第二十二話◆:追跡への誘い
第二十二話
中間テストが終わった。結果はまぁまぁ。
それと同時に六月に入ったわけである。今年の梅雨はしつこいようで、空からずっと雨が降り注いでいた。
「はぁ、憂鬱だな……」
校舎内から窓の外を見る。ひどい雨量だ。靴下も学校についた時点で履き替えねばならず、靴の替えが無い俺は家に帰ったら古新聞紙をつめておかねばならない。
他にも、雨が続くと家の中には洗濯物がぶら下げられるのだ。二階廊下に干されるために構わないのだが、その所為で俺は二階に出入りを禁止された。勿論、鈴音さんや達郎さんからの言葉ではなく佳奈による一方的な宣言だった。
「零一、あんた絶対に上に上がっちゃ駄目だからね」
「はぁ……何でだよ」
理解できず、そう異議申し立てをしても完璧無視。日を改めて、持ち上げてみても駄目の一点張りで何故、あそこまでかたくなに拒まれるのかわからなかった。
「……と、またかよ……湯野花さん」
廊下からの視線を感じてそっちのほうを見る。
「ばれちゃいましたか」
「ばればれ……。で、また俺を追跡してるのか」
「いや、そうじゃないですよ」
そういうと隣までやってくる。
「じゃ、どうしたんだよ」
「いやぁ、それが実はですねぇ……今回はお願いに来たんです」
「お願い……」
一体全体どんなお願いだろうか……あたしの彼氏になってくださいとか…
「実は、一緒に追跡してもらいたい人がいるんです」
「……ああ、なるほど。そっちか」
「え、そっちかって……」
ま、夢っていうのははかなく散ったほうが面白いことだってあるだろう。
「いや、気にするな。それで、誰を追跡すりゃいいんだよ」
「二つ返事ですね……実は浮気調査なんですよ」
「浮気調査ぁ……なんだか、探偵の真似事みたいだな」
「ま、そんなものです。たまに、すごくたまに請け負うんですよ。毎回毎回、大変な思いをしているので貴方に協力を仰ごうかと思ったんです。一人でやるよりも二人でやったほうが手間が省けると思いましたし」
そういって一冊のノートを手渡された。
「勿論、追跡癖があったとしても技術が無ければすぐにばれてしまいますけど……昨日まで零一君を追跡していましたが見事、合格です」
「そっか、そりゃよかった」
そういった理由のためにもしかして俺を追跡していたのだろうか。
「ただ、一つだけ欠点がありました」
「欠点……なんだよ」
「女性を追跡し始めると時折ぼけっとしている時間があります。そこで、何度かばれそうになりましたし……それが問題点ですね。注意してくださいよ」
「わかったよ……」
「わかっているとは思いますけど、学校が終わったらすぐに依頼者さんのところに行きますからね。放課後、下駄箱の前で待ってます」
「はいはい、わかりましたよ」
「言っておきますが、一度やるといったからには絶対に逃げないでくださいよ」
釘を刺されるということは相当大変なのだろう……ともかく、それだけ残して湯野花さんは背を向けて去っていった。
――――――――
放課後、指定された場所に立ち尽くす。なんだか既視感を覚えたがそれも気のせいだろう。
相変わらず外は土砂降りである。もうちょっと静かに降ってくれればそれに越したことは無いんだけどなぁ……
「零一君」
そんな事を考えると声をかけられた。その主が湯野花さんだということに気がつくのは一秒もかからない。
「じゃ、行きましょうか」
「ああ、まずは浮気調査を依頼した人に会うんだったな」
「そうですよ」
そういって二人で歩き出す。一つ、疑問を覚えた。
「なぁ、そういうのって正直ちゃんとした会社に頼んだほうがいいんじゃないのかよ」
「……学生だったら相手も油断するってあたしが説得しました」
「……」
この人、将来探偵でもやるつもりなのだろうか。
さて、少し長編物をここで一つ。今後、どうなっていくかは読んでいただければわかるかと思います。けして、雨月が出たとこ勝負をしているわけではないと言っておきましょう。二月三日水曜、十四時十五分雨月。