第百七十五話◆竜斗編:白雪嫁
第百七十五話
ウェディングドレスの状態で薄汚れた畳に座らせるかどうか悩んだのだが、結局、座ってしまった。
「おい、汚れちまうぞ」
「いいのいいの、別にぼくが汚れるってわけじゃないからさ」
「まぁ、お前がいいならいいけどよ。で、何か飲みたいものはあるか」
「そうだね、じゃあコーヒーでももらおうかな」
「待った、もし、こぼしたら絶対にシミになるから出さないぞ」
ケチと言われたがこればっかりは譲れなかった。
「むぅ、珍しくお固いんだね」
「俺はいつも固いぞ」
「へぇ、人の頼みを断れないくせしてそんなことを言うんだぁ」
「はっ、その人の頼みを聞いていないとお前が大体ここにいないだろ」
「まぁ、そうだね。礼を言っても言いきれない。心の底からありがとうって言いたいよ」
ほほ笑む竜斗をしばし眺めて俺は牛乳を取り出し、ついだ。
「これならこぼしても大丈夫だろ」
「白く汚したいってことだね」
「わけのわからないことを言ってないでさっさと飲めよ」
さて、お茶菓子をどこにしまっていたかな。うーん、そういえばこの前満が来たときに出しちまったからなかったか。
「あ、お茶菓子ならぼくが部屋からとってくるよ」
「悪いな」
「いいって」
そういってお嫁さんが走って出て行ってしまった。それから三十分後、普段着になって戻ってくる。
「はい、お茶菓子」
「着替えちまったのか」
「あれ、もしかしてもっと見たかったりしたのかな」
目を細めて俺を見る。
「そ、そんなわけないだろ」
「も~、素直じゃないんだからさ」
「俺はいつだって素直だよ。俺ほど素直な人間なんてそうそういないんじゃないのか」
「その冗談、少しだけ受けたよ」
少しだけかよ。まぁ、どうでもいいけどな。
「で、お前は今日なんでここに来たんだよ」
お茶菓子を食べる前に昼食時だ。俺は二人分の目玉焼きを焼きながら竜斗に尋ねる。
「あれ、理由がないと来ちゃだめなのかい」
「いやいや、そういうわけじゃないが、どう考えてもあんな格好で来たんだから何か用事があってきたんだろ」
用事もないのにあんな格好で友達の家に強襲かけるなんてどれだけドッキリ大好きなんだよっ。
「強いて言うなら一番に見せたかったからかなぁ」
「は」
「だから、ウェディングドレス姿を一番に零一くんに見せたかったんだよ。くそ親父が珍しくぼくに買ってくれたんだ」
「なるほどな」
くそ親父と言っている割には嬉しそうだった。そうだよな、前はタキシードのようなものを着ていたんだから。
「でも、相手がいないとあれは着れないだろ」
「もうっ、相変わらず鈍いんだから。ま、他の女子にはすでに宣戦布告終わっているからいいんだけどね」
「はぁ、宣戦布告ってどういう意味だよ」
ウェディングドレスを着て戦うのだろうか。ああ、なんだか映画でありそうな感じだな。うん、銃器を持って戦いそうだ。
「それと、誰よりも先にツバつけとかないと」
「ツバ………」
「零一くん、一生のお願い聞いてくれるかな」
「おいおい、やすやすと使っていいのかよ。あ、変なことだったら断るからな」
「うん、じゃあ目を閉じて」
「ああ、ちょっと待て。今火を消すから」
言われた通り、俺は目を閉じた。竜斗が何を考えていたのかは知らん。
――――――
「ツバねぇ……」
親指で自分の唇の淵をなぞる。
「ちょっと取れそうにないツバつけられちまったもんだなぁ」
あいつ、本当何を考えているのかわからねぇな。
ふと、考えてみたことがあります。『第一回、誰かのエンディングを書きたい方募集』。一回目かどうかはさておき、作家のみなさん、ふるってご応募ください。なんて、一応言ってみます。あ、本当にメッセージとかで送ってきた場合は本当に投稿してしまいますのでご了承ください。さて、これで一応全員一周したってことですね。長かった、いや、本当に長かった…………と、思ったら一人忘れていたことを思い出しました。マイナス方向で考えだしたら止まらない雨月ですのでどうせ、こんな小説読んでいる人なんていないのですから風呂敷は大きくしてしまいましょうっ。そういうわけで、次回をお楽しみにっ。五月二十日木曜、八時八分雨月。