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第百九十五話◆朱莉編:マフラーの使い方

第百九十五話

 十二月。もう、寒くて仕方がないので帰宅部である俺はこたつに入って丸くなる。足を突っ込んだらなんだかやわらかい何かにつま先が当たった。

「い、いきなりどこを触っているんですか零一君」

「ってなんで朱莉がいるんだよっ」

「恋人に会いに来ただけですよ」

「恋人って誰だよ」

「それは当然零一君ですよ」

 にやにやしながらそう言ってくる。何か言い返してやろうかと思ったが面倒になりそうだったので口を閉じる。

「仕事ですよ」

「は」

「だから、これから仕事に行きます」

「寒いから嫌だ」

 こたつの中に入ろうとするといきなり朱莉が襲いかかってきて組み敷かれた。

「駄目ですよ、これは零一君にも関係していることです」

「へ、そうなのかってお前、何勝手に服を脱がせようとしてるんだよっ」

「え、気のせいですよ。零一君が抵抗するからついつい、力を強く入れすぎてしまって………ぐへへへ」

「怖い笑い方するなってのっ」

 ばたばた両手を動かしてなんとか逃げ出す。こたつの近くに座立ちして寝転がっている朱莉を見る。

「あ、何逃げてるんですか零一君」

「いや、逃げるだろ」

「抵抗して、気がついたら自分が上になっている。そして、視線の先にはうるんだ瞳の美少女が静かに目を閉じて二人は………」

「仕事があるんだろ」

「あ、そうでしたね」

 忘れてましたと笑って立ち上がる。やれやれ、朱莉は相変わらずわからないところがあるな。

「で、仕事のないようは何だよ」

「簡単です。零一君の両親を探すんですよ」



「は」



「ま、探すって言うよりも会いに行くって言ったほうがいいですね。実際、既にどこにいるのかわかっていますから」

 手帳をめくりながら俺に笑ってくる。俺はその笑みに対して複雑な表情を返していた。

「………今更会えるものでもないだろ」

「いいや、会わないといけないんですよ」

 俺のほうへと歩いてきて手を差し出した。

「…………」

俺がつかむ前に、朱莉はそっと俺の手を包み込む。いつかのように柔らかくて温かな手。

「………あたしたち、付き合い始めましたって言いに行くんです」

「…………朱莉………」

「今、あたしを逃すと人の後ろをついてまわるような零一君じゃ彼女なんて出来ませんよ。報告は零一君一人で行くんじゃありません、あたしと一緒に行くんです。だから、二人で一緒に手をつないでいきましょう。外も寒いですから」

「………そうだな、行くか」

 俺は立ち上がりコートを探した。

「はい、どうぞ」

「あ、悪いな。えっと、マフラーは………」

「あたしのがあります。これ、二人で巻きましょうよ」

 真っ赤なマフラーを俺の首に引っかける。

「あ、当然あたしの彼氏になる場合は他の女に走ったら………あら、不思議。愛のマフラーが哀のマフラーに早変わり。警察官もびっくりの………」

「こえぇよっ」

「冗談ですよ、じゃあ行きましょう」

 俺の手をつかみ、玄関を後にする。その手はしっかりと握られていたのだが、やさしくもあった。

「あたしが不安になったときはしっかりと手を握ってくださいよ」

「あ、ああ………任せとけ」

 朱莉は満足そうに笑うと天を仰いだ。

「………雪、降りそうですね」

 俺も同じように空を見てうなずく。それぐらいしか今の俺にはできなかった。


蒸し暑くてかないません。部屋を閉め切るなんて本当、自殺行為でした。あ、重要事項でしたが先ほど、この小説の絵を書いていただいている『無感の夢者』様より新たな絵をみてみんのほうにアップされたそうです。なんと、今回は竜斗のあんな姿です。気になる方はそちらもどうぞ。六月十七日木曜二十一時三十分雨月。

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