら後はなるようになっちゃえばいいんだよ」
――――――――――
「なるようにねぇ」
「なるようにって、一先輩、何の事ですか」
不思議そうに首をかしげている剣に『さぁなぁ、お前の兄ちゃんから言われたことだから俺には分からねぇよ』とはさすがに言えなかった。
「さぁなぁ、満の奴から言われたことだから、詳しい説明もしてないところを見るときっとやらしいことでもあいつは考えていたんだろうな」
「…………」
「あ、零一さん」
「なんだ」
「アルバム、見せてもらっていいですか」
「別にいいけど中身はすかすかだぜ」
一見、重たそうなアルバムなのだがあいにくその中身は言った通り、すかすか………というより、三枚ぐらいしか入っていない。
「………あの、なんで零一さんたちが結婚しているみたいな写真があるんですか」
「ん~ああ、それはまぁ、なんというか勘違いで撮ってもらったものなんだ。ほら、俺がこっちに転校してきたときに少し乱暴な生徒がいたっていっていただろ。そいつが俺の隣で笑っている奴だな」
じーっと、宵乃淵さんは笹川の事を眺めており、剣は嫌そうな顔をしてその写真を見ているのだった。
「剣のライバルと言っていい存在だったな」
「え、そうなんですか」
尋ねられた剣は嫌そうな顔をしつつも、否定はしなかった。まるで蒼虫をかみつぶしたような表情をしている。
「残念ながら完全勝利は果たせていないんですよ。卒業式の夜、呼びだしたのですが………」
「え、そうなのか」
「ええ、そうです。一先輩に話していませんでしたっけ」
「ああ、聞いてないな」
「で、決闘したんですか」
宵乃淵さんの質問に剣は首を振るのだった。
「『零一に面倒かけたくないから、あんたと決着付けても意味がない』って言われました。なんだか、負けた気分です」
「俺に迷惑ねぇ………」
「零一さんっていい友達に恵まれているんですね」
「そうだな、今も恵まれてるようだし………」
しっかしまぁ、今更ながら笹川の事が懐かしいもんだな。夏休み、こっちに帰ってくるんだろうか。
先日、掲示板を見てきたところ、『先週のゼミに出ていないものの課題、聖書ヨプ記の自筆清書、レポート提出』と、ありました。聖書の清書って……きっと、大変なんだろうな、ま、人事ですから。今回の話は投稿すべきか、悩みましたがやってしまいました。もしかしたら改訂版を出すかもしれません。次回があれば、お会いしましょう。