09:暗中模索◆
09
階段を探していたのだが、その階段は廊下の端になく、その反対側にも存在しなかった。無論、地下のために床を底面にした長方形側面には窓と言ったものも存在しないためにそこからの脱出も不可能と言う落とし穴掘り名人もびっくりの落とし穴である。
「何、ここで倒れちまえって魂胆かよ」
近くの壁を蹴ってみたものの、こっちのほうがいたかったりする。
「でも、此処を作った人はどうやって脱出したんでしょうか」
何か仕掛けはないかと宵乃淵さんはそこら中のものに触れまくっており、ランプの切れた消火栓のボタンまで押し込んでいる。それらが反応しなくてよかったと言うべきだろうか。
「作った奴がどうやって脱出したか、そうだなぁ」
それこそ、ロープでの脱出か、はたまた隠されているだけなのか。ともかく、作った奴は満足したのかもしれないが俺たちから見たら不満の塊である。そろそろ、爆発を起こして宇宙でも作っちまいそうだ。
「もともと、仕掛けが施されているというのなら趣向を凝らしている部屋とかを見てもらいたいんじゃないんですか」
そういって各特別教室のほうへと視線を移している。とても気になっているんだろうな。
「つまり、この特別教室のどこかに一階につながる階段があるって言いたいんだな」
暗闇に慣れたおかげで宵乃淵さんの顔を見ることが出来る。まぁ、髪の毛で覆われているんだけどな………冷静に考えると彼女が夜道でいきなり出てきたらおしっこもらすかもしれないな。
「じゃあやっぱりさっきの理科室から行ってみますか」
「おいおい、絶対に人体模型とか出てくること確定だろ」
ここはやっぱり当りさわりのない家庭科室なんてどうだろうか。いやいや、踊り狂う包丁なんかが飛んできたらそれこそ悲劇だ。もちろん、他にも泡だて器なんかが口の中に突っ込んできても怖いものがあるんだが。
「じゃ、開けますね」
「心の準備が出来てないって………」
無理やり開けられた理科室。廊下から中を見てみるがいたって普通である。もちろん、人体模型なんかも置いてあるのだがいたって普通、動いていないようだ。
「じゃあ、入ってみましょうか」
嬉しそうなのだが、俺の右腕にしっかりと抱きついているところをみると怖いのだろうか。そうだな、俺も少しは怖いことを認めるがそれより宵乃淵さんが右腕に抱きついているせいでいまいち怖いという感情が薄くなってきている。なんだろう、かなりどきどきしているんだ。
「そ、そうだな」
一歩足を踏み入れても特に何も起こらない。やっぱり、単なる気のせいだったのだろうか。
「あ、百円が落ちてますよ」
「本当だ………いつのだろうな」
ひょいと拾い上げると赤くて細い光が天井へ向かって伸びる。あれの光を目で直接受けると視力が悪くなったりするって話を小学生のころに聞いたことがあったな。あの頃はレーザーポインターでスナイパーごっこが流行っていたからのが原因だろう。
ピー
「ん」
「え」
何かが光ったと思ったら背後にあった教室前入口が閉まってしまう。
「嘘っ」
「やっぱり罠だったのかよっ」
ああ、そういえばこれってニアの家にあった装置と一緒じゃなかったか。あっちは確か、セコ○がくるとか………。
「どどど、どうしましょう」
あわわ、そんな感じで右往左往している宵乃淵さんがこれ以上何か別の仕掛けを発動させてしまう恐れがあるほうが怖かったりする。そうなったらどうしましょう。
「落ち着くんだ、宵乃淵さん。まだ扉がしまっただけだ。どこかに解除するための装置があるかもしれん。いや、普通に百円を戻せば開くかもしれないぜ」
元の位置にゆっくりとおくと当然、赤い光が遮断される。
「あの、開いてませんけど」
「手動に戻っただけだけだと思う………ほれ」
教室の扉もちゃんと開いてくれた。上からギロチンが落ちてくるとかそういったものももちろんない。
「こりゃ下手にいじってるとひどい目にあうかもしれねぇなぁ」
「そうですね」
そう言いながらも骸骨や人体模型にちょっかいを出している。廊下に出ても逃げ道がないのだが、この教室よりかは広いから精神的に安定するんだろうなぁ。
「見てください、これ、脳みそまで取れますよ」
「そりゃまぁ、人体模型だから取れるだろ」
「あ、人体模型って両方ついてるんですね。いや、ついてないって表現もしなくちゃいけないんだった」
「おいっ」
文章に出来ないような部分までいじくっている。うん、内臓があった部分は空っぽである。ライオンだってこんなことしないだろうな。骸骨だってしゃれこうべをもがれてシェーのポーズをとらされている。
「………今夜あたり夢に出そうだな」
狂った宵乃淵さんが大暴れ、俺、逃亡とかそんな感じのものが頭の中で流れそうで怖い。
「え、何かいいました」
「うんにゃ、何も言ってないぜ」
『一先輩、静さん、今からロープを下ろしますよ~』
「なんだか声が聞こえたな」
「吉田さんみたいですね」
再び聞こえてくる声が天使の声に聞こえたりもしなかったわけで、とりあえず理科室を後にして俺たち二人は廊下のほうへと向かうことにしたのだった。
次回作を書き始めてふと思ったことです。うん、何だかいまいちな始まりだ、やーめた………そんな感じですね。続編ってわけでもないし、また零一が主人公だし、でいまいちだ、うん、いまいちだとため息をつきつつ再び構想を練ることに。うーん、主人公のもとへ、ふんどし一つのマッチョが訪れる。春だからまだいいものを、これが夏だったら最悪だと呟きながら話を聞いているとどうも、両親が何者かによって監禁拉致されたことを知る。その魔の手から逃げるようにと言いに来たところで警察登場。マッチョが抵抗するも、さすがに警察官60人の抑え込みによって多大な犠牲を払いつつも連れて行かれてしまい、主人公の不安な生活が始まる…………うーん…。




