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第二十一話◆:男か女か…自分か

第二十一話

 中間テスト以外にあった事と言えば衣替え、冬服から夏服に移行したということぐらいだろう。

 俺の席近くまでやってきて満はいちいち言うのであった。

「うん、やっぱり冬より夏服のほうが目の保養になるね」

「お前っていまさらだけど女好きなんだな」

「お、それは聞き捨てなら無い言葉だねぇ」

 自分のあごに手を当て、にやっとする。どういう意味がこめられているのだろうか……ちなみに、目は女子の動きを追っている。目の動きが左右ばらばらだったならば、こいつのご先祖、もしくは正体がカメレオンだという証拠になるかもしれない。一応、同じ動きをしているから人間なのだろう。

 そんな考えをしていたからか、満の言葉が右から左へ通過した。

「零一、君は男がすきなのか」

「あ……」

「だから、零一は女の子よりも男が好きなのかって聞いているんだよ」

「おまえよぉ、俺に限ってそりゃないだろうがよ」

「何で、そうとは言い切れないでしょ」

 にやりとしたその表情。こいつ、俺を陥れるつもりに違いない。

「じゃあさ、佳奈ちゃんのお風呂上りを見て後ろから抱きつきたくなったことあるでしょ」

 警察の前でそんな事を言ったら確実に捕まること間違いなしである。

「ねぇよ、それはねぇ。他だったら……わからねぇけどよ」

「へぇ、じゃあ栞ちゃんだったら」

「……」

 隣に笹川がいるというのに……危険なことをいちいちと……。

「スケベ、変態、今度屋上から吊るす……」

 そんな言葉が聞こえてきた気がした。耳は一生懸命、それらの言葉が鼓膜を通らないように拒絶している。

「あ、やっぱり男のほうが好きなんだっ」

 満に引かれてしまった。

「んなわけあるかよっ」

 転校生は男好き、ウホッなんて噂がたったらろくなことが起きないのは確かだ。

「じゃ、抱きつくんだね、そうだよね」

「……事故っちゃえ、事故っちゃえ……月が出てる日は夜道を歩けると思わないでね」

 八方塞がりだ……。

 どちらをとっても地獄行き。お花畑と、危なそうな森……お花畑には魔物が住んでいて危なそうな森には幽霊がいる。そんな最悪な状況。

 ん、いや……待てよ。俺はもしかしたらとても画期的な状況打開策を手にしたのかもしれない。

「満、俺は抱きつかないぞ」

「あ、じゃあやっぱり男が好きなんだね」

 そう言われるが俺は首を振る。

「え、じゃあ……両方いけるってこと」

「両方いけるとかいうなっ。俺はな……鏡に映る自分が好きだ」

「「……」」

 時間が止まったかと思った。

「え、あれ……いけると思ったんだけどなぁ……駄目だったか」

「……その顔で、よくそんなことが言えるわよね。雨乃、貴方……勇気があるわ」

「僕も同感だよ」

 生暖かい目が俺を見てくれている。

「じゃ、じゃあ僕はそろそろ席に戻るよ」

「わたしも、読書に戻らないと……」

「え、おーい、二人とも……もしも~し」

 俺、何か問題発言でもしてしまったのだろうか……



―――――――――



「で、本当はどっちなのよ」

「は」

 話題が再燃したのは弁当時、つまり昼休みだ。満は学食派らしく、ここにはいない。学食って人が多いし面倒だろう……あ、ちなみに俺の弁当は鈴音さんが親切心から作ってくれている。四人分を作るのも大して変わりないからというところがすごいなぁと思えた。

「雨乃は男が好きなのか……そういうことか」

「そういうことって決定させるなよ。いいか、笹川……俺が男が好きに見えるか」

「……見え……」

「まて、俺は普通に女の子が好きだぞ」

「じゃあ、お風呂上りに後ろから抱きつくんだ、ふぅん、そうなんだ」

 やらし~そんな顔をする。嫌なやつだ、こいつ。

「ケースバイケースだな。その状況にならないとわからない……第一、そんな状況なんてありえねぇだろうけどよ」

「それもそうよね」

 やれやれ、これで誤解はなくなったのだろうか……

 次の日、いつもより少し早めに学校について驚いた。

「あ、あの野郎っ」

 黒板にはでかでかと『雨乃は大の女好き』と書かれていたのだった。


第二十一回目の更新です。今日は色々と事情があってあまり更新できないかもしれません。二月三日水曜、十一時三分。

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