第二百四十六話◆:騒乱の策士
第二百四十六話
あれから一週間。朱莉は徐々に機嫌が悪くなってアパート内部の居心地感は段々と減少。さっさと此処から出ていきたいと言う衝動に駆られ始めるようになってきた。何だろう、やたらと風花の事を気にかけると怒りやすくなってしまったのだ。
ともかく、今日でそれも全て終わると俺は思いつつ、東の館へと向かうことにしたのだった。ただ、懸念すべきことがいくつかあって起きた時点で風花、朱莉の姿はどこにもなく、『先に待っています』という言葉が書かれた手紙が置いてあっただけだった。
自分で朝食を作って、自分で食べる。なんだか、これまでそれが当然だったのにさみしくて仕方なかったりする。
「俺ももう年かねぇ~」
そんなボケをしてみても、誰も突っ込んではくれなかった。
―――――――
東家の館へと向かう途中、なんだか久しぶりに出会う人物がいた。
「爺さんじゃねぇか」
「おお、若造か」
爺さんは謎の機械を手に持っており、多分、ダウジングと言う奴だろうな。
「宝探しでもしてるのかよ」
「宝探しか………まぁ、言い方を変えればそうかもしれんのう。ところで、お前さんこれから東の家に行くんじゃろ」
まさか、爺さんから言われるとは思いもしなかったのでつい、驚いた顔をしていると実に嬉しそうに笑うのだった。
「若造がどんな道を選ぼうと、それはお前さんの道じゃろう。その道は実に複雑奇怪にねじれ、絡み合っておる」
「俺の人生をあんたが知ってるのかよ」
そういうと爺さんは遠い目をして言うのだった。
「昔、そうじゃな、わしがまだまだ現役で、若造ぐらいの年じゃった………ある日、好敵手と言える男が現れてなぁ。それまで実力ともに一番と思っていた自信を打ち砕いた相手じゃった」
「爺さんでもかなわない相手がいたのかよ」
「今やったら勝てる気がするわい」
「もし、あの時あやつに出会っていなければ、今のわしはいなかったのかもしれんのう」
懐かしそうにそういう爺さんに素直に尋ねることにした。
「なぁ、その相手って誰だよ」
「お前の爺だとは口が裂けてもいわんことにしておるわい」
「…………」
嘘か真か………爺さんの言葉を信じることになると、俺のじいちゃんはすさまじい人間であるということが立証されるのだがどうも、信じられない。
「信じる、信じないは若造次第じゃよ。それに、ここでわしと話していてもいいことはなかろう」
「っと、そうだった。遅れるとまずいからな。じゃあな、爺さん」
「ああ、元気でな」
爺さんに手を振って俺は別れ、東の家へと向かうことにした。
「さて、そろそろわしも籠って仕事を開始するかの」
そんな言葉が聞こえてきたような気がしたが、気のせいだろう。
――――――――
東家の館はちっとも変わっておらず、そこに存在していた。泥棒とか入ったりするのだろうか………。
「きっと、侵入したらすさまじい対策が講じられているから盗人なんて出来な………」
サイレンの音が館のほうから聞こえてきて、あわただしい音もしてきた。窓を突き破って二人の人物が出てきたかと思うとこちらのほうへ一目散に走ってくる。その速さは既に、人が出せる速さの限界を超えているような気がして………
「ニア………と、02かよっ」
なるほど、片方は人ですらなかった。
「零一かっ………む、なんでこんなところにいるんだ」
「いや、まぁ、ちょっと用事があってな」
「お待ちなさいっ」
ニア、そして02が出てきた館からすごい数のお手伝いさんがやってきた。
「ニア様、ここはひいたほうがよろしいかと」
「そうだな、零一、行くぞ」
「は、え、ちょっと」
軽くニアの肩にかけられて俺はあっという間に移動していく。アスファルトが恐ろしいほどの速さで駆け巡って行き、俺は生身でこれほどのスピードを出すとどれほど怖いかというのを体感する羽目になった。
そして、次の日のニュースには誘拐された少年Aという形でテレビデビューを果たすことになる。
最近ニアの存在を忘れつつある方が増えていたりしますか。え、この小説自体を忘れていた………大丈夫、忘れていても更新はしますから。ええ、たとえどんな結末になったとしても、泣かないでくださいね。タイトル通り、ハッピーエンドになるかどうかは………一度でいいからトラウマを植え付けるようなエンディングを書いてみたいものです。さて、いよいよラストに向かって走り出したこの小説。もちろん、尻切れトンボで終わりませんのでアフターデイズ的なものはちゃんと存在します。まぁ、全員分を書くことができるかはわかりませんがね。長い長い東編、いつ終わるんでしょうかねぇ。次回、『ついに決定かっ、零一、さまざまな女子の中で一番を決める祭りを開催?』内容は変わる可能性がありますのでご了承ください。八月三十一日火曜、二十二時三十九分雨月。