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第百九十八話◆:どうでもいい話

第百九十八話

 ファミレス。場所、時間帯によっては学生たちでごった返したりしている。外に降っている雪は今年初めての雪だったが、荒れていた。自転車で無理に帰ろうとした少年が転んだのはまた別の話である。

「二人ともさ、もしも彼女出来たらどうするんだい」

 久しぶりにファミレスへとやってきた雨乃零一と吉田満、笹川真は『男の集い』を開催していたのである。

「そうっすねぇ。俺はやっぱりデートに行きます」

「どこに行くんだい」

「海ですかね」

「十二月も終わろうとしているのにこのクソ寒い中寒中水泳か。全く、零一には脱帽だよ」

 やれやれ、困ったものだと満は運ばれてきていたコーヒーを飲んだ。

「あのな、夏だったらの話だよ」

「過程で話を進めないでくれよ。妖怪だったらぼっちはもういいって」

「にゃんだと~」

「まぁまぁ、そう熱くならない。話を変えよう。このファミレスのウェイトレスは誰が可愛いか………一斉に選ぼうじゃないか」

 とても失礼なことだったが、他にやることのない二人は提案を承諾したのだった。そして、少しの間店内を見渡すのである。

「じゃあ、一斉に行こうか………っせーの」

「あの人」

「あっちの人」

 三人が選んだのは別々の人物。まぁ、ここのファミレスの中で無理にでも選べばあの人だろうと各々、心の中で決めた人物でもある。

「妥協ってところですねぇ」

「そんなところだよ」

「ま、こんなもんでしょ。行く店行く店に美人がいるわけ………」

 そんな時、店内奥から一人のウェイトレスが出てきた。



「文句無しであの人っ」



 三人がハモったのは言うまでもない。



――――――――



 外の雪もそろそろ止みそうだった。三人はいまだにファミレスでだべっていたかと思いきや、特に話題がないためにテーブルの上に顎をのせたりケータイをいじったりしているだけだった。

「あ~、暇だ」

「暇なら外で雪合戦でもするか」

「積もってもない雪で雪合戦は無理だろう」

「あ、真先輩。たまには心に響くような長い話をしてくださいよ」

 しばらくの間真は唸っていたのだが、静かに首を縦に動かす。

「そうだね、まぁ、最近はのどの調子がずっと悪かったからうまくいかなかったけど今日はまぁまぁ、ってところかな。そういえば喉が痛いって言ったけど、これがまた珍しく栞にも移っちゃったみたいでねぇ。こほんこほんってしていたけど雨乃君は気がついていたかなぁ。おや、気がついていなかったんだね。ああ、教室が違うとやっぱり会わなくなるからね、いつかそうやって栞のことを忘れてしまうだね。はっはっは、冗談だよ、冗談。君が忘れたとしても栞は君のことをしっかりと覚えていると思うよ。ぼくは栞じゃないから何とも言えないんだけどね。ん、でも、剣ちゃんもなんだか最近雨乃君につきっきりだって噂を聞いたよ。それに、吉田君にも女が出来たそうじゃないか。え、違うっておいおい、君はそうかもしれないけど向こうは意外と本気なのかもしれないよ。っと、もうこんな時間なんだねぇ。暇だ暇だと思っていたけれど、話し始めると時間というものはあっさり消えてなくなってしまうのか。じゃ、帰ろうか」

「そうっすね」

「帰ろうか」

 三人組の男たちは美人ウェイトレスに会計してもらってファミレスを後にするのであった。

実にどうでもいい話だったのかもしれない。

どうでもいい話って結構重要だったりしますよ。受け手によって情報なんて変わってしまいますから。人の話はしっかり聞きましょう、どうでもいいことかもしれませんけどね。六月二十日日曜、九時七分雨月。

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