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第二百三十話◆:未来の過去に起こった雨乃零一殺人事件 Ⅴ

第二百三十話

 結構な距離を歩いたおかげで足がぱんぱんになってしまったのは仕方がない。澤田の家は以前とまったく同じ場所にあり、ちゃんと表札も『澤田』のままだった。

 ほっとしつつ、さて、普通にチャイムを押していいのだろうかと悩んでいると庭に『なつきの墓』というものが存在していた。

「まぁ、俺は冷静だ」

 なつき、とは澤田のところで飼われている犬の名前である。きっと、死んでしまったのだろう、かわいそうに。

 ここでは死んでいる俺がそんなことを言うのもどうかと思いつつ、チャイムを押した。しばしの間、静寂が保たれていたのだが返事があった。

『れ、零一さんっ………』

 声からして澤田なのだろう。六年後の澤田………って、えっと、確か飛び級した時点では本当は中学三年生なのだから………それから六年後って二十一歳ぐらいか。

 自分の脳みその計算能力に呆れつつ、俺も返事をする。

「おう、俺だ。開けてくれよ」

『………嫌です』

 まさか嫌と言われるとはな………思いのほかショックを受けつつ、理由を尋ねることにした。

 すると、当然のような答えが返ってくる。

『零一さんは、わたしが刺したんです。生きているはずがありません』

「ああ、そうだな。誰が刺したのかは知らないが、こっちの零一は死んでいる。俺は六年前からやってきた零一だ」

 自分で言ってて脳内エキスがしみ出ている人だなと思ってしまう。

「あ、嘘じゃないぞ。顔とか見てくれればまだぴちぴち感が残っていると思う」

『………わかりました、今開けます』

 がちゃりという音がして扉が開いた。そこに立っていたのはまぁ、これまたどこかのお金持ちのお嬢様、それ以外の何でもなかった。白……いや、純白のカーディガンを身につけており、その下は水色で合わせているなど、よだれが垂れそうなほどきれいだった。こほん、ちょっと取り乱して変なことを言ってしまったが気にしないでほしい。

「確かに、零一さんにしては少し幼いですね」

「だろう、信じられない話かもしれないが、信じてくれるか」

「………ええ、でも、家の中には入れることが出来ません。話があるのなら、ここでお願いします」

 ああ、この六年間のうちに澤田とはかなり深い溝が出来てしまっているんだな。そう思って悲しくなりつつ、用件を述べることにした。

「俺は今、未来の俺を殺した奴を探している。別に、そいつを今から捕まえてどうこうするわけじゃない。俺は誰が俺を刺したのか、そして刺した理由を知りたいんだ」

「わたしが刺しました」

 これまでのみんなと同じで、やっぱり刺したと言っている。予想の範囲内なので続きの質問を口にした。

「じゃ、なんで刺したんだ」

「衝動的なものです。気づいたときには刺さっていたんですよ」

 これでいいですか、それだけ言うと澤田は扉を閉めようとした。俺はあわてて最後の質問を口にする。

「なぁ、こっちの零一は俺のような零一じゃないのか。どうも、おかしいんだ」

「………そうですね、零一さんは以前のような零一さんじゃなかったって思いますよ」

 それだけ言って今度こそ扉を閉めてしまう。最後にちらりと確認できた澤田の表情は悲しいものだった。

「俺が変わった………だから、刺されたっていうのか」

 今の俺にはわからない、未来の俺がどう変わったのか。変わった俺がどのような人物になっていたのか、そのことを調べ始めたら今度は犯人、そして動機を探るのがおろそかになってしまう。

 ともかく、満の家へと戻ることにしたのだった。



―――――――



「ん」

 満の家の近くまで戻ってきた俺は違和感を覚えるようになった。いや、違和感は既に確信へと変わる。

 誰かに後をつけられているのだ。誰かはわからないし、なんだかわざと気付かせるような感じで後を付けている気がしてならない。

「朱莉………か」

 名前を呼んでみると、気配は消えてしまった。どことなく、冷たい雰囲気を帯びた相手で、系統的にいうとニアや爺さんのような闇に生きてそうな人物だ。

 もしかして、朱莉はA.S.Tに就職(配属か)し、人には言えない特殊な訓練を受けたりして…………

「んなわけないか」

 自分の妄想も結構頑張っているなと思いつつ、満の家へと入るのだった。もちろん、世界一周旅行から親御さんが返ってきていないことは現地から送られてきた手紙で確認済みである。どうやら、一回周るだけじゃ足りないようで………何年後に帰ってくるのだろうか………。

 合鍵を受け取っていたのでまわしてみた。しかし、鍵は既に開いている。

「おろ、おかしいな」

 首をかしげつつ、玄関の引き戸を開ける。すると、一足の靴が置いてあった。

「………剣、か」

 相手を確認するため、俺は静かに家の中へと侵入することにした。


今回で二百三十話ですよ。いやー続きますねぇ。前作が三百話いっていただろうか…………さて、この話も中盤ぐらいに差し掛かっていると信じたい今日この頃。書いていてあれもやりたい、これもやりたいと無駄に増えてしまっています。ああ、贅肉を落とさなくては………そして、明日から八月。夏休み中の諸君、八月に入ると非常に短いなと思ってしまって本当にさみしいと思うが、夏休みの友はさっさと倒したほうがいいと思います。あれほどの難題をクリアしなければ、残暑を耐えることはおろか、夏休み明け、校庭で行われる場合の校長の話は想像を絶する破壊力を持ってあなたを襲うこととなるでしょう。ま、とにもかくにもこの小説を読んで少しでも面白かったと思えたならば(シリアスな話途中で何っているんだとおもうかもしれない)作者の勝ちです。一回も笑わなかったという君、ひねくれすぎです。え、この小説が面白くないって…………そりゃあ、あなた、プロじゃないから仕方ないですよ。お金払ってこの小説を読んでくれる人なんて私には必要ありません。自由に書ける小説のほうが楽しいですから。それでは、感想評価を頂いて、うはうはな自分を想像しつつ今日はここらでペンを置くことにしましょう。七月三十一日土曜二十時三十九分雨月。

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