第二百五十二話◆:涙を流すモノ
第二百五十二話
俺は東家の館前までやってきた。途中、何も問題なんて一切起こらなかったし、お守りだってしっかりと手にしている。
「………よし」
そして、気がついた。ものすごく、大切な約束事を。テレビでも言っていたのだ。
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「霧兄さん、妹たちとの約束破るなんて本当、信じられないっ」
「ご、ごめんね、僕も忙しかったんだっ」
「へぇ、じゃ、この隣の女の子誰よぅっ」
「いや、それはカメラ好きの女の子が道に迷ってて………」
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その後、彼は妹二人によって口に出して言ったらモザイクがかかるほど、ひどい仕打ちを受けたそうである。
「あ、02忘れてきた………」
人は、どうしようもない過ちを繰り返すものだ。洗おうと思って気がついたら、生命の誕生が始まってしまっている湿ったパンツや、もう騙されないぞと意気込んでいたのに結婚詐欺にあったりと………
「いや、今から行けばまだ間に合うはずだ。大丈夫、大丈夫だ、俺っ」
「安心してください、ゼロワン様の記憶力がいまいちなことは承知の上ですから」
正直、心の奥底で震えあがったね。
首を無理やり動かして声の主を確認。やっぱり、きちんと謝ったほうがいいのだろう。
「………その、忘れて悪かったな」
「謝罪の言葉は必要ありません。これから向かう場所の事だけをゼロワン様は考えていればいいのですから」
「そうか………悪いな、気を使わせてよ」
気遣い、気配り、02がそんなことを考えてくれているなんて思いもしなかった。
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「ここから先、私は入りません」
「そうか」
何だろう、廊下や彫像品などが何者かの手によって破壊されている………。初代、東家当主の絵画、ど真ん中に豚の貯金箱が突っ込まれている。
「これから、事後処理を行わなくてはいけませんからねぇ」
きっと、火薬がぷんぷんするような危ないものを使ってニアと遊んだのだろう。
背中を見せて歩き出した02。だが、その足を止めて振り返った。
「ゼロワン様、あなたは恵まれていますよ」
「どうかな、俺はそう思わないぜ」
爺ちゃんと二人きり、一緒に暮らしてきた時間のほうが長いのだ。両親がいると言ってもいまだ、ちゃんと見たことはない。
「私はこれまでゼロワン様より短い間でしたが心を学ばせていただきました」
携帯電話に入っていた時期の事を言っているのだろう、あれは俺にとってもいい経験だったんじゃないかな、そう思える。
「見えないところでいろいろな人がゼロワン様の事を想い、信じて、繋がっているのですから」
「………なるほどな。当然、その中の一人が02なんだろ」
「それは…………どうでしょう。私は人間ではなく、人造人間ですからね。ゼロワン様の好きなようにとっていただいて結構ですよ………では、失礼します」
「ちょっと待った」
歩き出した02を呼びとめ、これまでの礼を述べることにする。
「いろいろと助けたり、話せたりしてケータイ時代は楽しかったぜ。俺、お前にあえてよかったと思ってるよ」
「それは残念でしたね。もっと私の事を構っていたら、もっと楽しかったかもしれませんよ………まぁ、もしも、なんて言葉、使うのはおかしいことかもしれません」
二度と振り返ることはなく、02は曲がり角に消えてしまった。
「………さてと、俺も行くかな」
後ろを振り返ったところで、携帯電話が鳴りだした。
「お」
メールのようで、中身を確認すると02と表示されている。
『頑張ってください』
添付されていたファイルは、嬉し泣きをしている02の画像だった。
「………人造人間って泣けるのかねぇ」
俺の質問に、少々の皮肉を混ぜたような回答をしてくれるものは此処にはいなかった。
感想、次で100番目ですね。いや、くれなんて言っているわけじゃあないんです。では、あとがきを始めます。今回は02の話でしたね、ええ、02です。ぶっ飛んだ設定とか穴だらけなので突っ込みを入れたい性なのですが、完全に異質の02を入れてしまったことを当初は悔みましたが今はこれはこれでよかったかな、そう思っています。なれって怖いですね。異質な存在なら、ニア、栞、剣などがいますがいるんですよ、世の中にはあなたが知らないほどお強い女性が。「女だからってなめてるとけがするよっ」いえ、本気を出していってもやられるものなんですよ。まぁ、この話はここまでにしておきましょう。あと二、三話のうちに話をまとめて、終わらせられたらいいなぁ、そう思っています。とりあえず、それが終わったらみんなの気になるあの話題やら、あの話をまとめていこうかなと………大風呂敷を広げたのならきちんとまとめないといけませんからね。ああ、ちょうどこの小説も書き始めて半年近くたっているんですねぇ。零一がちゃんと成長しているのか非常に疑問ですが、成長しなくても時は過ぎるものです。次回はそんな、成長の話を書きたいなぁと。それでは、次回予告っ。次回、『零一、妹の名前を間違える』と『宇宙人に襲われたと思ったら夢落ちだった』の二本です。麻妃、忘れないでくださいね。九月七日火曜、二十三時二十九分雨月。