10:綱引き◆
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光のさす天井のほうへと視線を移す、上から俺たちを見ているのは紛れもない剣だった。こういった非常事態の時はすごく頼りになる奴だな。誤解のないように言っておくが非常事態じゃないときだって頼りになる奴なんだけどな。
「一先輩、ロープを下ろします」
「了解だー」
上に向かって手を振る。すると、顔面にロープが当たった。一瞬だけ視界がぶれた挙句にブラックアウトした。日ごろの剣の不満なんかが重なっていそうだったりする。ついつい、わざとぶつけたんじゃないかと思ってしまった。
「すいません、一先輩」
「…け、結構太いロープなんだな」
綱引きなんかで使われるようなロープで、ものすごーく、痛かったりする。まぁ、それだけ丈夫なのだから昇っている途中で千切れると言ったことは起きないだろう。
「零一さん、大丈夫ですか」
「ああ、なんとかな……じゃ、のぼるか」
上で顔だけ出して待っている剣にまだ聞きたいことがあった。
「剣~、この縄はちゃんと他のところに結んであるんだよなぁ」
「大丈夫です。空き教室の机にしっかりと結び付けてきました」
「一度に二人昇って大丈夫かと思うか」
「いえ、念のために一人ずつ昇ってもらったほうがいいと思います」
「わかった」
こういう時こそ、女性優先にしてあげたほうがいいだろうな。
「先に行っていいぜ、宵乃淵さん」
「え、いいんですか」
「ああ、地上に早く戻りたいだろ。それに巻き込んだのは俺みたいなもんだからな」
いや、全ての元凶は吉田満と言う男だろう。そいつをつるしあげてはちみつでも頭からぶっかけてやればこのもやもやはなくなるかもしれない。
「ありがとうございます」
しっかりと綱を掴ませて、昇らせ始める。順調に昇っているなと上を見ていると………気がついてしまった。
「………」
ああ、そうか、今日はスカートだったんだな。うんうん。
ともかく、急いで何も見なかったということにして平常を装い、廊下の端のほうに目を移動させる。あとで高額な慰謝料を請求されないようにするためだ。
「ん」
真っ暗な廊下の端のほう、先ほどまでなかったはずの扉があり、ゆっくりとそれが開かれている途中だった。
「ん~」
非常に、そう、ひじょーに恐ろしい事が待っているような気がしてならなかった。半分ほど開け放たれた扉、その先に見えるものは暗がりのため当然詳しくわからないのだがただ言えることが一つだけあった。
「…………」
目が赤く光るマネキン人形。胸を強調させるように両腕を頭後ろで組んでいるポーズをとっていた。どうも白っぽい素材を使っているようで、それが原因でマネキンのポーズを判別することが出来たわけだ。
「…………」
これってあれだな。うん、簡単に想像がつく。
「一先輩、次、いいですよ」
何も知らないであろう剣が俺の順番を告げた。
「あ、ああ」
絶対に来るだろう、来るだろうと思いながら地上へと向かうのだが一向にマネキンは動いたりしなかった。目が異様に赤く光っているだけでそれ以外は特に変わったところがないのである。
結局、俺が地上にたどりついても地下からあのマネキンが追いかけてくることなんてなかったのだった。
「一先輩、どうかしたのですか」
「え、いや、なんでもない。ちょっと気になることがあっただけだ」
「下に何か忘れ物でもしたんですか」
「いや、なんでもない。まぁ、あれだな、喫茶店にでも行ってゆっくりしよう。俺が奢るからさ」
不完全燃焼で終わった気がしてならない中学校にある旧校舎。俺は後にあれがなんだったのかを知ることとなった。
えらく久しぶりに更新です。ええ、色々とあったんですよ。祖父が倒れたり、ケータイがぶっ壊れたりと本当、色々。最近、コーヒーばっかり飲んでいるので中毒になるんじゃないかと思いつつも手を伸ばしています。おかげで眠れなくなったりで弊害がでちゃったりするんですね。新作も一生懸命考えていますがこれといって思いつかない。一般人→実は東家の子→さて、なんにしようかなとそんな感じです。名前、どこ所属なのかも考えているんですがこれがまた、難しい。小説は難しいんだなぁと何度目かわからないため息を吐いています。