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第百七十九話◆夏樹編:家

第百七十九話

 澤田パパの書斎はこれまたしっかりと片付けられており、木製の机の上にパソコンが一台置かれている。ほかにあるものと言えば俺と澤田パパが座っている二つの椅子ぐらいか。

「率直に聞こう、君は夏樹のなんなんだ」

「なんなんだって言われましても」

 よくわからないがなんだかとても面倒なことに巻き込まれているということだけは理解できた。ああ、廊下のほうからいいにおいがしてきている。って、現実逃避をしている場合ではないな。ここは誰もが納得するであろう答えをひねり出すしかない。

「学校の先輩ですかねぇ」

「先ほどの話を聞いているとどうもそうは思えないんだが」

「や、やっぱり盗み聞きしていたんですねっ」

「あれは仕方のない行為だ。もし、君に娘がいたら子供を守りたいというのは親の当然の行為だろう」

 俺に言い聞かせているよりも自分に言い聞かせているように見える。一応、盗み聞きしたのは悪いと思っているようでほっとした。ま、以前この人の後をつけていた俺が責められる立場ではないのは確かだ。

「なるほど」

「ああ、君が結婚をして子供を産み、それがもしも女の子だったらそう絶対に思う時がやってくる。そして、お父さんって臭いって言われる日が絶対にやってくるのだっ」

 両手をグーにして天井を見上げる。

「くっそーっ。私のどこが臭いんだっ。あまつさえ、『零一先輩っていいにおいがするんです』ってなんじゃそりゃあっ」

 本当になんじゃそりゃ。俺ってそんなにいいにおいがするだろうか。

「取り乱してすまない」

「え、あ、はい」

 大人には大人のプライドがあり、そこをおちょくると後々大変なことになる。よって、調子に乗って突っ込まないようにしましょう。

「で、改めて聞くが君は何なんだ」

「はぁ、あの、さっきより質問がかなりアバウトになっているんですけど」

「いや、ここは私が譲歩してあげようと思ってな。友達まではセーフだ。いや、男友達なんて出来るのも問題があるが、目をつぶってあげよう」

「ありがとうございます」

 お礼を言うべきところなんだろうな。

「夏樹はな、最近君だけの話しかしない」

「そりゃまぁ、一緒に朝勉強することが多いですから」

「いや、それを差し引いても君だけの話をしない。私の話をしようとしても、それは気がつけば君の話にすり替わっていることが多い」

「あまり信じられないんですけど、たとえ話とかありますか」

「そうだな、私が仕事の出来ない部下をどこに配属させれば効率よく仕事ができるのかと話をしていると夏樹は言うのだ、『きっと、その仕事ができない人が零一先輩だったら私を隣に置いてくれれば一生懸命仕事をさせます』と、そういうのだ。君は一切関係ないだろう、なぁ、そうだよなぁ」

「あはは、そ、そうですね」

 まだこれからもよく意味のわからない話が続きそうだった。ああ、誰か助けに来てくれないだろうか、そう考えていると天使がやってきた。

「零一先輩、パパ、料理ができましたよ」

「あ、そ、そうか。じゃあ、行きましょうか」

「な、なんだと……馬鹿な、私が君より後に呼ばれるとは………」

 そっとしておくのが一番かもしれない。俺はそう思って置いていくことにしたのだった。



―――――――



 食事中、あまり生きた心地がしなかった。

「零一先輩、ソースが付いています。今とりますから動かないでください」

「え、あ、悪いな……ひぃっ」

 俺の目の前に座っている澤田パパが恐ろしい視線を俺に投げかけてくるのである。

「な、夏樹、零一君も子供ではないのだから自分でそのぐらい取れると思うぞ」

「いえ、だって零一先輩に任せておくとなんだかシミになっちゃいそうだったので私がしたほうがいいと思ったんです」

「は、ははぁ、それは仕方がないな。しかし、問題はソースがつかないように零一君が食べることだと私は思う」

「いや、さっきのソースはお父さんが飛ばしたものですよ」

「え」

 あの驚いた顔、俺は一生忘れないだろう。

「だから、問題はパパです」

「ぬがっ」

 楽しそうに澤田ママは二人のやり取りを見ていた。

「あの、なんだかすみません」

「零一先輩は謝らなくていいんですよ」

「そ、そうかもしれねぇけど」

 なんだかすっごくいたたまれない食事だった。



――――――――



 夏の夜って結構遅い時間帯。俺は澤田家を出ることにした。

「じゃあ、また来てね、零一君」

「今度来る時こそ、君の意見をしっかりと聞かせてもらいたい」

「あの、零一先輩、本当に一人で大丈夫ですか」

「ああ、大丈夫だ。料理、美味しかったです。ごちそうさまでした」

 澤田家の三人は俺に手を振ってくれていた。まぁ、温かい家族でうらやましいこった。これから帰るアパートは俺一人だからな。さみしさだけが残ることになるだろう。騒いだ後には必ず静寂がやってくるからな。余計、さみしくなるものだ。

「零一先輩っ」

 突如、後ろからそんな声とともに俺の腰に衝撃が走る。二、三歩程度よろけたりするが、なんとか倒れずにすんだ。

「いたた、なんだ、澤田」

「零一先輩がさみしがっているかもしれないので見送りに来たんです」

「はは、見送りならさっきしてくれたじゃねぇかよ」

「さみしがっているってところは否定しないんですね」

「………まぁな」

 ここで変に否定したところで子供だと思ったのだ。まぁ、もしかしたらそうやって躍起になって否定しているところが子供と思われるかもしれない。

「佳奈の家とかとそっくりでな。澤田のところも本当、家族同士仲がいいんだな」

「えっと、佳奈先輩と私の家、どっちが安らぎますか」

「さすがに佳奈の家だな」

 あそこには一年程度お世話になったのだからな。せっかく聞いてくれた澤田の家と言いたいところだがここで嘘をついたところでたぶん、澤田にはばれてしまうだろう。

「そうですか………でも、これからも毎日来てくださいね」

「そんなに迷惑をかけられるかよ」

「せめて私に会いに来てくれませんか」

「わかった、考えておく」

 きっと、何かしらの譲歩を俺がしなければ澤田はずっと付いてくるだろう。

「よし、もう暗いからお前帰れよ。なんなら、俺が送って行ってやろうか」

「お願いします」

 差し出された右手を握り、俺は来た道を引き返す。




 なんだか、家に帰っているような感覚を覚えてしまった。


読者があとがきを読んでいるかはさておき、次回は誰の話を書こうかと考える今日この頃です。無理やり話をひねり出しても暇つぶしに読むのすら億劫という結果が待っていたりしますからね。もし、雨月のような三流アマ小説家が呼びかけずにもっと上の人が問いかければ企画モノとはうまくいくモノなんでしょうかねぇ。ともかく、みなさんに言えることは一つです。もし、誤字脱字を見つけてしまった場合は出来るだけ連絡お願いします。五月二十六日水曜、十九時二十八分雨月。

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