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第十七話◆:雨の日の嘘

第十七話

「零一、お前雨に濡れるの嫌か」

「え、俺は……まぁ、嫌だけどよ」

 曲がり角、ちょうどT字のところでそう聞かれた。雨に濡れるのが好きって奴はそうそういないだろう。

「零一はこっちの道だろ」

「ん、ああ……」

「ちょっと、これ持て」

 そういわれて真っ赤な傘を手に持った。何か取り出すのだろうかと思っていたが、一向にニアは動かずに俺を見ているだけ。結局、痺れを切らした俺は尋ねることにした。

「持ったぞ、それでどうした」

「それ、貸してやるから今度返せよっ」

 じゃあな、それだけ残して走り去ってしまった。雨の中、全速力で駆け抜けていく。

「あ、おいニアっ」

 そういってもニアは振り返ってくれること無く、完全に姿を見失ってしまう。

「……」

 格好いいなぁ……俺もいつかあんな風になってみたいものだ。ともかく、手渡された傘を壊さないように無事に持って帰ることに俺は成功したのだった。



――――――――



 次の日も雨、

「それ、どうしたの」

「え、ああ、この傘か……昨日友達に借りたんだよ」

 今日も隣に佳奈がいる。非日常だぜ、まったく。寝坊するのが日課だったくせして今日は俺より早く起きていた。

「た、たまたま早く起きちゃったから……ありがたく、零一を待っててあげるわ」

 そういう理由で佳奈が俺の隣にいるのである。雨は降っているが勿論、相合傘なんかではなくお互い個別に傘を持ってそれをさしている。

「そういえば、もう学校には慣れたのよね」

「ま、一応はな。友達だって数人…」

 どいつもこいつも変な奴の気がする。

「…一応、出来ているから心配するな」

「べ、別に心配なんてしてないわよっ」

「ははは、照れるなよ」

「照れてなんかないわよっ」

「おやおや、零一じゃないか」

 そんな事を話していると見知った男の声が聞こえてきた。

「なんだ、満か」

「なんだとは何だ。失礼な奴だねぇ、君は」

「別に、失礼でもなんでもないぞ。いきなり出てきてびっくりしただけだからな」

「どうだか……や、どうも雨乃佳奈さん」

「……ど、どうも」

 うわ、引かれてるぜ……可哀想に。

「今日も良いお天気で」

「雨が降ってる中でそういえるお前の脳内どうなっているんだろうな」

「うるさいな、零一。ねぇ、佳奈さん、今度の日曜日一緒に遊園地なんてどうでしょう」

 手を握ろうとしたが、それを佳奈に避けられた。ぷぷ、いい気味だな。

「ご、ごめんね。今度の日曜日は零一と一緒に出かけるってもう約束しちゃったから」

「なぬっ」

 くわっと、目を見開いて俺のほうを見てくる。そんな約束したかなぁ、そう思っていると後ろのほうで片手でお願いのポーズをしていた。申し訳なさそうな顔をしているところを見ると本当に満のことが苦手、もしくは嫌いなのだなぁ、そう思えてきた。

 しかし、満は俺の大切な友達であり、その友達が困っているとなると嘘をつくのもどうかと思えてきた。

「おい、黙ってないで何とか言ったほうが君のためだぞ」

 どういう意味だ、それは。しばし、悩むべき時間が与えられた気がして俺はどうするべきか考える。


 満を応援。


→佳奈を救援。


嘘に嘘を重ねてどうしようもなくなってしまうこと、ありませんか。あるのなら大変です。さっさとどうにかしましょう。無いのなら、そのままない状態で人生を全うするのがベストなんじゃないかなぁ、そう思えます。人生論について語るほどまだそこまで長生きしていませんが……これはいえます。嘘は、いけません。けど、たまには嘘も必要なときがあるんですよ。二月二日火曜、十七時四十七分雨月。

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