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第百八十八話◆ニア編:忍者とウェディングドレス

第百八十八話

「くっ、まさかこの私が負けてしまうとは」

 がっくりと膝をついて俺のほうを見ているが、その顔はものすごく嬉しそうだった。

「さぁ、早くニアを助け出すんだ。私に構わず、行けっ」

「…………」

 もはや、誰がニアを連れさらったのか覚えていないような節があるな。しかし、いちいち突っ込んでいたらせっかく見逃してくれたのを取り消されるかもしれない。あからさまに途中から力を抜いていたからな。

「早くいかないとニアが、ニアが………ニアが………」

「どうかなるんですか」

「花嫁になってしまうっ」

「………」

 花嫁、ねぇ………ニアだけに似合わない………なんちって。

「ともかく、何を考えているのかはわかりませんがこうなったらやけです、俺はニアを助けますっ」

「うむ、その意気だ」

 結局、この人が何をしたかったのか分からなかったが俺はニアの家まで直接行くことが出来たのだった。なんだか、忍者っぽい罠がそこらじゅうに設置されていると思ったのだが、道中あったものと言えば買い物帰りのおばさんの降りをしているニアのお母さん、そして買い物帰りの主婦にくっついている子供の真似をするニアのお父さん。後者ははっきりいって四回ぐらい見ないとそれが大人であると気がつけないほどうまく化けていた。

「ともかく、あっさりここまでこれたなぁ」

 道場の隣を通っても一切のサプライズはなかった。そして、覚悟を決めて俺は玄関の引き戸をスライドする。

「…………」



 そこには、ウェディングドレスを着たニアがいた。



「零一、ニアは嬉しいぞ」

「いや、何がだ」

「とぼけるのがうまくなったな。そういえば、ニアと最初に出会った時も…………」

「いや、回想にはいかないからな」

「ちぇっ」

 拗ねたようなニアを放っておいてあたりを見渡す。ここでラスボスのはずである爺さんが出てくるはずだ。

「ニア、ラスボスはどこだ」

「ラスボス……それはな、零一。ニアがラスボスだ」

 ウェディングドレスを脱ぎ捨てる。そこには忍者服を纏ったニアがいた。

「零一、前々から言わなくちゃいけないと思っていたことがあったんだ」

「なんだよ」

 もじもじとした後、ニアは目をつぶって驚愕の事実を口にしたのだった。



「実は、ニアは忍者だったのだっ」



 あ、ここものすごく驚くところですからね。

「え、ああ、そうだったのか」

「なんだか反応が鈍いぞ」

「そうかな~、結構驚いたつもりなんだけど」

「う~ん、ちょっとインパクトのない告白だったのか………」

 一人ぶつぶつ言っているニア、そして俺のほうを見てうなずいた。

「やっぱり、最初の登場がこのドレスだったからまずかったんだな。天井から落ちてきたりしたほうがよかっただろ」

「いや、俺に言われても困るし、もう一回言っちまったものを忘れろって無理な話だろ」

「それもそうだなぁ」

 うわ、なんだよこのぐだぐだ感満載の茶番劇は。

「でも、やっぱり驚いた顔がみたいぞ」

「じゃあ、何か本当のことを言って俺を驚かせればいいだろ」

「ええっと、そうだなぁ………ニアが零一のことは大好きだって知ってるよな。今度の日曜日、家で結婚式挙げるんだ………って、これも伝えてあることだし」



「ええっ、そうなのかよっ」



「おお、てっきり知っていることかと思っていたんだけどな」

「いや、初耳………」

 俺たち、結婚します………って、一体だれが決めたんだよっ。

「さ、新郎は着替えないといけないな」

「そうね」

「え、ええっ」

 気がついてみれば俺の後ろには二人の忍者が………俺の腕をしっかりつかんで家の中へと連れて行くのだった。



 後日、俺の姿を見た友人は『ひな人形みたいだ』とつぶやいていた。


ニア編の話は全体的に暗くならないようにしていたわけです。まぁ、とりあえずいったんここで終了ですけどね。無理に笑ってくれる心の優しい人、歓迎しますよ。さて、ここで無意味だと思いますが何回目かさっぱりわからないアンケートを行いたいと思います。今後の指標を決めるものなので期待していてください。アパートを後にした零一の話なのか、二年生に進級した零一………さて、あなたのお好みはどっちっ………とまぁ、言うだけ言っておきます。六月十日木曜、二十一時十一分雨月。

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