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第二百七話◆:火曜日は四面楚歌

第二百七話

 火曜日、いつもより遅い時間帯に登校してくるとほとんどの生徒が席について話をしていた。なんだか、教室の前から入るのに抵抗を覚えたため、後ろから入ってくると一層、話声はひそひそとなり始めた。

「……なんかあったのか」

 留年している手前、知り合いが少ないのは仕方がないのだがいるだけましなほうだろう。これまたひそひそ話をしている澤田、剣のところへと歩いていく。

「なぁ、何かあったのか」

「ぷい」

「ぷいっ」

 尋ねると二人ともそっぽを向いたのである。

 あら、可愛い………じゃなくて、なんでこんなことをしているのだろうか。

「あの、雨乃先輩」

「ん、なんだ」

「メイドさんがいるって本当ですかっ」

「はぁ………」

 いきなり声を掛けられて、そんなことを言われた。

 まぁた、誰かが厄介の種を蒔いたのだなと確信し、容疑者をリストアップ………犯罪に使われたルートとしては満から剣へ、そして澤田に行って………このクラス全体に波及してしまったということか。

「メイドはいねぇけど、お世話係はいるぜ」

 ここで無理に否定したところで噂は噂を呼んだのちに、俺の知らないところで尾びれ、胸びれ、いずれは足が生えて水陸両用の生命体になってしまうかもしれないからな。

「昨日、体育館前にいた人ですよね、一先輩」

「まぁ、そうだな。剣、満から聞いたのか」

「ええ、そうですよ」

 全く、あの満め………今度会ったら問答無用でクロスチョップを浴びせてやるしかないな。

 クラスの男子は『すげぇぜ、雨乃先輩』と騒いでいる。

「雨乃先輩、やっぱり家にお世話係がいると嬉しいハプニングとか合ったりするんですかっ」

「嬉しいハプニング……具体的に言うとどんなのだ」

「お風呂から出てきたときにばったりとか、眠れないから一緒に寝たりとか………」

「………あるわけない………と、言いたいところだがあるかもな」

 嘘はつきたくない、せめて、剣の前では………いつもよりも眼光鋭く俺の表情を読み取っているようだった。

 答えを曖昧に濁すことによってこの眼光から逃げるというのが俺の選択肢である。

「嬉しいハプニングですか………ふーん」

「そんなの不潔ですよ、零一先輩」

 剣、澤田を筆頭とする女子たちは俺のことをあまりよく思っていないようであった。

「じゃあ、どんなのなら不潔じゃないんだ、澤田」

「ええっと………醤油を取ろうとしたら指が重なっちゃったり、家の扉を開けようとしたら向こうがちょうど開けて『あ、今迎えに行こうとしていたところでした』ってな感じのハプニングですっ」

「それはそれでぐっとくるハプニングだ(男子一同)」

 男子たちの心をぐっと鷲掴みにした澤田はこう言った。

「だから、私は零一先輩のような不潔なハプニングを求める人は嫌いですっ」

 その言葉にショックを受けたのは俺ではない、あいにく、俺の心はそこまでヤワに出来ているんじゃないからね。

「雨乃先輩、澤田ちゃんの言うとおりだ」

「そうだそうだ、ぼくたちは夏樹ちゃんを応援するぞ~」

「ちっ、本当お前らってやつは………」

 さっきまでは神としてあがめていたくせして邪教徒扱いかよ………そして、俺にとどめが刺された。

「雨乃君、ご家族の方がお弁当を持ってきているわよ」

「零一様、お弁当を忘れていましたよ」

「……」

 教室前に立っていたのは風花。

 なるほど、言われてみれば黒のワンピースに白のエプロンだったらメイドがどうのと話はつながるのかもしれない。もっとも、フリルがついていたりしないかなりシンプルなものなのだが………

 男子からは羨望のまなざし、女子からは嫌悪のまなざし………

「ふっ、人気者ってつらいもんだな」

「よく言えますね」

「そうですよ」

 剣、澤田からの言葉ももはやどうでもよくなった俺には痛くもかゆくもなかったりする。

「では、わたくしはこれで帰ります」

 静かに扉を開けて帰っていく。男子生徒たちがその後ろ姿を追うために廊下窓際へと殺到しているのはちょっとだけ、ほんのちょっとだけ面白かった。

 もちろん、満が剣だけにこの話をするわけがない。ウイルスというものはあっという間に感染するものである。



人間が競争するっていうのは性だと思うんですよ。だって、生まれるときだって圧倒的な負け組に対してたった一握り………いや、一つかみの勝ち組のはずです。自分以外のオタマジャクシはどうなったんでしょうね………いや、変な意味じゃなくて、本当に人間は競争しないと生きていけないって刷り込まれているんでしょう。んじゃあ、理性ってなんだって話ですけど本能を抑え込むやつですねぇ。トイレに行きたいけど、我慢、我慢、ガマ………んんっ、ってな感じです。たまには下ネタもいいかなぁと………うそです、ごめんなさい。眠たくて何を書いているのか自分でも判断付いていない状況です。つまり、この眠気に打ち勝てば理性のほうが勝っていると、そういうことのはずですから。まぁ、眠いんで、もう寝ます。六月二十六日土曜、二十三時四十二分雨月。

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