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第二百五十四話◆:最後の結論、最初の承諾。

今回で本編は終了です。長い間この小説を………まぁ、言いたいことは山ほどありますからあとがきで。この前書きでは渾身のダジャレをぶっ放します。『今日、ツイッターで、嘘ツイッター』。よし、順調な滑り出し。これで、世界を狙います。

第二百五十四話

 こんなに大きな屋敷だと言うのに、廊下には誰もいなかった。置かれている彫像品はどれもこれも、高そうなものだったが無音の廊下では逆に気持ち悪い代物へと早変わりである。

「さて、どうしたものかねぇ」

 俺の目の前にはさっき見たばかりの扉があった。どうやっても開かなかった扉を開ける自信なんていまだにないのだが、あかないと麻妃とは話など出来ない。

「…………」

 ドアノブに手を触れ、ゆっくりと手前に引いてみた。冷たいドアノブ、夏に近づいているというのに緊張のためか、寒いとさえ感じてしまう。

「入るぞ、麻妃」

「何か、用ですか」

 さっさと此処からいなくなれ、険悪なオーラを身体から出しているように見えて仕方がない。

「麻妃、俺はお前からどうのこうのと言われる立場に確かに立っているのかもしれない」

「今更そんなことを確認するために戻ってきたというのですか」

「いいや、そうじゃない」

 俺がここに再びやってきたその理由、それは別の事を確認するためにやってきた。

「俺は俺なりの決意をしたつもりだった」

「何が言いたいんですか」

「お前は、麻妃はその覚悟があるってことなのか」

「………」

 押し黙り、俺を見やる。

「此処とは無縁の場所で育てられたと言っていい。まぁ、爺ちゃんがいたにはいたけどな。当然、俺は自分が東家に関係していたなんて想像していなかった………お前はどうだ」

「私に選択権なんてありません」

 静かにそういうその表情、どことなく、佳奈に似ている気がした。

「東家の養子になって、育てられて………いずれは頂点に君臨できるとも思っていました。私は、私情は挟みたくないんです。当主になれなければ、私の存在意義は東にとってないに等しいんですよ」

 東家とはそういうところです。麻妃は最後に言い添えた。

「私は何が何でも、東家の頂点に立たなくちゃいけない………」

「そうか………」

「ええ、そうです。聞きたいことはこれだけですか」

「そうだな、そのぐらいだ………後は提案ぐらいだな」

 ひとつ、頭の中に思い浮かんだ事があった。一人じゃできない、大変なことだ。

「提案………貴方が私に今更………」

 その口を押さえて俺は笑ってやった。

「なーに、悪い提案じゃないって」

 初めて素の表情を見せてくれたのかもしれない。キョトンとしている表情は年相応に見えて何となく、嬉しかった。


―――――――――



「零一様、夕飯が出来ましたのでこちらへ」

「おう、悪いな」

「いえ、やりたいからやっているんです」

 夏も本番真っ盛り。明日は俺の進級をかけた特別試験があると言うことで、何故だか知らないが前祝いを行ってくれているのだった。

「しっかしよぉ、知り合い全員がこのアパートに来るなんてちょっと狭くないかなぁ」

「用事で来ることのできない人たちもいるはずですから………あ、来たようです」

 チャイムが鳴り響き、それを迎えるために風花が廊下へと向かった。

「………ふぅ」

 あれから、二か月程度の時が過ぎている。変わった事と言えば、俺の苗字が正式に東から雨乃へと変わったということぐらいだろうか。つまり、佳奈の家の養子になったというわけである。

「零一、あんた明日落ちたら大変なんじゃないの」

「そうだなぁ、こんなことしてていいんだろうか」

 廊下から顔を出した佳奈にそう言われて頷くも、もはや止めることなど出来ないだろう。その後も、続々と友達がやってくる。

 佳奈、笹川、朱莉、ニア、澤田、剣、02におまけに満。

「おまけ扱いってひどくないかい」

「お前もよ、子供のころはおまけが欲しくてお菓子を買ったりしただろう」

「そうだね、買っていたねぇ。ああ、それと一緒ってことか」

 そんなわけがないのだが、本人が喜んでいるのならそれが一番だろう。女子組は何やら腹の探り合いをしているような感じがしてならない。若干殺伐とした中、乾杯しようとしたところで俺の部屋から竜斗が登場。

