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第二百十話◆:金曜日、謎の言葉

第二百十話

「では、洋一郎さまとスケジュールの調整を行ってきます」

「ああ、気をつけてな」

 金曜日、風花は異常とも思えるほどの大きさのリュックを背負ってアパートを後にした。何故、あんな荷物が必要なのかさっぱりわからないし、何が詰まっているのかは分からない。一度、開けようとしたところ俺の手を掴んで風花は言うのだった。

「その中身を見てしまうと精神が崩壊してしまうと思いますよ」

 一体、あの中には何が入っているのだろうか………非常に気になったので尋ねてみたところただ一言、『思い出です』と残したのだった。



「ああ、言い忘れていましたが野々村竜斗様から何か言われるかもしれませんがそれはたぶん、何かのまちがいですよ」



「え、どういう意味だよ」

「言葉どおりの意味だとしか言えません、それでは、行ってまいります」

 ほほ笑むことなく、いつものようにクールに出て行った。

 扉を閉めようとしたところで全く動かないことに気がついた。

「あれ、なんでだ」

「そりゃぼくがつかんでいるからだよ」

「竜斗………なんだか久しぶりだな」

「そうかな、ぼくは毎日零一君を見ていたけど」

 にこっと笑って勝手に部屋に入ってくる。まぁ、お隣さんだから別にかまわんわけなのだが。

「見てたんなら話しかけてくれてもいいじゃねぇか」

「ま~、ね、最近あのお手伝いさんが目を光らせていたから。あの人、零一君と同い年だって言わなかったかな」

「ああ、言ってたな」

 そう告げると苦笑しながら竜斗は笑うのだった。

「あれ、嘘だよ。本当はぼくらより二つ上、今二十歳だよ」

「え、そうなのか」

 それなら何故、俺と同い年なんて言ったのだろうか。

「彼女にもいろいろとあるんだろうねぇ。あのさ、君が寝ているときあの人はどこにいるのかな」

「空き部屋を掃除して、荷物とか置いているからそこで寝てるんじゃないのか」

 そういうと竜斗は笑うのだった。

「やっぱり、零一君は危ないな。あの人、君が寝てるとき隣まで来て寝顔をじっと見てるんだよ」

「それはそれで驚くが、お前がなんでそんなことを知ってるんだよ」

「女の勘………かな」

 なんだか竜斗が女の勘とか言うとかなり嘘っぽく聞こえてしまう。

「あ、今なんだか失礼なこと考えたでしょ」

「えぇ、俺がそんな失礼なことを考えるわけないだろ~」

「相変わらず嘘が下手だね………」

「けどよ、風花は出かけるときに竜斗の言うことは嘘だって言ってたぜ」

 俺の言葉を少しの間考えているようだったが首をすくめた。

「まぁ、そこはあれだよ。ぼくの事を信じるか、素性の知れないお手伝いを信じるかは零一君が決めればいい」

 ウィンクをしながら言う竜斗はなんだか似合わない。

「あ、またもや失礼なことを考えたでしょ」

「いんやぁ、俺がそんな失礼なことを考えたりするわけないぜ」

 どうも信じてもらえないようで、俺の鼻に人差し指を突き付けて竜斗は口を開く。

「失礼なことしたんだからぼくの言うことをひとつだけ聞いてもらうよ」

「失礼なことをしているのはお前だろ」

 人を指差す行為は失礼に値するだろうな。

「今度、寝ているときに『風花お姉ちゃん』って言ってごらんよ」

 俺の言葉なんてさらりと無視し、竜斗は驚くようなことを言ってのけたのだ。

「………え、風花は俺の姉なのか」

 実に愉快そうに笑って首を振った。まるで全てを知っているうえで話をしているようで少しだけ不快だ。

「いいやぁ、全く違うよ。血がつながっているわけじゃないし、血の繋がっていない義姉というわけでもないから」

「じゃあなんでお姉ちゃんなんだよ」

「さぁね。ともかく、言ってもらうから………大体、野々村が東に首を突っ込むなんて間違っているかもしれないけど今回、ぼくは竜斗として零一君の事情に首を突っ込むよ。君がぼくの事を助けてくれたから………ね」

 そう言って竜斗は立ち上がった。

「君が望んで東の頂上に腰を据えるなら別にかまわないし、お節介もしないけど………助けてほしいときは早めに言わないと手詰まりになることもあるからね」

 それじゃあねと竜斗は行ってしまった。不思議なことばかりだが、ともかく一つ一つやっていくこととしよう。まずは『風花お姉ちゃん』からだ。



―――――――――



「少し遅くなってしまい申し訳ありません。夕食まで作ってもらっているとは………」

「ま、一人暮らししていたからな。慣れるもんだぜ」

 大体、爺ちゃんの飯とか俺が作っていたのだからそりゃあ、つくれるさ。

「で、いつ会うんだよ」

「明日の午前十時、屋敷で会おうとのことです。屋敷への案内はわたくしがしますので安心してください」

 方向音痴に道案内されるのって結構怖い事だと思うのだが………まぁ、それは置いておくとしよう。

「屋敷ってあれか、東家の大きな屋敷の事か」

「ええ、そうですが洋一郎さまが所有している物です」

「………」

 俺の脳内で暗くて落としたお金がわからないといった女のために金に火をつける男が登場する。

「どうだ、これで見えるだろ」

 お札を燃やすとは………。

「相当すごい奴なんだろうな」

「洋一郎さまはすごいお方ですが正直なところ、わたくしはあまり好きではございません」

「そうなのか、まぁ、いいけどな」

「ところで………」

 このようなことは失礼なことかもしれませんが、と前置きして風花は続ける。

「本日、野々村竜斗様がお見えになりましたね」

「ああ、来たぜ」

「何か吹き込まれませんでしたか」

「いいや、何も。竜斗と面識があるのかよ」

「数回会った程度ですがあります」

 あまりしゃべりたくないような雰囲気だった。まぁ、今考えていても仕方がない。俺がこれからしなくてはいけなことはたった一つ、寝ているときにつぶやけばいいのである。


サボり気味、いえいえ、違いますよ。え、今回の話がおもしろくなかったってそりゃあ、繋ぎですからイマイチですよ。次回はちょっとした風花の話です。誤字、脱字を発見したら教えて下さい。七月五日月曜、八時四十三分雨月。

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