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第百六十八話◆朱莉編:Gちゃん、それは強引過ぎると思うぜ

第百六十八話

 高校生にもなって海を見た瞬間にはしゃぐのはいかがなものだろうかと俺は考える。まぁ、俺の周りは全員一歳年下なので騒いでいたとしても別に不思議じゃない。

「そういえば、ここの海って去年澤田ん家に誘われてやってきたところじゃねぇか」

「ええ、そうみたいですねぇ」

 なぜか、俺の隣には朱莉が座っている。周りの生徒たちはこの珍客に恐れをなしたのか俺に話しかけてくる奴は皆無だったりする。もう、みんな恥ずかしがり屋さんなんだから。

「朱莉先輩、どうしてここ何でしょうね」

 澤田は朱莉と知り合いのため、当然話している。そして、その隣には剣が座っていて冷やかに俺の隣人を見ていた。どうも、剣のほうは朱莉のことをよく思っていないようだった。

「校長先生に去年行った場所が楽しかったと言ったんです」

 朱莉はそういった。よくもまぁ、いけしゃあしゃあといえるものだな。孫思いの爺さんだから影響されたのではなかろうか。



――――――――――



 現地に到着し、一年生は弁当を食べた後、二時間海で遊んでよしとの命令が下った。

「留年生徒は違うことをしますよ」

「え、マジでか」

 澤田と剣の水着姿を拝もうと心に誓っていた俺の計画が朱莉の一言によってご破算となる。

「零一せんぱ~いっ、捕まえてくださ~い」

「一せんぱーい、遅いですよっ」

「あははは~、待て~、待て~」

 そんなことを考えていたのにっ。波打ち際を走る二人を追いかけていたのにっ。

 俺以外にももちろん、留年した人はいるので今回泊まる場所の掃除を言いつけられた。そして、俺だけ特別扱いされて朱莉と共に行動という全くもって珍妙な指示が下ったのである。

「おいおい、俺はお前と行動か」

「ええ、今回ここに来たのはとある人物と接触するためですよ」

 生徒会から離れ、普通に道路を歩き始める。今は遠くなってしまった浜辺の桃源郷は若人たちの嬉しそうな響きでいっぱいだった。

 俺の手をしっかりと握りしめ、朱莉は歩く。

「なぁ、どこに行くんだよ。この先にあるのは澤田の別荘だけだろ」

「ええ、そこに向かっているんです」

「どうしてだよ。俺たちも水着に着替えて砂に埋まろうぜ」

「満潮手前でちゃんと埋めてあげるから安心してください」

 どうやら、冗談を言うなと暗に言っているようだ。シリアスいっぱいの顔が朱莉の面に張り付いていた。

 そんなことをしているとあっという間に別荘についた。扉に手を伸ばし、朱莉がまわすとあっさりとあいてしまった。

「ありゃりゃ、別荘って鍵ついているもんだろ」

「中に人がいますからね」

「誰がいるんだよ」

 通された部屋の中には一人の老人がいた。

「久しぶりじゃな、零一」

「え、ええっじじじじ、じいちゃんっ」

 危なく発音がGちゃんになりそうだった。いや、そんなことはどうでもいい。

「なんでこんなところにいるんだよっ。行方不明だったはずだろっ」

「いや、一時間後にはまた行方不明になろうと考えておるよ」

 しれっとそんなことをいう。そして、俺から視線をずらしていって朱莉のほうへと向けるのだった。

「お譲ちゃんもこちらに来なさい。そんな部屋の外に出ていなくてもいいだろう」

 うちのじいちゃんは人によって話し方を変える。俺と話すときはまぁ、普通といっていいが紳士的な態度になったり乱暴になったりと、ころころ変わるのだ。

「は、はぁ、失礼します」

 そういって俺の隣へと朱莉は立った。

「さて、役者も揃ったことだ。零一、お前に行っておかなくてはいけないことがある」

「なにさ」

「お前、実は湯野花朱莉さんの許嫁なんじゃ」

「えええええっ」

 俺は驚いた。心の底から驚いた。隣の朱莉も知らなかったのか目を白黒させていた。

「嘘っ、それって本当かっ」

「嘘じゃ。じゃが、半分はたぶん、本当かもしれんのじゃ」

 どっちなんだよっ。すっごく曖昧な言葉ばっかり使いやがって。

「詳しく説明してくれよ」

「うむ、お前は校長から頼まれておることがあるじゃろう」

 じいちゃんにそう言われると頭の中で何か頼まれていたような気がした。



『朱莉がこんな風になってしまった原因の男の子を探せ』



「ああ、そういえば何か頼まれていたような気がしたなぁ」

 もはやどうでもいいことだったりする。どうせ、見つからないし。

「それがもし、零一だったならばお前たち二人は晴れて夫婦じゃ」

「違ったらどうなるんだよ」

「もちろん、友達からお付き合いを始めましょうということになっておる」

 なんだそりゃ。どの道付き合わせるだな、じいちゃんめ。

「あのなぁ、時代錯誤もいい加減にしてくれよ。大体、本人の意思が尊重されなきゃいけないだろ。なぁ、朱莉」

 隣の朱莉を見やると、突然、手を掴まれた。

「そんなに小さいころからあたしたち二人は運命の紅い糸でがんじがらめにされていたのですね。感動です」

「おいおい、冗談はよしてくれよ」

「あたしじゃ、駄目ですか」

 本気なのか冗談なのかわからないがしっかりと目を見据えてくる。まるで、獲物を狙うような目だな、おい。

「ともかく、零一がこれからしなくてはいけないこと、それが男の子を探すことじゃ。根をあげるなよ、もしも達成できなければお前は行方不明になってしまうのだからな」

 そういうとじいちゃんは立ちあがった。

「え、もうどこかに行くのかよ」

「ああ、風がわしを呼んでおる」

「本当にまた行方不明になるのかよ」

「安心しろ、零一がすべての真実を見つけてくれればわしもまたお前の前に現れることができる」

 それだけ言って窓から出て行ってしまった。普通に扉から出ればいいのに。

「零一君、いや、あなた、これからは夫婦二人三脚で頑張りましょう」

「おいおい、冗談だろ………ともかく、その男の子が俺じゃないと証明すればなんとかなりそうだからな」

 俺がこれからやらなくてはいけないことを考えると頭が重かったがやり遂げるしかないだろう。

 結婚するにはまだ早い。


分岐して他の話とあまり違わないっていうことがままあります。ふんふん、まぁ、似ている展開があるのは仕方のないことでしょう。人生、意外とAを取ろうがBを取ろうが変わりない時ってありますからね。ただ、似たような展開を求めていない人にとっては嫌なのでしょうねぇ。そういった理由も含めてそれぞれが、好き勝手ふるまってもはや、話が破綻しかけているといってもいいかもしれません。分岐の話をやるといつもこうなんですよ。なかなかうまくまとまらない。というより、頭が混乱してきちゃうんですね、佳奈、栞、ニア、朱莉、夏樹、剣、竜斗………一つの脳みそで七人分書かなくてはいけないあ、02も含めて八人ですねぇ。こりゃ忙しいな。まぁ、救済措置として一つ考えているというより以前から考えていたことなのですが零一が高校二年生になったらもうちょっとすっきりさせようかなと思っています。ええ、彼は羽津高校の特例ですから。次回で一応朱莉編は区切りです。次はたぶん、佳奈編あたりが来るじゃないかな、そう思っています。五月十五日土曜、九時四十一分雨月。

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