第二百三十七話◆:冗談、ですよ。
第二百三十七話
四月、と言うことは、新一年生も当然いるわけで、稀にこういう脳内がお花畑全開のおばかもいるわけだ。
「零一、一年生に可愛い子が入っていないか調査しよう」
「…………」
今年は受験生だろうに、満よ。しかも、一年下のところまでわざわざ俺を誘いに来るなんてこいつは何を考えているのだろうか。ほら、周りの女子たちの反応を見ろよ。去年は私たちがその一年生だったって表情をしているぞ。
「なんで俺に真っ先に話しかけてくるんだよ」
「他の人じゃ、伝わらないだろうし。零一だって女の子と話したりしたら楽しいだろう」
「あいにく、女子の知り合いは間にあっているんでね」
「まぁまぁ、そんなお固いことを言わないでさぁ」
満に引っ張られて廊下を出ると、そこには今回も同じクラスとなった剣がいた。どうやら、職員室から戻ってきたらしい。
「一先輩に兄さん………何をしているのですか」
「え、いや、連れションだよ、連れション」
「本当ですか」
ぴくりと動く剣の眉に、汗を流す満。このままいくと家でどのような過激な(そして一方的な)戦いが行われるのか想像もつかない。
俺は助け船を準備して、救助を開始する。
「いや、一年生の女子を見に行く途中だ」
「あ、零一………」
なぜか、そんなことを言ったら末代まで祟られるぞと言った表情を浮かべていた。しかも、理解できないことは俺のために言っているような感じだったということだ。
「一年生の女子………それは何故ですか」
「かわいい子がいないか探しに行くんだと。満が言ってた」
「そ、そうなんだ、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ零一を連れて行こうとしたんだよ」
もはや真実をさらけ出したくなった哀れな子羊となり果てたらしい。そして当然、剣は顔をしかめている。
「先ほど、連れションだと……」
「ええ、僕、そんなことを言ったかなぁ」
おい、こっちのほうを見るんじゃない。下手に嘘ついたら剣に何をされるかわからないだろう。
「はぁ、まぁ、わかりました。兄さん、行ってらっしゃい」
「え、ああ、うん。行ってきます」
「じゃあな、剣………っと」
俺の腕をしっかりと挟んで剣は教室内へと連れて行った。
「え、ちょっと、なんで零一はこないのさ」
「兄さん一人で事足ります。第一に、一先輩が自発的に動いたようには見えませんので。一先輩は流されやすい性格をしていますから」
一年って結構短い間だと思っていたけど俺が流されやすい性格だと見破られるとはな………。
まるで拾った犬を捨てて来いと親に言われた少年の表情になりつつも、満は一人で階段のほうへと向かって行ったのだった。そして、剣は言うのだった。
「一先輩、たとえ友達の願い事だったとしても無理に聞く必要はないと思いますよ」
「ああ、まぁ、そうだな」
「やさしいのは知ってますが」
「は、誰がだ」
「一先輩ですよ」
「ははは、俺がやさしいって剣は変わってるなぁ」
俺の知り合いは変なのばっかりだな。というか、俺の事をやさしいなんて言う奴がいるとは思いもしなかったよ。
「私、変なことを言いましたか」
「ああ、言ったね。俺はやさしくないぜ」
「そうですか、それにしてはやけに嬉しそうな顔をしているのは何故でしょうか」
「そりゃ………」
なんでかな。いや、別に嬉しい顔なんてしているつもりはないんだけどね。
「俺はもとからこんな顔だと思ってたぜ」
「最初、会った時は笑顔が似合わない人でしたよ」
「ぐわ、剣は俺をそんな目で見ていたのか………」
「冗談、ですよ」
「………ま、いいけどな」
剣が冗談ねぇ………本当、そっちのほうが冗談に聞こえて仕方がない。人間って変わることが出来るということなのだろうか
最近、生活のリズムがめちゃくちゃになりつつある、雨月です。先日、謎のメールがやってきました。このメールに関して絵を書いていただいている夢者さんに相談したりしていたら………次の日、出会い系からメールが。ああ、返信しなくてよかったよかったと相成ったわけですよ。さて、昨日なぜだか知りませんが姿を消している「02」のグッドエンドを考えて実行に移そうと思い立ちました。しかし、そういえば最近ちゃんと姿は洗わせていないということになり、登場させないとまずいんじゃないかと思い始めたりしています。もう、終わりまでそんなに長くないので早く洋一郎、零一の妹も出さないといけないなと。さて、最後になりましたがやっぱりわからないことがあります。ずばり、この小説はおもしろいのか、否なのか。知りたいものですね。八月十四日土曜、八時八分雨月。