第二百四十八話◆:オマモリ1
第二百四十八話
02と共にアスファルトを歩く日が来ようとはまったく思いもしなかった。
「なぁ、空とか飛べるんだよな」
「それはどうでしょうか」
「だって、人造人間なんだろ」
「ええ、それはそうですが、ゼロワン様が想像している人造人間とはちょっと違います」
どう違うのだろうか。ロケットパンチ、ビームサーベル、なんだかよくわからないバリアとかそんな感じだろ。
「人間に準じた形ですので、一度右腕が破損した場合は修理できません」
「…………え」
「メンテナンスも難しいですね。それこそ、本物の人間と言っても差し支えありません。病気などにもしっかりとかかってしまいます」
「それっていろいろと問題じゃないのかよ」
「ダニエルさまが作りたかったのはロボットなどではなく、人間ですから」
なるほど、それなら当初の予定にぴったりってことなのか。
「それで、ゼロワン様」
「何だよ」
「東家から徐々に遠ざかってきていますが逃亡でもなさるおつもりですか」
「いや~、友人の家に向かってるだけだ」
そういうと02は少しばかり不思議そうな顔をした。
「なるほど、それなら私はあのファミリーレストランで待機しておきます。全ての用事が終わったら、来ていただけるとすぐにでも東家にお連れしますよ」
「悪いな」
「いえ、当然のことです」
それだけ言い残して02はファミレスへと向かって行った。正直、ウェイトレスのような格好と言っても差し支えないものなのだが、あれで入店とか出来るのだろうか。
「メイド喫茶に、メイド服姿で入るのと同じことなんだろうな」
きっと、バイトか何かと間違えられるのではないのだろうか。いや、普通に客として入れるのかもしれないな。
――――――――
チャイムを押し、相手が出てくるのを少しだけ待つ。
「はい………あれ、雨乃」
出てきたのは笹川。猫が俺のほうをちら見したのだが、そのまま行ってしまった。
「悪いな、連絡も入れずに来ちまってよ」
「別にいいけど………あのさ、何かの間違いだと思うけどさっきテレビで行方不明って………」
「間違いだろ。大体、行方不明者が此処に来るわけないだろ」
「………見間違い………かな」
「ああ、見間違いだ」
どうも納得していないようだったが、変にほじくられても困るのでさっさと本題に移ることにした。
「突然で悪いけど、笹川の写真ってあるか」
「は」
「写真だよ、写真」
「え、ちょっと待ってて今アルバム持ってくるから」
「いや、最近の写真、一枚でいい」
「………わかった」
笹川が奥に引っ込んだので少し待とうとしたら足元に何かが当たった。
「ん」
「にゃ」
猫が俺の脚に猫パンチをしているのである。抱きかかえるとおとなしく腕の中で喉を鳴らした。
「お前暇か」
「にゃ」
「俺は忙しいけどな」
「にゃにゃにゃ」
「………これからどうなるか分からねぇけど、人間やっててよかったぁって思える時が来るのかねぇ」
「にゃ」
猫は俺の腕から飛び降りて、こっちをちらっと見た。その後、尻尾を振って、どこかへと去っていく。
「…………猫は気ままでいいよなぁ」
「はい、持ってきたわよ」
「ああ、悪いな」
笹川の写真はグッドだった。何だろう、凛々しい表情がしっかりと撮られており、誰が撮ったのだろうと疑問を覚える。
「親戚さんか」
「ううん、吉田君」
「………へぇ」
あいつにしてはなかなかいい仕事だ。今度会ったときに軽く褒めてやっとくか。
「じゃ、借りてくぜ」
「え、ちょっと、何に使うのよ」
「そうだなぁ、お守り………かな」
「………お、お守りって………」
何故だろう、笹川の顔は真っ赤に染まっていた。
「ま、いつかちゃんと返しに来るから」
「ううん、ずっと持ってていいよ」
「そうか、それならもらっとくわ」
「じゃあね」
今日は今年一番、笹川が可愛く見えたな。
たまに、そう、本当にたまーに、思うんですが………小説に評価機能が付いているのは知っていますが、この小説は評価するに値するものなのでしょうか。実に、疑問です。いつか、すべての人に評価されるような小説を書いてみたいと思う今日この頃……さて、夢見の話はここまでにして時間もないので次回の予告をしましょうか。次回、バッドエンド『零一、痴情のもつれで吊るされる』と『かわいい女の子ばっかりの館に拉致され、雨乃零一、鼻血がだくだく。貧血の後に出血多量でかわいい天使さんばかりの天国入院』の二本をお送りするかもしれません。なお、内容は変わるかもしれませんのでご了承ください。九月二日、木曜、二十二時五十七分雨月。




