01◆:出会いと別れと三度の季節
01
「零一先輩、結局三年目も一緒になりましたね」
「ああ、そうだなぁ。飛び級試験に受かっていればこことはおさらばだったはずなんだけどなぁ」
春は出会いと別れの季節とか言っている奴はちょっと見聞が足りない。俺は三度、剣と同じクラスになっていたりする。担当教師は三年間違ったけどな、何の慰めにもならなかったりするわけだ。
「ま~、三年生になったってわけで、俺の知り合いはほとんどいなくなったな」
「そうですよね」
佳奈、笹川、朱莉、ニア、飛び級試験に受かった澤田、満とはおさらばである。それぞれがそれぞれ、各自の進路に向かったおかげできっと夏休みぐらいにしか会うことはないだろう。
「また友達を作ればいいじゃないですか」
「三年生から友達を作るって俺の高校生活は順番狂ってるだろうな。まぁ、とりあえずは剣がいるからいいか」
「とりあえず、とはどういう意味ですか」
憤慨したような感じだったので首をすくめて見た。
「とりあえず、教室に向かおうぜ」
「………わかりました」
雑多なことを話しながら一緒に割り当てられているクラスへと入る。中にいるメンツはあんまり知らない連中が多かったりする。
「二年生のころとは結構顔ぶれが変わっていますね」
「俺にとってはあまり関係なかったりするなぁ」
今年は桜が頑張っているようで、きれいに咲いている………いや、散っている途中と言ったほうがいいかな。
「交友関係は広いほうが………しかし、一先輩には笹川栞や湯野花朱莉と言った色ものとの交友関係がありましたからね。私としては一先輩がちゃんとした人間のままで卒業できるか心配です」
「色ものっちゃ色ものだが………剣は心配しすぎだろ」
その色ものの中に剣が入っている事をこの子は知らないんだろうなぁ。言ったら、かなり言及されそうだ、怖い怖い。
「………んっ」
「どうかしましたか、一先輩」
「あれ、あんな人いたっけか」
俺の視線を追いかけて、剣は目をとめた。
「いや、去年はどこのクラスにもいなかったと思います」
「だよなぁ、卒業からこぼれた奴でもないみたいだし……新たな飛び級か」
「ちょっと他の人に聞いてきます」
「ああ………まぁ、別にそこまでしなくてもいいだけどな」
人を殴ったら確実にお陀仏のような本を呼んでいる。何語なのかわからない文字で題名が書かれており、当然のように読めない。髪の毛は異常と言うほど伸ばされており、目が完全に隠れていたりする。
「………ん」
「んお」
一瞬だけだがその黒髪に隠れた瞳と目があった気がした。しかし、すぐさまその人物は本のほうへと視線を動かした。俺からみられているのに気がついたのか、顔まで隠している。
「どうやら転校してきた生徒のようですね」
近くの生徒から情報を持ってきたらしい剣はそういった。
「へぇ」
「ふーん、魔女の格好させたら滅茶苦茶似合いそうだな」
「魔女なんていませんよ、一先輩」
「あー、はいはい、そうですね」
「なんですか、うるさそうに………」
「いやいや、そういうわけでもないぜ。さっさと席に着こうか。先生もう来てるし」
先生に睨まれていたので剣を促して座る。座ったとき、ちょうどチャイムが鳴った。
――――――――
初日は昼までで終わってくれたのでこれといってやることがなかったのだが、ちょうど転校してきたあの子の紹介があったのだが………
「………宵乃淵、静………です」
クラス中はシーンとなっていたりする。脇にはあの大きな本があったし、ポケットからは藁人形らしき物体がはみ出ている。
「えー、ヨイノフチといった読み方じゃないからな。ヨイノウチだそうだ。先生もなんど間違えて宵乃淵のご両親に怒られたことか……下の名前もシズカと読んでしまって睨まれてセイというそうだ………ま、ともかく今日からこのクラスの友達だ。みんな、優しくしてやれよ。」
クラスの反応は相変わらず静かだった。そして、宵乃淵静とやらも別にそれでいいのか……顔がわからないのでどうなのか本当のところはわからないが孤立するんじゃないだろうか、そう簡単に予想出来たりした。
「こんなことを言っては宵乃淵さんに失礼ですが、変わっている方ですね」
「そうだな」
剣も十分変人だけどな、とは口が裂けても言えない。脇に置いている竹刀袋が火を吹くに決まっている。
「一先輩、積極的に話してはどうでしょうか。あちらも友達と言う友達がいないようですし」
敵の敵は味方です、そんな理論を言いそうな剣が怖かった。
「………どうだろうな、今度話しかけてみる」
ふと、宵乃淵さんのほうをみると顔を隠された。
「ふぅむ」
なんだろうね、俺を呪う対象にでもしているのだろうか。
最初はサブタイトルをスペシャルエクストラの略称にしようとしたのですがやめました。まぁ、そんなこんなで三年目ですね。え、いや、四年目か。途中省略しちゃったのは仕方がなかったからってことで勘弁お願いします。書いちゃうと今まで書いてきたエンディングが何だったのかわからなくなりますんで………。そんなに長くは続かないであろう零一の三年生編、これが最後の話になります。