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05:屋上に広がる過去◆

05

「うーん、人生は何が起こるかわからないな」

 昼休み、屋上でそんなことを言ってみたのだがその言葉に誰かが共感してくれることはなかった。人がいないというわけではなくて、カップルだらけだと言うことだ。各自、俺の言葉がリアルに耳に入っていないほど自分たちの世界に浸っているのだ。

「はい、たーくん、あ~ん」

「うん、美味しいよ、みえりん」

「やっだぁ、もうっ」

「みえりんの作ったものだったらなんだっておいしいに決まっているじゃないか~」

「じゃあさじゃあさぁっ、あたしのこと、奥さんにしてくれるかな~」

「うん、高校を卒業したら籍を入れに二人で仲良く行こうよ」

「あ、だけどあたしのお父さん………結婚するの許してくれるかなぁ」

「大丈夫さ、みえりんっ。ぼくが一生懸命お嬢さんを下さいっていうから。もう、それこそ年がら年中、三百六十五日、君のお父さんと生活をしてまでうんって言わせるからねっ」

「たーくんかっこい~」

「はは、うれしいなぁ、みえりんからかっこい~なんて言われちゃうとさ」

「ううん、たーくんはものすごくかっこいいよっ」

「そんな、みえりんだって可愛いさ」

「たーくんっ」

「みえりんっ」

 見ていて非常に毒である。屋上の床を削ってコンクリ片でもぶつけてやりたいぐらい、俺の心は穏やかではない。

「一先輩、今度はデバガメ行為ですか」

「剣………いいや、幸せエネルギーをもらっていたのさ」

 冗談で言ったつもりだったのだが、相手が冗談の通じない相手だと今更気がついた。

「幸せエネルギー………とはなんですか」

「あ、幸せエネルギーっていうのはな………」

 ここはまじめに考えて答えを返さなければなるまいよ。下手に答えたら生傷を作ることは必死………。

「他人の幸せを見ているとああ、幸せだな~って俺は思えるんだよ」

「はぁ、つまりあの二人組の幸せを眺めるだけで一先輩は嬉しいと、そういっているのですか」

「ま、まぁそんな感じだな」

 嘘は一度ついたら突き通さなくてはならない。嘘を嘘でごまかして、嘘の巨塔を作らなくてはならないのである。

「他人の喜んでいる顔とか、すごくいいものだろ」

「まぁ、そうですね」

 人の不幸は蜜の味。その言葉を一時期すごく大切にしていた俺とは思えぬ発言だな………しかし、俺も自分の身体が可愛いのよ。

「で、カップルがたむろしている屋上まで何をしに来たんだよ」

「少し、疑問を覚えましたので一先輩に質問するために来たんです」

 俺と正対したのちに目をしっかりと見られた。そらそうとしても、追いかけてくる。

「私の時も宵乃淵さんの時のように調べていたのですか」

「え、あ~…ん~、どうだったかな」

 そういえば、剣の時も成り行き上、結構調べた気がしないでもないかなぁ。しかし、今ではとんと思いだせないからどうでもよかったことだろう、うん。ここは穏便に済ませておいたほうがいいだろう。

「そうだな、調べたっていうよりは満から話を聞いたぐらいだな」

「実は、一先輩と初めて出会ったときに誰かの視線を感じることがあったんです。もしかしてそれは一先輩ではないのですか」

「……………はて」

 そんなことしたっけなぁ。

「いや、俺じゃないと思うけどなぁ。記憶にないし」

「本当ですか」

 じーっと目をそらそうとせずに俺の事を見てくる。まるで心の奥底、嘘をついている人間を見破ることのできる瞳だ。

「………どうやら、嘘をついている可能性はないですね」

「そりゃよかった」

「もしかしたら一先輩が忘れている可能性がありますからね」

「もし、俺が剣を尾行していたとかだったらどうするつもりだったんだ」

「それは………一先輩には助けてもらったお礼がありますから、悔しいですが目を伏せます」

「…………助けた………あっ」

 そうだそうだ、俺は剣の事を助けたんだ。んで、なんで助けることが出来たかっていうと………剣の事を探っていたからだ。

「一先輩、そろそろお昼休みが終わりますよ」

「あ、ああ………」

「どうかしたのですか。顔色が悪いですよ」

「何でもない、気にするな」

「気にします。保健室まで連れて行きましょうか」

「いやいや、大丈夫だ」

 心配してくれている剣は優しいいい子だと言えるのだが、俺はどっちかと言うと悪い子だ。

「……剣を助けなかったら俺、今頃剣とこうして話してないかもなぁ」

「それは……どうでしょうか。どの道、兄と知り合いだったならばいつかは会っていたかと思いますが……まぁ、あの兄の友人と言うところで偏見を持ってしまうでしょうけどね」

「はははは、そりゃそうだな」

 どつかれる対象となっていたことだろう。

「………あそこで助けなかったら俺は今頃卒業していたんだろうな」

「何か言いましたか、一先輩」

「うんにゃ、何にも言ってない」

 でもまぁ、面白い人間に会えたんだし、いいとしよう。そうじゃなきゃ、やってられないからな。


暴走族ってどこら辺が暴走族なんですかね。子供のころは暴走族って家の屋根をバイクでぶんぶん飛ばす超高等テクニックを持っているとか思ってましたが………夢見すぎですねぇ。単なる騒音族ですけどね。ああ、それと美人はやっぱり近くで見るものじゃありませんね。美人は遠くで見るべきですよ、ええ、みなさんも夢を壊されたくなければ美人は遠くから見るようにしてくださいね。というわけで、特にこれといってあとがきに書き込むことが思いつかないので今回はこの程度で。

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