「やぁやぁやぁ、みなさんお揃いで」

「お前は………全く、どこから出てきたんだよ」

「どこって………零一君の部屋。正確に言うと、布団の中からかなぁっ」

 にこっと笑って竜斗はそういう。おいおい、ちょっと待てってば。ほら、周りを見てみろよ………俺に疑惑のまなざしが………。

「あ、雨乃あんたって……」

「ご、誤解だっ。竜斗はっ………」

 女の子だっ………そう叫びたかったのだが、約束していたので黙り込んでしまうしかなかった。

「はは~自分が窮地に立たされても約束は破らない………相変わらず惚れるほどいい男だね~、零一君」

 おいおい、またそんなことを言うと……

「れ、零一君ってそっち方面に……」

「だから、違うって」

「そうだね、そろそろ頃合いっていうか、このままいったらずるい気がするし………よっと」

 俺と、満、そして02以外の人間が固まっていたりする。風花は微妙だな。彼女は竜斗の分のお茶を用意している。

「お、男の子なのに………谷間がある」

 驚愕のまなざしで佳奈は竜斗の胸を凝視。俺もついでに見ておくことにした。

「ははは、そりゃぼくが女の子だからさ」

 佳奈に何か言ってやりたかったが他のメンツがいる手前、あほなことをやるといろいろと面倒が起りそうだ。此処はなるべく温暖に行こうじゃあないか。

「ああ、そういえば零一、前から僕は聞きたいことがあったんだ」

「ん、なんだよ」

 話題をそらそう、そう考えて満の話に乗ることにした。

「零一ってどんな女の子がタイプなんだい」

「え」

 ところがどっこい、その船は海賊に売り渡されること前提の船だったらしい。満の表情は実に楽しそうなものだった。

「え、えーっとだなぁ」

 周りの女子たちのまなざしが痛い。何だろう、何故、こんなにも緊張を………



PLLLLLLL………



 そんな時、電話が鳴り響いた。しかも、俺のケータイ。

「女からだっ」

 満がそういうとさらに殺気立つこの空気。え、なんでと誰かに聞きたかったのだが、周りは敵だらけの気がしてならない。というか、怖い。

「あ、わりぃ、ちょっと相手してくるわ」

 一時的なエスケープ。しかし、この短時間で俺は何かを考えなければならないのである。

「もしもし」

 電話の相手は最近毎日、かかってくる相手からだった。

「どうした、麻妃。仕事の話か」

『いえ、今日は激励の電話をしようと思っただけです』

「激励………ああ、明日テストだからか。わざわざ悪いな」

『お礼を言われるほどの事ではありません』

「そうだ、今ちょうど俺のアパートでパーティーやってるんだ。お前も来ないか」

 電話の向こうでは少しだけ戸惑っているようだ。

「お前の事をまだみんなに紹介してなかったからな」

『わかりました、今からそちらに向かいます。あ、最後に聞きたいことがあるのですが』

「何だ、ああ、場所を知らないってことなのか。それなら迎えに………」

『いや、それではありません』

「じゃあなんだ」

『あの時、私に約束したことを後悔していないんですか』



「…………ああ、してないぜ」



 俺が麻妃に約束したこと。それは、将来的には東と野々村をくっつけるということだった。もちろん、言った当初は出鱈目だったのだが、その後、竜斗と話し合って二人で決めたことだった。協力者は竜斗の父などだ。今のところは秘密なんだけどな。

『朱莉さんからの報告、聞きましたよ』

「何の事だ」

『A.S.Tに入ったそうじゃないですか』

「ああ、何かと入っていたほうが情報収集が楽だからな。じゃ、そろそろ切るぜ」

『わかりました。そちらにすぐに向かいます』

 電話は切れ、俺は二つ折りのケータイをポケットに直す。

「ん~、まぁ、今のところは何にも起きないで平和に過ごせるのかねぇ」

 身体を伸ばしているところで、アパートの扉が開けられた。

「おーい、主役が早く戻ってこないとパーティーが始められないだろ~」

「おう、悪いな」

 満の言葉に一旦部屋に戻ろうとして足踏み。

「ほら、早く来なよ。女の子がいっぱいいる天国のような場所だってば」

「嘘つけ、お前の後ろにいる連中は悪魔みたいな表情を浮かべているぞっ」



 考えが甘かったな、平和に過ごせるんじゃなくてこれから修羅場が始まるんじゃないだろうか。



~終~


終わったー、やっと本編終わったっということで次回から何をやるかというとそれぞれのエンディングですかねぇ。個別エンドもやるのかよって面倒だなとお思いの方もいらっしゃるでしょう。読まなくたって支障はございません。だって、この小説は終わりましたからね。はい、今回で終わりですから。いやー、本当に長い間お疲れ様でした。約半年、長いようでもあり、短いようでもございました。読者が一人でもいなければ、小説は続きません。逆を言えば、読者が一人でもいれば続くんですよ。まだまだ稚拙な文章ばかり、拙い作品だったのですが今思えば、思い出の残る作品になったのかもしれません。あとがきでも時にはゲームの話をしたり、どうでもいいことを話したりしてきました。何度、この小説を打ち切りにしようかと、思ったような、思わなかったような。とりあえず、終わりまでやってこれてよかった、そう思うことにしましょう。曖昧な終わり方、それが雨月の小説でございます。選択肢を選ぶための選択肢、分岐点を選ぶ分岐点、それがこの小説の終わりにふさわしい、そう思っております。それでは……………今回のあとがきを始めることとしましょうか。さて、今回は真面目な話で閉めようかな、そう思っております。この小説の絵を時折書いていただいた無感の夢者さん。何気に小説のほうもお手伝いいただいたこともあり、一話分、書いていただきました。この場を借りて挨拶を。ありがとうございました、二百話の続き、お待ちしております。小説を読むときに挿絵があったら便利なんですが、こっちじゃまだ実装されていないようでまぁ、ケータイで挿絵つきの小説を見ようなんざ、まだまだ先の話になりそうですし、期待しないで待っておくことにしましょうか。っと、話がそれました。自分の小説に絵が付くことは非常にうれしいものがありますね。時間がないという嘘をついて、そろそろあとがきを終わらせようと思います。この小説が何かのきっかけになったらなぁ、そんな他人様の人生に影響を与えられる小説、いつになったらかけるのでしょうねぇ。最後までぼやいてしまいました。ダメ出しなどの感想、お待ちしております。九月九日木曜、二十三時一分雨月。

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