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第二百二十三話◆:佳奈、そして風花

第二百二十三話

 いろいろな思い出を作った家族旅行。たった二人の家族旅行だったけど俺にとっては代えがたい思い出になったのかもしれない。まぁ、佳奈がどう思っているかは知らないし、それこそ佳奈の勝手であり、俺には関係のないことだ。

 少し経った後の三月頭、栞のお兄さんである笹川真先輩は卒業式の当人となった。俺は一年生でありながらも学校に来ていた。在校生は二年生までしか卒業式に出席できないので屋上から校庭を眺めていた。

「来年は佳奈たちが卒業か」

 いやいや、よく考えてみたら俺もそのチャンスは十分にあるのだ。来年の七月、受験に耐えれるような脳みそを所持していれば特例として受験生となることが出来る。

 もし、受験生になれば来年は俺が卒業する番になるんだなーっとひたっていると背後に人の気配がした。

「何屋上なんかにいるのよ」

「佳奈、お前まだ卒業式が体育館でやってるだろ」

「終わったわよ、そんなの」

 俺の隣までやってきてフェンスに手をかける。

「というか、今日は屋上立ち入り禁止だし、零一は学校来なくていいでしょ」

「ま、知り合いというか、先輩が卒業するからな。一応来たんだよ」

「あ、じゃあ挨拶終わったら一緒にお昼食べに行こうよ。せっかく学校出てきているんだしさ」

 そう言って俺の手を引いた。少しの間考えて、うなずくことにする。

「そうだな、何か食べに行くか」

 まぁ、真先輩への卒業おめでとうのあいさつはメールで済ませておけばいいか。このメールを送った後に真先輩から『君はせっかく挨拶に途中まで来たというのに女の子と一緒にお昼に行ってしまったのか………』という実際の本文は文字数ぎりぎりという長文メールだったりする。



―――――――



 ファミレスに入って佳奈の機嫌が非常に悪くなったことに気がついた。

「いらっしゃいませ、二名様ですか」

「………」

「あれ、風花………」

「風花、ではありません。マスターウェイトレスです」

 そこにいたのは俺のお手伝いさんである風花だった。ウェイトレス姿も様になってるな。

「二名様ですか」

「いえ、結構です。出ますから。零一、いこっ」

「え、おい佳奈………」

 俺の手を引いて佳奈はさっさと出てしまった。そんな俺たちを風花は涼しげな表情で眺めているだけだったりする。

「本当、あの人なんであんなところにいたんだろ」

「さぁなぁ、もしかして俺のお手伝いを解雇された、ということは俺も東の跡取りからはずされたってことなのか………」

 それならそれで嬉しい事なんだが、風花と一緒に生活できなくなるのも………

「零一、零一は巻き込まれてるだけなんだから両親の言うこと素直に聞いてるだけじゃ駄目だよっ」

「ん、まぁ、そうなんだけどな」

 俺には俺の事情がある(俺が勝手に跡取りから降りると風花とその部下が路頭に迷う)のでそう簡単にいやいやいやよ、お代官様っということが出来ないのである。

「ともかく、別の場所でお昼食べようよ」

 俺の手を強くひいて、佳奈が目指した場所はラーメン屋さんだった。

「いらっしゃいませ、二名様ですね。申し訳ないのですがカウンターしか開いていないのですがよろしいでしょうか」

「………あれ、風花じゃねぇか。お前、早着替えも得意なんだな」

「風花、ではありません。単なる気のきく店員です。ささ、こちらにどうぞ」

 結局、佳奈が風花をにらみながらも俺たち二人はカウンターに座ることになった。昼時と言うこともあってか、客は多い。

「佳奈、何食べる」

「そうね、ラーメンでいいわ」

 もはやどうでもいいと言った調子で投げやりにそう答えるのだった。まぁ、佳奈が言うのなら仕方がないので俺のすぐ後ろに待機していた風花に注文を取ってもらう。

「ラーメンが二つですね、かしこまりました………ラーメン二つ、最重要事項でお願いします」

「あいよーっ」

 そんな声が厨房から聞こえてきて手際のいいおっちゃんがあっという間にカウンターに二つラーメンを並べてくれた。

 ラーメンは美味しくて、こんな店が近くにあったんだなーと改めてこの町の地理を完全に把握していないことを思い知らされた。

「いやー、君が零一君だねぇ。君の風花ちゃん、よく働いてくれて大助かりだよ」

「え、あ、はぁ、それはどうも」

 店を出るときにそんなことも言われ、佳奈は何やらじとっとてきぱきと働いている風花のほうを見ている。

「何よ、あれ」

何だろうか、かなりこの場から逃げ出したい気分になったのだが気のせいだろうか。

 ともかく、今日はそれ以降佳奈の機嫌が斜めに傾いていたので気を使ってしまった。それも気に食わなかったようで別れるときにふんっとそっぽを向いて行ってしまった。

 やれやれ、本当どうしちまったのかね。


ええ、どうせ人気がなくても小説は書きますとも。ええ、批判する小説をたまに書いて、感想で批判されてもそれは偏りすぎだと逆に言ってやりますとも。というわけで、『獄潰し ~最近の奇行に走るヒロインについて~』を執筆したいと思います。本当、最近おかしな行動をとれば注目浴びると思う人が多すぎて困ります。目立てばいいってもんじゃないでしょ。それに、奇行なんてやってる場合じゃありません。ここは守りに転じて当たり障りのないものを作っていこうじゃないですか。そうそう、いきなり打ち切りっていうのもさすがにどうかと思われるそうで、打ち切りっぽくない打ち切り方の科学、誰かやってくれないかな、そんなことを考える今日この頃です。雨月に何か言いたいことがあればどうぞ、変わっちまったなと自分では思ってます。七月二十五日日曜、二十二時三十七分雨月。

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