第百七十六話◆零一編:rest serialization
第百七十六話
夏の真っ盛り、学生さんには嬉しい夏休み。学校によっては夏の課外授業なんかあるのだが俺たちの学校には補修があるだけだ。よって、補修対象者は学校に行かなくてはいけないのだが俺は補修対象者ではないので登校する必要性はない。
「はっはっは、仮にも一年生を二年やっているのだ」
誰もいない部屋に向かってそう高らかに言ってみたのだが当然のように返事はない。02も実家に帰省(重大な不都合が見つかったそうである)しているのでさみしいものだな。
誰かを誘って遊びに行こうと思ったとしてもケータイがないのだから仕方がない。
大体、満は家族旅行とかでいないし、当然のように剣も家族旅行である。
そして、佳奈も家族旅行のために鈴音さんと達郎さんもいないのだ。俺も誘われていたのだがたまには家族水入らずで行ってきてくださいと言った。用事があるとか嘘をついた自分を馬鹿らしく思ったのだがなんとなく、それでいいと感じたのだ。
朱莉の父親である湯野花探偵事務所の勇気さんも娘を連れて旅行に行った。噂では海外に飛んでいったらしい。
澤田はまぁ、夏休みの間海外で過ごすと言っていた。つまり、夏休みが始まったぐらいには外国へと行ったのだ。
ちなみに、竜斗は父親に連行されていった。わざわざ寝ている俺を起こして『いったん連れて帰る』と宣言したぐらいなのだから。何を考えているのかは分からないが向こう一週間やつが帰ってくることはないだろう。
笹川の奴もご家族で『猫祭り夏』に旅立ってしまったに違いない。また、猫耳買ってくるからと言っていたから間違いないだろう。
ニアはニアでどこかの山奥で修行をしているそうである。遊びに行こうかと思ったのだが、真面目に修行をしているのならそっとしておいたほうがいいだろう。自ら蛇を出すほど俺は愚かではない。
「俺って友達少ないよなぁ」
夏休みの宿題も大半が終わってしまい、残っているものとしたら将来の夢という題名の作文と、自分の家族についての作文だった。あ、ちなみに後者は俺だけ特別にしなくていいという要らない先生の配慮のおかげで不必要なんだけどな。
「ふんふん、将来の夢、ねぇ」
さて、俺って何になりたいのだろうか。ガキの頃は戦隊ヒーローになりたいとでも思っていたのかね。いや、違うな。
「そういや、探偵になりたいって思ったんだっけか」
ばかばかしい話かもしれないが俺は早速作文に取り掛かることにした。
「う~ん、いっそのこと学校をやめて探偵業でも始めようかな」
もちろん、こんなところで出来るわけがない。誰も知らない土地で、ひっそりとやるのがベストなのだろう。
「…………大体、将来どころか俺は自分の家族のことも知らないんだからな」
初めてわいた興味かもしれない。いや、正確に言うならばじいちゃんがいなくなってから初めてわいた家族への興味といったところか。
白い封筒を取り出して俺はそれに『休学届』と書くことにする。退学するのはまだちょっとやめておこう。
「金は銀行にたっぷりあるからいいとして必要なものは…………」
旅をするのに必要なものは何だろうか。しばらく一人で考えて結論を出す。
―――――――
「しっかし、あれだけの人数に手紙を出すのは面倒だったな」
住所とかいろいろ書かないといけなかったし、内容がダブったりしても駄目だし。ま、気が付いたら一枚にぎっしりかけたしそれでいいだろ。
俺がこれからやりたいこと。出来れば、夏休み中に終わらせたいこと。俺は俺が一体ぜんたい誰なのか知りたいということではなく、俺の家族はいるのか、いないのか親戚中を駆け巡って探しまくるということだ。
「長い夏休みになりそうだな」
下手したらもう一年、留年かもしれないな。自嘲気味につぶやくが、旅する御供は存在しない。犬、雉、猿なんていないからな。
ともかく、たまには決めたことを最後までやりとおすというのも悪いことじゃないはずだ。
変わる景色を眺めながら、俺は一人ため息をついた。
休載ですっ!
五月二十日木曜、八時五十三分雨月。